第4話 彼女と調達……オレ炭鉱夫になりました
※数字の表記を全角から半角に変更しました。
※誤字脱字修正をしました。
※改行修正・ルビ追加をしました。セリフ間の改行修正もしました
〝おめでとうございます!!
ペアスキル2【職業無双・スーパー大工】
のレベルが3になりました。
追加された効果は以下の通りです。
レベル3効果
・スーパー採掘(炭鉱夫職追加)
武器種問わずに鉱石採掘可能。高確率で原石獲得可能
・スーパー抽出師(鑑定士職追加)
原石や岩石の加工が可能になる鑑定士下位スキル。高確率で成功する。
・スーパー錬成師(鑑定士補助スキル)
・スーパー鍛冶師(鑑定士補助スキル)
以上です。こちらもここまで早く成長するとは思っていませんでした。これからの活躍応援しています。
裏日本冒険者ギルド協会本部より〟
「今度は採掘か……。ちょうどいい。ミカエル達はここで待機。未来一緒に行くぞ!!」
「待ってくださいなのです!! 咲夜さんはこの世界を知らないはずなのです!!」
「ま、まあな……」
「ならば俺が一緒に行こう。道案内ならできる」
「ガノン助かる。そんじゃあ、ミカエルとレノンはここで待機。んじゃ行くか」
「はいなのです!!」
ということでオレはガノンの案内で採掘場へ。樹海はとても広く、どこもかしこも木々が生い茂る。
この土地を私有地にすれば、いつかは巨大な国へと変貌するはず。それには長い年月を要するだろうが……。
もう街には戻れない。同時に冒険者ギルドにも戻れない。公爵家にも戻れない。生活する場所がない。
けれども、今のオレと未来なら街を作るだけのスキルがある。あとはこれをどう活かすか? そこが一番の問題だ。
「まもなく到着する。これから何をやる気だ?」
「岩石採掘だな。そしたら加工して木の棒にくっつけて金槌を作る。あとは鉄が手に入るのなら、それも欲しいな。釘になるからさ」
「釘か……。知らないな。実物を見たことがない」
(そうか。こっちじゃ存在しないのか。錬成するには想像力も必要になってくる。どれだけ忠実に再現できるか、なんだよなぁ……)
「咲夜くん?」
「なんだ? 未来?」
「ちょっとガノン怖くない?」
「いや、んなことねぇだろ?」
「そうかな……」
なぜかガノンに警戒を始める未来。どう見ても、ガノンが武器を持っているとは思えない。裏切りそうな人ではない。
オレは未来を必死に慰める。ずんずんと進むガノン。やがて樹海は途切れ大きな岩壁が道を塞ぐ。
ガノンも足を止め、『ここが目的地だ』と言わんばかりに首を振る。
「よし!! 早速始めるか!」
「う、うん……」
「……んで、どうやって採掘するか……」
――ズコォォォォォ!!
「ちょっと咲夜くん何も考えてなかったの!?」
「おん……」
「期待してたがやはり無脳だったか……」
「が、ガノン!!」
(おいおいマジかよ……。なにか代替できるやつねぇかなぁ? ナイフの刃こぼれはマズイし……)
もう一度考え直す。正面にそびえる岩壁は、転生前身長換算で20人分。ちなみに転生前の身長は178.9センチの高身長。
今は約167センチくらいだろう。10センチ近くの差なのに、見える範囲が違いすぎる。
偶然オレは地面に落ちた木の棒を拾う。こんなもので採掘できるなら、可能性は無限大だ。
「まさかな……」
「期待薄そう……」
「や、やってみなくちゃわからねぇだろ!!」
「そうだけど……咲夜くん」
「それで失敗するのならば、イタズラガラス以下とみなそう」
「うわっひっでェ……。これでも生徒会長なんだぞ! オレ!!」
「せいとかいちょう……とは?」
(異世界の人と全く言葉通じねぇ……。どう説明すりゃいいんだよ!! コノヤロー!! んあもう!!)
「咲夜くん一度落ち着いて……。咲夜くんの判断は間違いじゃないから」
「そう……だよな。んじゃ一発叩くか」
「私は後ろで見てるね。確認できたら手伝うから」
「おう!!」
未来の鶴の一声で、木の棒を岩壁にぶつける。掘れそうもない木の棒。絶対不可能と思った瞬間、予想外の展開になる。
――ガコーン!! ボコゴロロロロ……コトン……。
「ほ、掘れ……た……。嘘だろマジか!!」
「ただのまぐれにしか見えん……」
「咲夜くん確認のためにもう一度やって!!」
「お、おう。行くぞ!!」
――ガコーン!! ボコゴロロロロロロン……コトン……。
「す、すげぇ。マジで掘れてるよ!!」
「なん……だと……。まぐれにしか見えんと思ったが、この結果では覆せん。まさかこれは……」
「〝スーパー採掘〟のスキル効果だな……。ってか、自由度高すぎで実用性完璧だぜ。こりゃ土地開拓も楽になりそうだ」
「だよね咲夜くん!!」
こんな手軽に掘れてしまうとは、所有スキルがチートなのかもしれない。
「……この俺の予測が外れるとは……。まるでダークホースの令嬢だ……」
「男の娘だけどな。ハハハハハハハハハハハ!!」
「高笑いは程々にね」
「あいよ!! 検証も済んだことだし、本腰入れて採掘するか……」
「もう少しで日も暮れるもんね……。寝る場所も見つけないと!!」
「そうだな。ってか、早めに衣食住できる仮拠点作らねぇとじゃん!!」
(完全にオレの誤算だ……。仮拠点作るのが先だった……。レノンとミカエル大丈夫かなぁ……。
いや、きっと上手くやってるはず。今はそれを信じておこう。余計なことはあとあと!!)
「今は採掘だ!!」
必要ないことは追い払う。そして木の棒を岩壁にぶつける。砕けた岩はどんどん転がり落ち、使えそうな石を探す。
だけど、どれも大きさが足りない。落ちたものは約30センチほどで不揃いだ。加工しても金槌にはなりそうにない。
「咲夜くん。ちょっと交代いいかな?」
「いいけど……」
「私なら多分」
――ガコーン……。
未来が思い切り岩を叩く。叩いた時の強さが弱いからか、落ちる岩は細かく砕けていない。大きさも50センチと大きい。
これなら、加工で小さくなりすぎることはないだろう。おまけに5つも同じサイズが手に入ったので、4回までなら失敗できる。
次に狙うのは鉄鉱石。釘を作るには大量に必要だ。オレは再び木の棒を握り、奥へと穴を掘っていく。
予想よりも多く手に入ったが、全部で1000個近くは獲得したい。
『ふぅ……。ようやく二人だけになった……。やっと求めていたものが手に入る』
『が、ガノンさん?』
(入口からなにか聞こえる……)
『賢者の血が前々から必要だった。俺の親にプレゼントするために』
『け、賢者の血ってわわ、私の!?』
『そう。待ちくたびれた。もうなん月も親に会っていない。手に入れてから帰ると決めていた』
(み、未来の血って。オレの彼女が危険な状態に……。一旦引き返して止めなければ!!)
『賢者の血って、そんなに需要あるの?』
『噂ではそうらしい。こんな近くにいるとは、運がいい』
『ちょっと謎が多い感じするけど……私で良ければ……』
(ちょっ!? み、未来!?)
『私で良ければいくらでも使ってください。私賢者だし。たくさんの人を助けたいし。どんな効果なのかわからないけど……。
それでみんなが助かるのなら、血が全てなくなっても大丈夫です。
咲夜くんがしてくれるなら痛くないし。私自身でやれば多分相当痛みはあるけど、自然回復はとても早いから』
「みみ未来待った!!」
オレは勢いよく会話に割り込む。〝賢者の血〟? オレの彼女に傷はつけたくない。未来とガノンの動きを止めさせる。
お互いにぱちくりさせて、不思議な空気に包まれる樹海と岩壁の境目。木々も『どうしたものか……』と葉を揺らす。
「咲夜くん。私ガノンさんの家族を助けたいの。助けたいから血を流してもいい。役立つなら……」
「何考えてんだよ未来!! 自分の命が先だろ!!」
「そんなのわかってるよ。だけど、私ボランティアしたことないし……」
「オレだってやったことねぇよ。それにお前はオレの応援者になってくれたじゃないか!!」
「それは個人間でしょ?」
「違ぇよ!! オレのためにビラ作って、一緒に貼って。オレが受験勉強している間も一人で配ってくれた。
だからオレは生徒会長になれたんだ!! それくらい未来のことを愛してるんだ!! 感謝してるんだよ!!」
ここまで言えばきっとわかってもらえる。そう信じていたい。自害など考えたくない。死ぬなんて論外だ。
「咲夜くん……。だけど!!」
未来の助けたいという瞳の輝きは消えなかった。彼女は本気の目をしている。
これ以上彼女を止めたとしても、結果は同じだろう。賛同するしか道がない。
震えながら袖のナイフを取り出す手。折りたたんだ刃を出して、未来に向ける。しかし、そこから前に進めなかった。
傷つけたくない。その気持ちが強すぎるせいで……。未来はいつまでも彼女。巡らせるほどに震えが激しくなる。
「ねぇほら早く!!」
「いやしかし……」
「咲夜くんったらいつも安全運転なんだから……。気にする必要ないのに……。ねぇ早く!!」
「どうして傷つけられるのをわかってて、笑顔になれるんだよ……」
「咲夜くんは知らないと思うけど、小学校から中学校までいじめられてて。その時に皮膚を切られたりとかされてたから」
「相談所に相談しなかったのか?」
「したよ。裁判にもなったくらいだから。学校側が関与を認めてくれなかったの。一度は絶とうと思ったけど……」
「思ったって……」
「中学3年生の三学期。私の学校に咲夜くん転校してきて、庇ってくれたでしょ。あの時咲夜くんが好きになったの」
「そんな……。そんな初耳だよ……あん時からオレを応援してくれたなんて……」
未来がいじめられてたのもなにかの縁。余計にナイフを刺せなくなった。
そんなオレに対して、刺される気満々の未来が近づく。そっとオレのナイフを手に持ち刃を左胸に当てる。
刹那。両目を開いたまま自分の胸を貫かせた。未来の左胸からは、多量出血どころではない血が溢れる。意識に変化はない。
逆に笑顔のままだ。役立てて欲しいのだろう。オレはその意思を悟る。瞬く間に地面は血の海。ガノンはその血を瓶に詰める。
未来の顔が青ざめていく。血の気が引いて行く。それでもなおにっこり微笑む。とても嬉しそうだ。
「ガノンさんは、好きなだけ血を持って行っていいよ。私はこのまま寝るから。咲夜くんは鉄鉱石集め頑張って!!」
「死ぬなよ!!」
「もう大丈夫だよ……。おやすみなさい」
「おやすみ。未来」
「グリグリお願い」
「何を?」
「胸のナイフ」
「自分でやれ!!」
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