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第6話 彼女と訪問……オレ卵入手でマヨネーズ欲しくなりました

チラッとマヨネーズ出てきます

 ◇◇◇数時間後◇◇◇



「ふぅ……ようやく内装に入れる……。ってかわりとでけぇな!!」

「五人で生活するには広すぎる感じするけどね……。まずは床から始めましょ」

「おーけー未来」


 作業を始めて丸3日。仮眠を取りながら組み立てた家は全体的に柱が建った。

 オレとは別に未来が用意した基礎は、あくまでもガイドだったようで、不要になった石や岩を加工して束石も配置。


 束石は土台を支える石で、その土台の上に床板が配置される。ここまで来たら見た目がキレイなビスを使いたくなる。

 しかし、ビスを錬成しても、ビスを留める電動工具がなければ意味がない。釘を打つしかなかった。


「深く打ちすぎるとささくれ立つし、浅く打つと指引っ掛けてつまづくからなぁ……」

「そうだ咲夜くん。私急いで屋根板張ってくるから、気分転換しない?」

「気分転換?」

「私ね。ちょっと行ってみたいところがあるんだぁ~。ね? いいでしょ?」

「たしかに息抜きした方がいいもんな。いいぜ!!」

「ありがとう!」


 ワクワク顔の未来。ここでの彼女は現実世界よりも生き生きしている。対するオレは慣れない身体で精神状態もヘトヘトだ。

 こんなのは神様のイタズラにしても酷すぎる。女性になりたいとは思っていたが、巨乳は望んでいなかった。


「おまたせ!! こっち終わったよ!!」

「お疲れ未来」

「雨漏り防止で2枚重ねにしてきたから。防腐剤あれば耐久性も高くなるのに……」

「なんなら防腐剤の材料でも集めてくるか……」

「賛成!!」

「あたしも同行するです!!」

「そうか。んじゃプチハーレムで行きますか……」

「ちょっと浮気はやめてよね?」

「ち、違ぇって!! んなわけねぇだろ!!」

「そうなのです!! 未来さん早とちりなのです」

「ってことだし。出発するか……」


 拠点はレノンとガノンに見てもらい、オレと未来。ミカエルの三人で樹海の中へ。

 防腐剤の原料に加え、クワ科の植物も欲しい。クワ科の植物の枝を使えば、和紙が作れるからだ。


 ただ、使える部分は皮の繊維だけ。ミキサーも欲しいが、手作業でほぐすしかない。乾かせさえすれば和紙になる。


「それで未来。行きたい場所があるって言ってたが……」

「言った方がいい?」

「い、言ってくれなきゃわかんねぇだろ!!」

「知ってた。実はね、近くに村を見つけていたの」

「村? いつの間に……。なんで早く言わねぇんだよ!!」

「咲夜くんが『村作る』って言ってたから」


(いや言ったけど、視察にピッタリな場所は先言えよ……)


 急ぎ足で歩く未来。迷いが無さすぎて困ってしまう。さすがは賢者。きっと降り立ったのはオレよりも先だ。

 だからこそオレよりも知っているのかもしれない。それはそれで好都合だった。今となれば指名手配犯。巨大都市は危険。


 やがて木々の道は途切れ、広い平原にポッツリとした村を見つける。きっとここが未来が言っていた村なのだろう。


「ちょっとアポ取って来るね」

「ほんとありがとな。未来」

「あぽってどういう意味なのですか?」

「アポイントってことなんだが……。逆に難しいよな……」

「要するに、交渉するってことね。意味合いはちょっと違うかもだけど。会いに行ってもいいですか? って感じ」

「未来すまん……。頼りなくって」

「気にしなくていいの。確認済んだし……。ここの人と連絡先交換してたから」


(準備いいよなぁ……マジで……)


 交渉が早すぎる。この世界にも連絡ツールがあるなんて……。電子機器がないのにそれだけでも大助かりだ。

 どのようにやり取りしたのかは知らないが……。無事に終わったなら考える必要はない。訪問できるなら訪問しよう。


「ここに村長のセレーデさんがいるから。挨拶が先だね」

「セレーデか……。性別は?」

「そこ聞く? まあいいけど。10代くらい男性だったかな?」

「めっちゃ若いな」

「実年齢はものすごい上だけどね」


(見た目年齢かよ……)


『おやおやメーレー様。ここにいたのかね……』


(メーレー様?)


 聞いたことの無い名前。その呼びかけに未来が動く。名前を呼んだのは一人の男性。説明通りとても若い人族だった。

 彼は未来をメーレーと呼んでいたが、オレがサクラと呼ばれるのと同じなのだろう。なぜメーレーなのかは不明だが……。


「セレーデさんこんにちは」

「メーレー様もお疲れ様です。そちらの方々は?」

「メーレーの友人のサクラ・ドロワット。本名は金森咲夜。中身は男さ」

「さ、サクラ・ドロワットれい……」

「令嬢まで言うなよ。ってか、アイツらとは無理やり縁を切ったしな」

「なんと!! そうでございましたか……」


 これで通報な免れるだろう。いや、免れて欲しい。通報連行と続けば、また未来を傷つける歯目になる。

 外見巨乳ババア――実際は10代くらいだろうが――の人殺しは、まるで山姥(ヤマンバ)。そんなヤツになりたくない。


「今私達。ここの近くに村を作っているんです。その見本を探しに」

「ほうほう。そこでお越しになられたと」

「そうなのです!!」

「おや、ミカエル様も。お元気で何より」


 知り合いになってないのはオレだけだったらしい。セレーデも事情を理解してくれたようで、オレの居場所は隠蔽してくれた。


「では、こちらへどうぞ。ご案内させていただきます」

「ありがとうございます。行くよ咲夜くん。ミカエルさん」

「はいなのです!!」

「おう!!」


 訪れたのは、セレーデ村長とその子孫が暮らす小さな村【ノーツ】。人口はたったの500人ほどで、農業を生業にしていた。

 樹海から見てすぐに田園。そして広い畑。作られていたのは、現実世界でお馴染みの人参や大根。白米がメイン。小麦もすくすく育っている真っ最中だ。


「せっかくですので、皆様お食事でもいかがでしょうか? 裕福ではないため質素なものになりますが……」

「質素でもいいって、オレんとこはまだ家すら建ってねぇしよ……。いつかは畑も作らねぇとなぁ……」

「作るものいっぱいなのです!!」


 さらに仕事が増えてしまった。バトルならまだいい。けど、農作業はつまらなすぎる。管理するのも疲れるだけだ。


「パン作りは任せてください。かまどにも火をつけないとだし」

「今から手作りするのか?」

「だってやっぱり出来たてが美味しいでしょ?」

「そりゃそうだけど……。生地寝かせないとだろ?」

「大丈夫!! 火属性の次に得意な魔法があるから」


 しばらくして足を止めたのは、セレーデ村長の自宅。木造にしては骨組みも不安定なボロ家だった。

 専用の工具と建材でリフォームしてあげたい。それだけの腕はない。未来の方が作業スピードは速い。


「セレーデさん。小麦粉ってありますか?」

「ええ、それならこちらに。今朝妻が石臼で挽いていましたので、人数分は問題ないかと」

「良かった。つなぎ用の材料が足りないから。咲夜くんお得意の卵割り見せて!!」

「お、お得意って……」

「2個同時割りだよ!! 私卵割るの下手だから」

「わかったよ。身体が違う分上手くいくかは知らねぇが……」


 オレは、事前にセレーデ村長が用意したという卵を両手に持つ。お得意とはいえそこまで上手くはないが、未来からの注文だ。

 いきなり卵同士をぶつけて割るのは、この巨乳の身体に慣れてから。今回は机にぶつけて割れ目を作り、穴に親指を入れる。


 思ったより手が小さい。でも、できなくはなさそうだった。

 正しい位置に移動させて、両手同時にパカりと開く。卵二つでは足りないので、6個分。合計3回成功させた。


「ありがとう!! それにしてもキレイな黄色」

「おいおい、それだけかよ!!」

「さすがなのです!! 養鶏場も作るのです!!」

「ちょ、食費どうすんだ!!」

「それも重要だもんね」

「そのことでしたら。この村の養鶏場を使ってください。年々管理する人が減っているので、お手伝いいただけると……」

「だって!!」


(『だって』って言われてもなぁ……。いや待てよ? 卵の殻ってカルシウムで形成されてるんだっけなぁ?

 コンクリートの材料に使えるかもしれない)


「その仕事。オレ達にやらせてください!!」

「急に改まっちゃって。ちゃんと責任持ってね」

「わかってるよ。オレにいい考えがあるんだ」

「いい考えって、ろくな物しか考えないんだから。咲夜くんは。どうせマヨネーズじゃないでしょうね? マヨトーストおいしいけど……」

「ハムは必須アイテムだけどな!!」

「やっぱり……。そう言うと思った」


 そんなことは自覚している。実際未来の血液を利用して剣を作った。鉄を溶かす時もそうだ。

 オレはくだらないことしか思いつかない。元モテ男とはいえ、外見だけのお飾り。本当はモテたくなかった。


 生徒会長も、未来の手助けがあってこそだ。しかし、開票した時の投票用紙は、オレだけほとんど女子生徒だった。


「っていうか。なんであっちの世界では女に囲まれなきゃいけなかったんだ!!」

「!?」

「どうして……。どうしてあんなうるっせぇヤツらに!! しつけぇ(やから)に追っかけ回されなきゃいけなかったんだよ!!」

「ちょっと!! 咲夜くんたま……」


 ――ヒューン……。グチャり……。


「どうして、どうしてオレは……。あんなのオレが……。オレは望んでなんかッ!! ねぇのによォ!!」

「ちょっと暴れないでよ!!」

「んあぁもうッ!! 最初っからこっちに居りゃあよかったんだ。一生ウザいことに巻き込まれてたまるもんかッ!!」


 ――ヒュんヒュんヒューン!! グチャン……。


「咲夜さん鎮まるのです!! アクアアブソート!! アイス!!」


 全身卵黄だらけのオレ。ミカエルが唱えた魔法で純氷に覆われる。混じり気のない氷はオレの体温では解かせない。

 純氷は解けるまでに時間がかかる。レストランで使われているのも、純氷。だから、飲み終わっても形が残る。


「『頭を冷やせ』ってことか……。ほんとオレは何妄想してんだか……。早く解いてくれ」

「ご、ごめんなさいです……。解除方法がわからないのです……」

「はぁあ? んならどうすんだよ!! 未来!!」

「つまりは……。私が燃やせばいいってことかな?」

「わかってんなら、オレが低体温症なる前に早くやれ!!」

「本当にやっていいの?」

「いいって言ってんだろうが!!」

「容赦しないからね!!」

読んでいただきありがとうございます!


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