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「ではおやすみなさいませ」

「うん、メイちゃんもお仕事程々にね」

「そういうわけにはいきませんので」



メイちゃんが出て行って私は目を閉じてしばらくすると寝てしまっていたけど突然目が覚めてしまった。



それは誰かが私の身を引っ張ってベッドから引き摺り下ろしたからだ。



「メ、メイちゃん!?」

「しッ! 静かにして下さい」



メイちゃんの口調は落ち着いていたけど辺りを警戒しているようだった。 



「ん?」



ひょんなことに気付いた、私はメイちゃんの服を掴んでいたのだけれど少し湿った感覚があったので暗いけど自分の手を見てみた。



よく見てみると……



「ち…… 血ッ!? こ、これってメイちゃんの??」

「私のではありません、それと静かにして下さい、これは私と一緒にいた梢様の従者の者の血です」

「な、なんで?」



恐る恐るメイちゃんの顔を覗き込む。



「どうやら賊が侵入したようです、誰が狙いかはわかりませんが大方ハル様達に恨みがあるのか敵対勢力の可能性が高いです」

「そんな…… ここは安全なんじゃ?」

「どうやら内部に侵入されていたようですね、そもそも安全に見えるだけでこの世界に本当に安全な場所は人が居る限りどこにもありません」

「そ、それ言っちゃ身も蓋もないよ」



そう言った途端メイちゃんに口を塞がれた。



「聴こえますか? この部屋には私達以外誰も居ないようですが廊下から足音が聴こえます」

「え?」



耳を澄ますけど私には何も聴こえない、メイちゃんが耳がいいのか私が悪いのか……



そう思っているとガチャッとドアノブが動く音がしたけどメイちゃんが鍵を掛けたのかドアは開かない。



私は急に怖くなって身が縮こまったけどそんな私にメイちゃんはニコッと微笑んで「大丈夫です」と言う。



「何かあった時は私が命にかけて貴女様をお守りしますので」



そう言ったメイちゃんはどこかハル君がそう言っているような安心感を私は覚えた。



でも何かあったらメイちゃんにまで被害が及んでしまう。



「に、逃げようメイちゃん、他の人も心配だし」

「それは難しいかもしれません」

「へ?」

「賊は私と梢様以外を皆殺しにしてしまいました、私が事後報告をハル様とルノ様に報告している僅かの間に」

「う、嘘!?」



メイちゃんは毎日私のことをハル君達に報告しているみたいでその間しばらく部屋の中に居るけどそんなタイミングで…… ああ、でもこの屋敷の誰かがメイちゃんの行動とかも見越しててのことなんだ。



私とメイちゃん以外の人を……



この屋敷に来てからみんなの顔も覚えて仲良くなったのに殺された人達だって家族や恋人だって居るかもしれないのに侵入してたんならその人だってみんなとそれなりに仲良くなってたはずなのにそんな人を殺すなんて。



私が突然のことに震えているとメイちゃんは優しく頭を撫でてドアの反対側のベッドの影に私を置いた。



「恐らくすぐここに賊は入ってくるでしょう、もともとは私の油断でこうなってしまいましたので私が対処致します。梢様はどうか隠れていて下さい」

「ダメだよ、メイちゃんにまで何かあったら!」

「心配は無用です、私はこういう事態もハル様達から対応するようにと言付かってますので」



メイちゃんが!? 今まで接してきてそんな風には全然見えなかったけど。



メイちゃんが立ち上がるとドアが物凄い音がして壊れた、そして廊下の灯りでその人が見えた。



あれは……



「流石にお姫様が居る部屋の扉は頑丈だ」

「飯塚さん!」



その人は屋敷の清掃員の飯塚さんだった。



「何をしてるのかわかっていますか? 調べれば貴方の仕業ということは明日にも判明してそうなれば貴方はこの国から生きては出られなくなりますよ。 いえ、厳密にはこの屋敷からですが」

「はははッ! そんなことわかってるとも。 だが果たしてそうかな? お前達を素早く始末すれば対処は容易い」



飯塚さんは私達を指差して言った。



あんなに気さくに話をしてくれて凄く良い人なんだなって思ってたのに。




「貴方に出来ればの話ですが」

「くくく……」



飯塚さんは両手からナイフを取り出すと身構えていたメイちゃんに一歩で懐に迫った。



私の部屋は無駄に広くて飯塚さんとメイちゃんの距離は10メートルはあったのにそれを一瞬で……



「ほらッ!」



飯塚さんがメイちゃんの顔にナイフを突き立てるけどそれより早く身を捻りながら躱して後ろ蹴りで飯塚さんを蹴り飛ばした。



「女のくせになかなか速い身のこなしだな、見た目からは想像がつかんがパワーもある。 お前を警戒していただけはある」

「貴方こそ、一瞬で終わりにしてあげようと思ったのですが。 それと刃に毒を塗ってますね?」

「そりゃあ皆殺しだからな当然だ」

「そんな物騒な物はこの屋敷には不要なので貴方はさっさと無力化します」

「はッ! やってみな!」



飯塚さんが片方のナイフをメイちゃんに向かって投げるがメイちゃんはそのナイフを逆に掴んで投げ返した。



「おッ!?」



飯塚さんが投げ返されたナイフをナイフで弾くとメイちゃんが今度は一瞬で飯塚さんの懐に飛び込んだ。



「終わりです」

「ガフッ!」



メイちゃんは掌底みないなのを飯塚さんの顎に当てると天井近くまで飯塚さんが吹っ飛びそのまま床に落ちた。



「ふう……」

「メ、メイちゃん?」

「片付きました、怖い思いをさせてしまって大変申し訳ありませんでした」



メイちゃんが私に向かって頭を下げた。



「そ、そんな…… 私は。 あッ!!」



その時メイちゃんが吹っ飛ばした飯塚さんがヨロリと立ち上がった。



私の言葉に反応したメイちゃんはその場から飛び退いた。



「確かに急所に当てたのですが」

「くくく、ビックリしたし効いたぜ。 けどなぁ、俺は生憎その程度じゃくたばらないようになってるんでな」



飯塚さんの顔から血管が浮き出て目も血走って普通じゃない雰囲気を出していた。



「どういうことです?」

「知らんなぁッ! だがお前達が死ぬことは決定事項だ!!」



そう言った飯塚さんの姿が消えたと思ったらメイちゃんの姿も消えてその瞬間私の背後から鈍い音が聴こえた。



「それはないでしょう? 貴方の相手は私です」

「ザコから始末だ」

「させません」



振り向くとメイちゃんが飯塚さんを抑え込んでいた、自分より圧倒的に体格がよくて普通じゃない飯塚さんを。



「メイちゃんッ!」

「ご安心を。 絶対梢様に危害を加えさせたりしません」



心配する私に優しくメイちゃんは言った。



「こ、このッ!」

「貴方の力はどういう原理か知りませんが貴方も本当の私をよく知らないでしょう? こちらこそ生憎ですが隠していた力は私の方が上だったみたいですね、強引に力で押し切れると判断しました」



メイちゃんは掴んでいた飯塚さんの腕を握り潰した。



「ぐぎゃあッ!!」



それからメイちゃんは男の首を掴んで勢いよく床に飯塚さんを叩き付けた。



「お、おまへッ…… な、何者ッだ……」

「私の使命はハル様ルノ様に仇なす存在を殲滅しそして梢様を守護する、生憎ですがそれ以外の何者でもありません」



ゴキッと嫌な音がしたと思うと飯塚さんは身体をビクンッとさせて痙攣してしばらくすると動かなくなった。



「こ、殺したの?」

「…… ええ、本当は生捕りにしたかったのですがそうするには余りに危険と判断しましたので」

「そんな……」



殺した…… メイちゃんが人を殺した。 これまでにメイちゃんも普通じゃないってわかったけどメイちゃんが。



「梢様」



私の方に近付こうとしたメイちゃんに私は後退りしてしまうとメイちゃんの動きがピタッと止まる。



「すみません…… 後の処理は私がしますので大変申し訳ないのですが梢様は私の部屋に行ってて下さい」



メイちゃんは少し寂しそうな顔をしてそう言った。



「あ、あのッ、ごめん。 今のはちょっとビックリして…… ハル君達のこと見てたからこんなの慣れたと思ってたんだけど」

「…… 梢様はお優しいです」

「え?」

「いえ。 今日は怖い思いをさせて本当に申し訳ありません」



メイちゃんは私を部屋に送り届けると朝になるまで戻ってこなかった。


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