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「ええと、あったあった!」

「よく配置がわかりますね」



メイちゃんは感心したかのようにテキパキと調味料やら何やらを出していくのを見ていた。



自分だけ何もかもやってもらうのが申し訳なくて私も何かお手伝いをと思って出来ることをやろうとしていて厨房にはよく顔を出してたんだよねぇ。



でも向こうからすれば私が余計なことしようとしてるように見えたのかただ単に邪魔だったのか迷惑そうだったけど……



「でも私しばらく料理とかしてなかったから美味しくなかったらごめんね」

「滅相もありません、私には出来ないことなので」



メイちゃんは料理出来ないのか〜、あら? だとしたら私にお腹空いてないか聞いてきた時どう用意しようとしたんだろう??



どこかに買いに行ったりかな? それはそれでここら辺は何もないし大変そうだし。 というより本当に久し振りに料理するから少し自信ないな。



「オ、オムライスだけど宜しいでしょうか?」

「?? 私は一向に構いませんが。 ですがこんなことはやはり」

「いいからいいから! メイちゃんはそこに座ってて」



メイちゃんを座らせると料理に移る。 



まぁでもなんとかなるものでそれっぽくは出来た、味は流石にここの厨房の人が作ってくれたものとは天の地の差くらいはあるけど。



「どうぞ」



待っていたメイちゃんにオムライスを差し出すと私の顔を伺う。



「いいのですか?」

「うん」



もしかしてメイちゃんの舌は結構肥えてて私の料理なんて食べれもんじゃないとか言わないだろうけど顔に出たりして? と恐る恐る見ていると……



「美味しい……」

「え?」

「あッ、大変失礼しました。 とても美味しかったのでつい」



意外な反応。 美味しいと言ってくれたメイちゃんの顔はメイドとして働いたり昨日みたいに戦っていたメイちゃんとはまったく違う表情だったから。



もしかしてこれが素のメイちゃんなのだろうか?



「いいよいいよッ! 美味しかったなら私も嬉しいしどんどん食べて」

「は、はい……」



だけどメイちゃんは何故かスプーンが進まない様子…… 美味しいと思ったのは気のせいだったとかじゃないよね!?



「どうしたの?」

「いえ、あの…… そんなに食べるところを見られると少し恥ずかしいので」

「あッ…… ごめん! てか私もなんだかお腹空いてきちゃったんだ。 だから一緒に食べよう」



メイちゃんと向かい合わせになって私もオムライスを食べる。 メイちゃんは美味しいって言ってくれたけどやっぱり普通に食べれないこともないオムライスだな、これからはブランクを取り戻すためにちゃんと料理したほうが良さそう。



「ご馳走様でした、私のためにこんな料理までしてくれて本当にありがとうございます」

「どういたしまして! 次はもっと上手く作れるように頑張るから楽しみにしててね」

「次…… もあるのですか?」

「あるよ!」



そう言ってメイちゃんに微笑むと顔を下に向けられた。



なんだか不味かった時の反応みたいじゃんと思ったけど断られもしないしいいってことだよね?



それから私はお風呂に入って寝ているとメイちゃんが部屋のドアを開けて私の様子を一目見るとすぐに出て行ってしまった。



次の日になるとメイちゃんは私が寝た後に掃除を再開してしまったので3分の1は綺麗になっていた。



「メイちゃん休まなかったんだ」

「すみません……」

「ま、まぁ今日は思いっきり休めばいいし! 後は私がやっておくから」

「そういうわけにもいきません、今日はハル様とルノ様がいらっしゃいます」

「ええッ!?」



いきなりのハル君とルノさんの訪問。 だったら全部綺麗にしておかなきゃと思うけど2人じゃ終わらない。



「あ、でもハル君達はこんなことになったって知ってるのかな?」

「私が報告しておりますので。 もうお越しになると思います」

「え!?」



そう言った途端外の方から何やらけたたましい音が聴こえてきた。



私とメイちゃんは外に出ると空に人がいっぱい入りそうな大きなヘリコプターが…… ハル君達だよね? てか庭にヘリポートみたいなのあったけど実際ヘリで来られるのは初めてだ。



ヘリコプターが着陸してから出てきた人はやっぱりハル君達だった。



私は2人のところへ駆け寄るとメイちゃんも私の後についてきた。



「ハル君! ルノさん!」

「ごめんな梢、怖い思いさせて」

「ホントよハル。 いくらメイが居るからってほぼ全滅させられてるじゃないの」

「申し訳ございません」

「違うの2人とも! メイちゃんはちゃんと私のことを守ってくれたの」

「そうみたいだな、梢を守ってくれてありがとうメイ」

「そんな…… このような失態を犯した私にお褒め頂くなんて」



そうしているとヘリコプターの中から続々と人が降りて来た。 何かの特殊部隊の人達なのか統制の取れた動きで屋敷の中へと入って行った。



「ハル様、この方々は?」

「ああ、知らせを聞いて屋敷の中が大変なことになってるだろうと思ってな。 あいつらが屋敷の中を元に戻してくれるさ」

「へ、へぇ〜」

「2人ともいろいろあって疲れたでしょ? だからゆっくりしてなさい、それと……」

「やっほー! シエルちゃん、メイたん!」

「ああ、もう」



話の途中で現れたカズハちゃんにルノさんが溜め息を吐く。



「シエルちゃんじゃなくて梢ちゃんでしょ?」

「あたしにはシエルちゃんってのが馴れてるしー! みたいな! アハッ」

「すっかりこの時代に染まったよなお前。 最初はヤバダサッとか言ってたくせに」

「郷に入っては郷に従えじゃんお兄ちゃん、それにしてもメイたんは相変わらずだなぁ」



カズハちゃんは無表情なメイちゃんの頬っぺたを摘んでムニ〜ッと伸ばした。



「こらカズハ」

「ええ〜、だってぇ」

「カズハ様も相変わらずでございますね」

「一緒に地獄の特訓した仲でしょー? メイたん」

「カズハちゃんは特に覚えが悪かったものね」

「クロウの心中も察せられるな」

「2人してあたしを責め立てるー! シエルちゃん助けて」

「ま、まぁまぁ。 みんなは今日はゆっくりしていけるの?」

「そうだな、話も聞きたいしゆっくりしていくよ」

「では私は仕事に戻りますので」

「話を聞いてなかったのメイ? あなたも少しは休みなさい」



しれっとこの場から居なくなりそうなメイちゃんをルノさんは引き留めた。 



そしてハル君が車を用意してくれて私達は屋敷から移動して何故か更に山奥の少し大きめなロッジがある場所へと連れて行かれた。



「ハル君何ここ?」

「ついこの前出来たばかりなんだ、そのうちお前も連れて来ようかなと思ってたんだ」

「ええ〜!? ハル君がそんなサプライズするなんて」

「いつもムスッとしてるからわからないわよね」

「うるさいな」

「お兄ちゃんは今やヤタガラスもなかなかちょっかい出せないくらいビッグになったもんね! いやぁー、お兄ちゃんがあたしのお兄ちゃんでホント良かったぁ」

「お前はルノと同じく金にがめつくなったよな」

「私の影響みたいなこと言うのやめてよね、お金の管理は大事なんだから」



ハル君達は「とりあえずくつろいでくれ」と言われたのでロッジの周辺を見て回ることにした。



するとメイちゃんが私について来た。



「ん?」

「いえ、何があるかわからないので念のためです」

「それじゃいつもと変わらないよメイちゃん。 何かやりたいこととかないの?」

「思い付きません」



即答……



「えっと…… 私はただ散歩してるだけだしそれはメイちゃんにとっては退屈かな?」

「いえ、そんなことはありません」

「じゃあ楽しい?」



そう聞くとメイちゃんは言葉に詰まる。 だけど……



「楽しい…… のかもしれません」



メイちゃんは微かに笑ってそう答えた。 









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