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第5話 彼女と建築……オレ足でまといになりました

更新報告遅れの反省投稿です


※改行修正しました

「よし!! これくらい集まれば十分足りる。もうちっと欲しいけど……」


 鉄鉱石を発掘し続けて約5時間。掘りまくった大穴の入口は、鉄鉱石で山積みになっていた。

 岩壁も長いトンネルになり、木の棒が最強すぎて笑ってしまう。


 消費した木の棒は20本。意外と耐久性もあったので活用法の幅は広がる。ガノンと未来は添い寝中。

 オレも一度休むため、ガノンと挟むようにして未来の隣へ横になる。未来の血はまだ止まっていないが意識は正常だった。


「ほんとお前はバカだよな。オレのために頑張るし。命捨ててまで協力しようとするし。命知らずにも……」

「咲夜くん?」

「未来!? す、すまん起こしちまって……」

「いいの。それにぐっすり眠れたし……」

「本当か?」

「ふふっ、私が嘘言うと思う? 安全運転だからこそ、咲夜くんは心配性なんだから」

「ふふ普通心配するだろ?」

「咲夜くんらしいね」


 オレの顔を見てクスクス笑う未来。どんな未来も可愛い。これからが楽しみになってくる。土地開拓で何が起こるのか……。


 オレは目をつむったまま、未来の胸に刺さったナイフを引き抜く。脳裏に浮かぶ『グリグリして』との要望。

 やりたくない。けれども彼女は、やって欲しそうな眼差しで見ている。直視はできない、まぶたを閉じて再びナイフを胸へ。


「もしかして咲夜くん?」

「な、なんだよ……」

「ううん。そのまま続けて。何も言わないから」

「何も言わないって気になるじゃんか……」

「私のお願い覚えてたんだ……」

「そんな時間経ってないしな……」

「だね。ほら固まらないでよ!!」

「しゃーねぇなぁ……。もう刺し直しちまったし1回だけだぞ!!」

「お願い」


 オレはナイフを握る。出血量が増えるだけなのに、楽しそうな未来。もう〝血〟を回収する人はいないのに……。

 日が昇ったら建設予定地に戻る。オレがナイフを動かすと強風が吹き始め、山積みの鉄鉱石が血に触れたその時。


 ――ボワンッ!! ジューーーー……。


「て、鉄鉱石が液状化した……」

「え? それって私の血で?」

「おん……。さっきの風で落ちた鉄鉱石がさ……。こりゃ製鉄所要らずになるな……。つらいけど……」

「それも私が賢者だからかもね。よくわからないけど……」

「けど、これで工程が短縮できる。金槌も鉄製になるしさ……」


 未来が賢者。それを理由にして欲しくなかった。大好きな人を苦しめてしまう。

 だけど、スキル同様に賢者の血の使いどころは多そうだ。その証拠は、ライチと戦った情報を上書きしている。


 夜の帳は終わりを告げて、新しい1日の幕が上がる。結局オレは一睡もしないまま、鉄鉱石の運搬が始まった。


「そういえば未来。傷は大丈夫なのか?」

「治癒魔法使ったから治ってるよ」

「そういうとこは抜かりなしだよな……」

「また仲良しごっこか……。俺は関係ないが……」

「ごっこじゃねぇよ!! ガノン!! オレと未来は幼なじみなんだ!!」

「残念だけど、中学からだと幼なじみとは言いませーん。なんちゃって」

「未来突っ込んでくるな!! んもいいとこだったんによォ……」


 彼女の発言は確かに正論。正しい関係は同級生の恋仲同士。そんなことを声に出したくない。

 オレはガノンと協力して鉄鉱石を運ぶ。目的地には、留守番していたミカエルをレノン。手を振って出迎えてくれた。


 彼らも保管場所を準備していて、鉄鉱石を積み上げる。思った以上の大収穫で、溢れかえる事態になってしまったが……。


「それじゃ金槌でも作るか……。木と木の噛み合わせも強力にしたいしな……。ついでにノミも作るか……」


 まずは柄になる木を削る。手で握りやすい大きさに加工したら、今度は鉄鉱石を溶かす作業。未来にも協力してもらう。


 事前に臼型にした石へ血を流し入れ、接触時の燃焼で鉄を溶かす。固まらないうちに錬成スキルで金槌に。

 さらに柄を削り、同じ工程を繰り返してノミとノコギリも錬成。釘も大量生産して、準備を進めていく。


「咲夜さん長方形のこれは……?」

「ああこれか。角材の準備しているのさ……。本当は専用の電動工具があるんだけどさ……。

 カンナ削りか電動ヤスリがあればなぁ……」

「咲夜くん。日曜大工(DIY)するの?」

「そうだけど……。今回が初経験なんだよなぁ……」

「チャレンジャーだね。そういうところ大好き!!」

「未来恥ずいって。嬉しいけどよ……」


 ちょくちょく雑談を入れて、組み木の準備。ノミを使って横に置いた木に(みぞ)の線を引く。定規がないので直線が難しい。


 もう一つの木にも噛み合うように同じ溝を彫る。彫った木同士を何度も重ねながら、隙間を埋めて釘3本で固定。

 横にも4分の1ほどの段差を作り、同じものを1000本近く用意。


「この彫った深さと同じ厚さのを作りーの……。段差同士を並べて、間に木を挟んで両側から釘で固定っと……」

「咲夜くん!! そうするんだったら反対側も溝彫らないとだよ!!」

「そ、そうなのか?」

「この木って厚さ40ミリくらいだよね? 釘の長さが12ミリって長いけど……」

「彫った深さは約10ミリ……ってことは」

「反対側から打ち込んでも貫通しないよ」

「マジかァァァ!!」


(さっきから誤算続きじゃねぇかよオレ!! 何やってんだよもう!!)


「ちょっと私にやらせて」


 混乱しているオレを差し置いて、ノミと金槌を握る未来。立たせた状態の板を寝かせて、またぐように縦の溝を彫る。

 等間隔に彫ったところへ厚めの木をはめ込み、奥まで叩き入れるとノコギリで余分を切り取った。


 断面はガタガタしているが、カンナが手に入ればどうにかなる。というよりも未来の手際が良すぎて、一瞬で作業が終わってしまった。


「テレビで見たのをやってみたけど……」

「いや、迷い無かったような気が……」

「気のせいだよ咲夜くん」

「気のせいって……オレの負けだ。ほんと……」

「ほらほらー。落ち込まない落ち込まない。らしくないよ?」

「未来さんと咲夜さんを見ていると、ほっこりしてしまうのです」


(んなわけねぇだろ!! ミカエル……)


 両手を(ほお)に当てながら、オレと未来の会話を眺めるミカエル。天使の微笑みに心が温まる。

 レノンもガノンも協力して木を運び、未来が先陣を切って組み立てていく。床と壁ができるのはあっという間だった。


「あとは屋根か……」

「屋根って難易度高いらしいよ?」

「うへぇ……。そういやオレも未来も〝高所恐怖症〟だもんな……」

「それでも私は透明床歩けるけどね。咲夜くんいつもへっぴり腰だし……」

「落ちそうで怖いんだよ!! 聞いただけでゾクッとするじゃねぇか……」

「で、どうするの? 屋根ないと部屋びしょ濡れになっちゃうし……。その前に(はり)とか柱の設置しないと……」


(抜けすぎだよ。工程間違いすぎだろ!! 未来がいてよかった……)


「そ、その……僕は何をすれば……」


 オレが混乱しては未来が解決。そんな状況に質問してきたのは、木材を運び終えたレノンだった。

 全身に汗をかき、達成感で生まれたような優しい笑顔。愚痴しか言わないオレとは雰囲気が別物だ。


 運ばれた木材はガノンが加工したらしく、厚さ数センチの板が並ぶ。この板は床用とのことで、未来がお願いしたようだ。

 それ以外にも、柱もガノンが配置してくれていたから大助かりだ。


「まずは、立てる柱の先を出っ張らせて……」

「太さが約150ミリ四方だから、縦は80ミリ、横は60ミリくらいにね。キレイな正方形だと折れやすいみたいだから」

「へぇー……」

「も!! 少しは興味持ってよ!!」

「す、すまん……。つまりは長方形にするってことだろ?」

「そう。私は差し込む側作って来るから」

「おう!!」


 そう言って未来は一回り太い柱へ向かう。なのに、オレが並べた枠に杭を打っている。基礎を作っているのだろう。

 彼女が言うには、コンクリートが欲しいとのことだが、さすがに原材料が揃うはずがなかった。


 木材だけでは強度と耐久性に欠けるそうで、腐食も心配されるが仕方ない。近いうちにコンクリートの材料調達も考えておく。


「咲夜くん!! こっち準備できたよ!! たしかに300本でいいんだっけ?」

「そうだな。足りなければまた作ればいいし……」

「設計用紙欲しくなってきちゃった……」

「しょうがないだろ。紙もペンもインクも、パソコンもコピー機もねぇからよォ……」

「あの……。ぱそこんとこぴーきってなんですか?」

「あーえーそ、その。レノン。それはだな……」


(いちいち説明すんのめんどくせぇ……。集中できねぇじゃんかよ!!)


 オレの後ろでハテナを浮かべ続ける異世界人。物珍しそうな視線に苛立ちながら、ヤケになりつつ建材を加工する。


 ただひたすらノミで彫る。彫れるだけ彫る。ものすごくつまらない作業ばかりだ。

 魔法でパパっと終わらせられるならいい。でも、DIYに決めたからには、最後までやり遂げるのが一番達成感がある。


「はぁ……」

「なんでため息ついてるんだよ?」

「私に代わって。まずは彫る長さと太さに合わせて、ノミで線を引くでしょ。

 次はノコギリで大まかに切り取って、ノミで段差を無くす。ノコギリは横に刃を入れられないから。ノミが入る太さに……」

「どちらにしろ手間かかるんじゃん!!」

「ほら愚痴言わない!!」

「あーい……」


(オレは未来の召使いかっつーの!! 別に彼女だし? あんな|意地悪クズ女帝馬鹿令嬢ライチよりはマシだけど……)


 彫刻刀みたいなアイテムも欲しい。手間はかかるが……。ひたすら足りない部材を作り、作ってははめ込み釘で留める。


 DIYがここまでつまらないとは知らなかった。そんなオレとは対照的に、未来はとても楽しそうだった。

 こんな作業のどこが面白いのやら。受験しか考えないオレには理解不能だ。


「こんな感じかなぁ? 咲夜くん!! ガノンさん!! ちょっとこの柱持ち上げてもらいたいんだけど……」

「持ち上げるって?」

「この出っ張りを穴に入れるの。ノミで彫るの大変だったんだからね!!」

「すま……」

「謝る前にさっさとやる!! 男性陣が動かないと何もできないの!! 持ち上げられない代わりに、差し込み穴を開けたわけだし」


(オレより楽しんでんじゃん。任せっきりはアウトだよな)


「本気でやりますか……」

「胸挟まないでね!!」

「いや、そこ心配するか? 未来?」

「見た目は女で中身は男。距離感難しいはずだから、腕力そのままならできるんじゃない?」

「は、挟むわけねぇって。ディスり方考えろ!!」

「ハイハイ。等間隔に差し込み穴彫ったから、柱の設置次第で筋交いを留める作業ね」


(まだ外枠作業なんかよ……)

読んでいただきありがとうございます!


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星5つけてくれると嬉しいです。

いいねの落し物なら賽銭箱にしまっておきます。


明日はちゃんと更新報告します。


ゲームが楽しすぎる!!

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