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「何? 黒狼の消息を掴んだ?」

「ええ、私も驚いたわ。 でも確かよ」

「どこだ?」

「それがね、半年前まではルーマニアに居たと報告があって詳細を掴もうと思って現地に派遣した途端消息不明に。 そして先日富士の樹海に化け物が現れるって情報を掴んだの、そしたらそれが」

「黒狼だったってわけか、にしても日本に居るとはな。 それにルーマニアでのこと俺に黙ってたな?」

「そりゃあ梢ちゃんの屋敷の襲撃と同時期だったからね。 余計な心配はしたくないしさせたくないの私は」

「そうか、そうだな。 だが今の俺達はあの時とは違う、ビャッコにだって勝てる」

「ええ、対策というか強引な力技だけどね」



ルノからビャッコ…… いや黒狼の消息を掴んだ俺は直ちに現場へ赴くことにした。



こちらの戦力は俺とルノ、そしてメイ、カズハだ。 黒狼が相手なら半端な奴らは連れて来れない、犠牲が増えるだけだからな。 



梢からメイを借り受けるのは躊躇したが事が事だけに絶対無事に帰ってくることを条件としてメイも連れて行く事になった。 あまりに危険なので梢は留守番だが。




「自衛隊も演習してないし被害は出ないわ」

「それに樹海だしな、奴とやりあう場所としては最適だ。 奴がヤタガラスに引き込む前に俺達が潰す」

「潰すったってビャッコだよ、出来るのお兄ちゃん?」

「前と今じゃ状況が違う、こっちにもメイが居るしな」

「私などが役に立てるのでしょうか?」



メイが少し不安そうに俺とルノを見て言った。



「ああ」

「ハルは白狼との繋がりももうないし私もハルとあんまり変わらないしね。 メイもカズハちゃんも強いから助かるわ」

「ええ〜?! ルノお姉さんあたしを褒めるなんて珍しいー! あたしかルノお姉さんどっちか死んだらして」

「演技でもないこと言うなカズハ」



だがメイが居るからといって確実に勝てるとは言い難い、ルノがこの世界で新たに作ったアーデルハイト、そして俺達に装備させたファングブレイカーや銀弾頭など黒狼対策の装備は固めているが…… あいつと闘ったことがトラウマにでもなってるのか俺は?



「ハル、止まって」

「ん?」



考え事をしていたせいで反応が一瞬遅れたが何か居る、ルノ達は何かの気配で既に臨戦態勢だ。



「ハル、どこだと思う?」

「的確な位置までは俺もわからない、相手が上手く隠してる」

「上ですッ!!」

「うわわッ」



メイが俺達よりも早く気付き俺達はその場から飛び退いた。



「おや、鋭いのが居るな」



俺達が居た中心に降り立ったのは片目が塞がっていて頭が白髪混じりのオールバックの長身のスーツを来た男だった、手には刀を持っている。



こいつ、この雰囲気まさか……



「この私の初撃に気付くとはなかなかの手練れだ、だがそれだけのこと。 どれ、誰から斬られたい? それとも全員まとめてか?」



男は刀を構えると物凄い気迫だ。



「お前セイリュウか?」

「!? 何故それを?」

「こらこらセイリュウ、先走っちゃダメじゃないか」



カズハの後方から聞き覚えがある声が聴こえた。 



バ、バカな…… まさかあいつらも!?



「ハル、ちょっと予想外ね」

「この声ってもしかしてミロク?」



カズハが声の方に振り向いた時セイリュウはその隙を見逃さなかった。



「カズハッ!!」

「え? あッ!!」



俺よりもカズハの近くに居たメイとルノがセイリュウの斬撃をすんでのところで止めた。



「カズハちゃん油断しないッ!」

「まったくカズハ様は」

「あ、あははッ、ごめん」

「ほぉ、私の攻撃の軌道を読んで威力を相殺するとは」

「お生憎様、その手の攻撃は痛い程身体に染み付いてるのよ」



ルノはアーデルハイトを抜きセイリュウに放つが難なく躱した。



「これはこれは。 やはり腕が立つ」

「セイリュウ、それくらいにしておいたらどうだい?」

「ミロク、彼らは私の獲物だ」



ミロクは「やれやれ」と言って悠々とゲンブの肩に乗りこちらに歩いて来た。



ミロク!! その姿はあの時とまったく変わらない、そしてゲンブの隣にはスザクも居た。



「やっほーハル!」

「スザク! その言い様やはりお前あの時のことッ!!」

「そっちも記憶はあるみたいだね、てことは周りのみんなも? あ、ひとり抜かして全員知ってる感じ?」

「勿論よ」

「あははッ、そっかぁ。 そんでもっておチビは大きくなったねぇ」

「うっさいスザク! もうチビじゃないし!!」

「ハル様、この方々はお知り合いでございますか? 戯れにしては先程は過ぎた挨拶だと思いましたが」



状況がよく掴めていないメイがそう聞いてきた。



「ああ、あいつらは敵だ」

「わかりました」



メイは俺達の敵だということを聞くと表情が座り本格的な戦闘態勢に入る。



「スザク、君はもう少し自分の能力を勉強すべきだね」

「えへへ、ごめんミロク!」

「まったくどこか抜けてるよねスザクは」

「えへへ、でもいーじゃん! いつもミロクを助けてるんだから」

「そうだね、スザクが居るおかげで大分助かってるよ。 こうして彼らとも会うことが出来たしね」



やはり俺達のことはスザクから聞いてるか。 そしてはっきりわかることはこいつらも黒狼を狙っている。



「もう茶番はいいかミロク?」

「すまないセイリュウ、もう少し付き合ってくれないか? 彼らと話したいことが沢山あるんだ」



ミロクが言うとセイリュウは大きく溜め息を吐いて刀を収めた。



「ありがとうセイリュウ。 では早速だがハル、君の目的は黒狼の始末、それで合ってるかい?」

「そうだが? 邪魔するならお前らを先に始末する」



こいつらに黒狼を渡すわけにはいかないしな。



「それはいけないね、黒狼は僕達にとっても欲しいところなんだ。 けれどひとつ懸念があってね、黒狼が僕らの仲間になるのはもう少し先の話、今彼と会ったところで果たして僕の思惑が達成出来るだろうか?」



何が言いたい? 正規のルートじゃないからこの場では黒狼が仲間になる保証がないってことか?



待てよ、ここでこいつらを始末してしまえばこいつらとの因縁も消える。 のこのことミロクまでやって来たんだ、これは絶好のチャンスなのでは?



「だったら諦めるんだな、この場で俺達と戦って全滅するか黒狼に反撃されて全滅させられるかどちらか選べ」

「言わせておけば小僧、私がお前達に遅れを取るなどと思ってるのか?」



激昂したセイリュウは俺に向かって刀を構えた。



「よせセイリュウ。 君はまだ産まれてもない我が子を見ないで死ぬ気かい?」

「ミロク、お前まで何を言っている?」

「そうじゃないよセイリュウ、君は大切な戦力なんだ。 君を失えばセイリュウを継ぐ者はどうなる? つまらない闘いで命を落とすなと言っている」

「そーそー、次世代のセイリュウはしっかり教育しないとね! ミロクにすぐちょっかい出すんだから」

「おい、お前らの身内話なんかどうでもいい、俺は決めた。 黒狼を倒す前にお前達を倒す、これが一番最善手だ」



ルノ達に合図を送る。



「そうねハル、私もそう思ってたとこよ」

「え? ええ!? いきなり路線変更?」

「私はハル様達の敵を殲滅するだけです」



戦闘態勢を取った俺達の前に再びセイリュウが立ちはだかる。



「どうやら話は終わったようだなミロク」

「やれやれ、そうなれば仕方ないセイリュウ、蹴散らして行こう」

「言われずともそのつもりだ」



再びピリリとした空気が張り詰める。



「4対1だ、俺達全員でまずセイリュウを潰す」

「うへぇ〜、お兄ちゃん容赦ないなぁ。 でもあたしもさっきのムカついてるから賛成」

「カズハちゃん、気を抜かないでね。 私達が知ってるセイリュウとは違うのよ」



セイリュウは構えたまま動かない、そして俺達も。 こういう時の戦術はみんな心得ている、相手が先に動くのを待つ。



相手が攻撃を仕掛ければ他の3人がその隙を突き相手を倒す。 言ってしまえば単純なことなのだが瞬時に状況判断が出来る反射神経と瞬発力が必要だ。



「雷獣」

「ッ!!」



セイリュウが突如として雷の如く俺達全員にほぼ同時に仕掛けた。



「ほう」

「みんな大丈夫!?」



実際に何度かセイリュウと闘ったルノは無傷で躱したが俺達は浅いがダメージを負った。



「やるな女。 ほぼ同時に仕掛けたが雷獣をくらって無傷で済むとは」

「だから言ったでしょう、痛いほど染み付いてるって」

「あたたた、ルノお姉さんが作ったこれなかったらスパッといってたよ」

「これが斬撃……」



「くくッ、ミロクが警戒するのもよくわかる。 だが四神の中で2人しかおらぬ戦を司るこのセイリュウの私は万夫不当一騎当千」

「確かに凄まじい斬撃です、私もこれほどの斬撃を受けたことは今までありません。 一騎当千と言うだけはあります。 ですが……」

「ぬうッ!?」



メイはセイリュウに詰め寄る。 速い、セイリュウは迎撃態勢を取るがメイは構わず突っ込み刀がメイの手の甲を貫通する。



「何ッ…… 抜けない?!」

「あなたの攻撃速度は一度受けたので大体わかりました、そしてルナ様から頂いた手甲と私の攻撃力を換算すればあなたを地に伏せることは可能です。 奥の手でも隠してなければ」

「くッ!!」



メイはセイリュウに拳を叩き込んだ。




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