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ここは…… ?
「目が覚めたかハル坊」
「父…… クザン?」
目が覚めるとクザンが居た。 いや、クザンだけじゃなかった。
「お兄ちゃん! 意識が戻ったんだね!」
「ハル君!! ああ、良かった」
「ハルもお目覚めのようね」
「ルノ…… ここは?」
「私も今目が覚めたの。 死んだみたいじゃないみたいだし…… 私達生きてる。 やったねハルッ!!」
「どわッ」
いきなりルノに抱きつかれてベッドから落ちそうになった。
「お、おいルノ? お前こんな人前で」
「いいの、ハル大好き!」
「素直になれとは言ったが…… まぁ良かったな、ハル坊、ルノ嬢ちゃん」
「あの後一体どうなったんだ?」
そうだ、ミロク達はまだ余力があった。 俺達を消そうと思えば出来たはずだが。
「そりゃあなんかヤバそうな雰囲気だったから俺やそこのカズハ嬢ちゃんと梢ちゃんで止めに入ったさ、けどミロク様は「協力者にそんなことするはずないじゃないか、それに僕らはこれから奴らを粛清しに行かなくちゃいけない」って言ってウィルミナの逃げたメンバーぶっ殺しに行ったぜ。 まぁミロク様のいつものおふざけだ」
あいつらが俺らを見逃した? そんなことがあるのか? 協力したとはいえいつでも敵になってもおかしくない俺達を。
いや、だがあいつは言ってたな。 クザンと俺の家族を手放し俺との因縁はもうないと。
「ハル、何にしろ私達生きてる。 私達の忌まわしい過去の組織もじきに崩壊する、これって凄く良い方向に進んでるよ」
「ま、まぁそうだが」
「む、むむッ……」
さっきから梢が頬を膨らませてこっちを見ていた、俺の視線にルノが気付くとルノは梢を抱き寄せ俺達3人はくっ付いた。
「ル、ルノさん?!」
「いいから、梢ちゃんも」
「えへへッ…… わ、私もハル君が大好き」
「ええ〜、シエルちゃんまで惚気ちゃうの?」
「あ、ええと…… とにかくみんな無事で良かった」
「それもそうだけど、それより私と梢ちゃんに言うことは?」
「言うこと?!」
「はぐらかしちゃって。 まぁいいわ、とりあえず身体の調子が戻ってからでもね」
それから俺とルノの体調も良くなって1週間くらい経った頃だ。
「なんで俺達をまたここに呼び出す?」
ミロクのアジトにまた呼び出されていた。 今はスザクが居ないのでパッと一瞬でも行けない。
「いやね、例のこと考えてくれたかなと」
「ヤタガラスを受け継ぐって話か?」
「そうだよ、是非返答を聞きたい」
そんなの決まってる。
「その話はなしだ」
「断ると?」
「俺はアメリカに狙ってる場所があるんだ、俺がそこを国として成立させ乗っ取り独立させ俺はその国の大統領になる。 無論アメリカは早々応じないだろうがその時はサクッと大統領を始末するだけのチョロい仕事だ、てなわけでこれからやることがあるってことだ」
言った途端咲姫が俺を睨んだ。
「よくもミロクのッ…… あーうん、でもミロク、私こんな連中がやるよりミロクがミロクしてて私はそのミロクを守りたいわ」
「んん、そうかい? 僕はもう普通の人間並の寿命しか残されていないみたいなんだが。 あと50年生きられれば良い方だ、僕はこの先衰えて行くだろう、ビャッコやゲンブはどう思う?」
「我はそんなことどうでもいい、勝手にしろ」
「俺もその時が来るまでミロクの盾として守り続けるだけだ」
「やれやれ困ったね」
ミロクが少し考えていると咲姫はミロクの手を取った。
「ねえミロク、私と子供を作らない?」
「うん?」
「ミロクを受け継ぐ新しい世代を残すの、私とミロクの子供なら凄く将来有望な子が出来ると思う…… 多分」
いきなり何言ってんだこいつら?
「ふむ…… まぁそれはそうかもしれないね」
「ほ、ほんと?!」
「四神と交わるか、こんなことにならなければ思いもしなかったことだよ、僕は長い間生きすぎて人らしさというものが少し欠如していたからね、君には迷惑掛けるかもしれないよセイリュウ?」
「全然ッ! 寧ろ私に甘えて構わないわミロク」
そんな様子を見て隣に居たルノと梢は笑いを堪えていた。
「そういう方向に行くなら俺達はもう帰っていいだろ?」
「ああ、ちょっと待ってくれ。 キリオが梢のことを呼んでいたんだ、会いに行ってくれないか? それとセイリュウ」
「げ……」
ミロクのアジトから数時間車を走らせると、俺が梢を住まわせていたところよりもとてつもなく広い敷地にこれまたとてつもなく広い家があった。
「ここよ…… というよりなんで私が」
セイリュウは迷惑そうな顔をしていた。
「それにあなた達が何故来るわけ?」
「梢も居るしな」
「私が何か雪乃梢にするとでも?」
「しないという根拠は?」
俺とセイリュウの付近の車の窓にピシッと亀裂が走る。
「あわわッ、ハル君、咲姫さん! ここ咲姫さんの家なんだからやめようよ」
「あなたもいつまで気安く名前を呼ぶの? 私はセイリュウよ」
「あ、いや、だってキリオさんともお友達だし咲姫さんとも」
「だからなんでそんなに母様と仲良いの?! 気持ち悪い!」
「そんな言い方ないはずよ、あなたのお母さんが怪我をしてその看病してたのは梢ちゃんよ? なのに義理も恩もないのねセイリュウ家には」
「な、なんだと?! うぐぐぐッ…… い、いいわよ来なさい梢!」
ルノに痛いところをつかれて咲姫は梢を連れて行った。
「私達は行かなくていいの?」
「ああ、俺らが居ても気が散るだろうし」
「何かされるんじゃって心配してたじゃん」
「そんなことはないってもうお前もわかってるだろ?」
そう言うとルノはクスッと笑った。
「ん?」
「え? あッ、クザン居たの? てっきり最初に帰ったのかと思ってたのに」
「ああ、ハル坊と話がしたくてな」
「話?」
「ハル坊…… お前何者だ?」
クザンが俺に問い掛ける。
「何者って俺は俺だが」
「とぼけんじゃねぇよ、前からお前には引っ掛かっていた、どこか俺の妻に面影があって俺にもある…… そしてミロク様の話していたことも引っ掛かっていた、ここは元の俺の世界とは違う、だがお前にとってもそうだろう? それからあの時目覚めた時俺のことを父さんと言おうとしたか?」
しまった、その時のこと覚えて……
「ハル、もういいと思うの」
「ルノ?」
「クザンはあなたのことを知ったからって別に何も変わることはないわ。 言うべきよ」
「…… そうだよな。 クザン、お前は俺の父さんなんだ」
クザンはそれを聞くと少し黙ってタバコに火をつけた。
「やっぱりな、そうじゃなくてもどっかの俺の近縁者なのかもと思ってたが俺の息子のハルだったか」
「ハルが居ながらお子さんにもハルという名前を付けたようねクザン」
「ああ、俺をぶっ倒した男の名とお前のような優しさを持って欲しいからハルって名前にしたんだ」
「ごめんな父さん…… 本当はすぐ言いたかった、けど言ったらどうなるかわからなくて」
「いやいい、俺がお前でも躊躇したかもしれん。 けどな」
父さんはタバコを消して俺に近付くと腕を回して抱きしめた。
「そうかぁ、ハルは将来こうなるんだな。 ミロク様達にも負けない強くて…… そして優しい男に。 父さんは嬉しいぞ」
「父さん…… 俺はそんなに」
「いいんだ、俺はそう思っているから」
ルノは俺と父さんを見て「積もる話もあるようだからお先に失礼するわ」と言って先に帰って行った。
俺は父さんに俺の居た世界のこととそこで何があってどうしたか、そしてルノと梢のことを話した。




