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今日、俺の返答を聞きにスザクがやってくる。 キリオはこの1週間で怪我が全快した、回復したからといって特に何か仕掛けてくるわけもなく梢とよくお喋りしているらしい。
父さんも慣れないデスクワークをルノが抑えている、ルノの教え方が良いのか父さんの要領がいいのかわからないが順調みたいだ。
1週間止まったままだったのは俺だけだった。
ミロクからはもう父さんは解放された、だったら手を組むなんて無視して問答無用であいつらを潰したい。
けれどそれにはこちらにも犠牲は出るかもしれない、いや出るだろう。
ルノの言葉が俺の中で引っかかっていた。
「一番大事なのはことは何?」か……
俺はルノ、梢とカズハ、そして上手く利用しようとしていたメイを…… 父さん母さん、俺は……
「まだ迷ってる?」
「ルノ…… この世界に来てミロクと手を組むことで全てが解決するって言うなら俺はそうすべきなのかな?」
「ハル」
「ルノッ?!」
壁に押し付けられたと思ったらルノの顔がすぐそこまできてキスされていた。
「…… ル、ルノ??」
「あなたの歩む道の隣には私が居る、誰が相手だってみんながハルの敵になっても私はずっとあなたの味方でいる。 だからそんなに悲しい顔しないで? ミロクが何を考えていようと関係ない、気に食わなかったらぶっ潰す、そして梢ちゃん達には絶対に危害を加えさせない。 ここに来たばかりのハルだったらきっとそう言ってるよ? 守るものが多くなって弱気になった? だったら私をもっと頼って」
そうだ…… 俺は弱気になっていた。 あの時の俺なら今の俺をぶん殴ってるだろう、それにルノはどんな時だって俺と一緒に居てくれた。
「梢ちゃんには悪いけどハルと最初にキスするのは私なのは譲れない」
「な、なんで梢がそこに出てくるんだ?」
「梢ちゃんのこと、ハルだって好きなんでしょう? 見ててわかるよ、それと私のことも好きだってこともわかってる」
「あ、や、ええと……」
図星だった、俺は梢のことも好きだ。 バカみたいに優しくて、そのせいで損をしたり悲しんだり、だけどそんなあいつを見ていて俺は。
「いいよ私は」
「え?」
「ハルが私を好きなことに変わりない。 日本じゃなくても一夫多妻が認められる国で結婚しようか? ううん、どこか私達の国を買いましょう? そしたらきっとみんなで楽しく暮らせる…… ってのは都合良すぎると思うけど」
ニッコリと俺に笑い掛け抱きしめられた。
そうだな、それもいいかもしれない。 ドス黒い野望なんか持つよりもそんな目標を持って行動した方がいい。
「ルノ、俺はミロクの申し出を受け入れる。 奴がウィルミナーティを潰すつもりならちょうどいい。 だが少しでもあいつが二つごとでも考えていたら俺達がミロクを潰す」
「そうだね、私達の邪魔をする気だったらまとめて潰しちゃいましょう」
「おやおや物騒な会話だねぇ、私達を潰すとか潰さないとか」
「いいや潰す、お前らの動き次第ではな」
スザクがどこからともなくやって来た。
「んー、でもまぁ交渉成立ってことで良いかな?」
「ああ、ミロクにそう伝えとけ」
「あはッ!! 喜ぶよミロクも。 だったらセイリュウもようやく帰って来るし足並みを揃える為歓迎会をしよう同志諸君ッ」
「そんな馴れ合いをお前達とする気はない」
「それだけじゃないんだって! 超・超重要な話があるの!! だからミロクも是非それについてお話ししたいんだって」
「それはどこで?」
「勿論ミロクの家」
敵のアジトのような場所にのこのこ行けってか?
「それと梢ちゃんは絶対連れてること!」
「なんだと? 梢を?」
「いやいや! 勿論何もしないよ何もしないけど梢ちゃんの力がいるんだよ」
梢の力だって? 確かに前は不思議なことが出来たが今はそんなもの……
「大丈夫大丈夫! 悪いようにはしないから。 じゃあ今から行くからみんな呼んで?」
「何!? 今からか??」
「こちらに考える時間は与えないつもりね? どこまで本当なのか怪しくなってきたわ」
「だあーッ! どこまで疑り深いのよ? 本当に違うからね?? ほら早く早く」
ちッ、こいつの話は信用し難いが。 向こうにはビャッコも居る、ならばメイを連れて行った方がいいな。
「え?! 私も??」
「ああ、済まないがそういうことになってしまった」
梢に経緯を話した。 そりゃあ驚くだろう、今までこんなことなかったしな。
「当然俺達はお前を守るが念の為にメイも連れて行こうと思ってる」
「はい、梢様が行くとなれば私は御同行するべきです」
隣で話を聞いていたメイはそう答えた。
「あ…… すみません、出過ぎた言い方でした」
「いや、そんなことはない。 メイ、いつも梢を見ててくれてありがとうな」
「いえ、いえ…… そんな、私はハル様とルノ様に返せないほどの大恩があります」
「そんなことないわ、あなたが居なければビャッコとの戦闘で私達は甚大な被害を被るところだったしハルも安心して自由に戦えなかったわ、それはあなたが居てくれたからよ」
俺達2人に褒められたからかメイは柄にもなく顔を真っ赤にさせていた。
「梢さん、今度私の家に遊びに来て欲しいわ、咲姫とも会わせたいし」
「あッ…… えっと、私が行って大丈夫なのでしょうか? その、セイリュウさんとはこの前ハル君達と戦ったようですし」
「うふふ、梢さんだけは別よ別。 主人も梢さんのこときっと気にいるはずよ、私がそうなんですし」
「ええ〜……」
「まぁ何があるかわからないですし私もその時は一緒に行きますが」
「あら、貴女はお呼びじゃなくてよ?」
「どうしてあなたのお呼びで私が動かなければならないのですか? 私の主人はハル様達です」
なんか険悪なのか良い雰囲気なのかよくわからないなこいつらは。
「一応何かあった時のためにカズハとクザンは俺達のアジトに居てもらう。 カズハ、クザン、頼んだぞ」
「はいはーい! ちゃんとお留守番してるよ、でも気を付けてねお兄ちゃん」
「俺はガキの御守りかよ。 まぁミロク様が危害は加えないと言った以上大丈夫だろう、まぁ任せとけ」
「ああ、頼む。 例のヨウゲンはアテもつかんしここに置いてても仕方ないから連れて行く」
そうして俺達はスザクの元へ集まった。 集まると何故か手を繋がされられた。
まさかこうしないとミロクのところに行けないとかじゃねぇだろうな?
「ありゃ? ヨウゲンも一緒なの??」
「ちッ、なんなんだよ?」
「これからミロクのとこに行くんだよ!」
「マジかよ…… 俺絶対殺されるわ」
「まぁまぁ、ヨウゲンもミロクの命令に叛いたわけじゃないしね! 腕も大したことないのミロクも承知してるし減っても増えても大したことないし殺すのも指示出すの面倒だから放置してるんだと思うよ」
「お前四神の恥晒しって言われたこと根に持ってるんだな」
「それより早くしろよ、いつまで手を握ってなきゃいけないんだよ?」
「別に? 握る意味はないよ」
「はぁ!?」
「その方がそれっぽいかなぁって思ってやらせただけ。 なんかこうみんなで輪になると青春の甘酸っぱい何かを感じるでしょー?」
この野郎はいつもこれだな!
「おほほほほッ、じゃあ役者が揃ったところで今からミロクのとこに行くよー!」
そうして瞬きほどの瞬間だった。 気が付けば前の世界、ミロク達と戦った俺やルノ、梢が死んだ場所だった。
奥の玉座にはミロクが座っていて後ろにゲンブ、左右にはセイリュウとビャッコが立っていた。
セイリュウ以外は前の世界と同じか。
「やあ、よく来たね我が同胞ハル達、そしてお疲れ様スザク」
「ただいまミロク!」
「言っておくがお前の家来になるつもりはない」
「同胞と言ったんだよ、あくまで僕達は対等の立場だ。 上下関係などないよ」
ミロクは腕を挙げ指を鳴らした。
何かの合図かと思い俺とルノとメイは構えるが……
「歓迎会と言ったろう? 戦うつもりなんて僕らには毛頭ない」
そう言うと出て来たのは料理と酒だった。
「さあさあ、楽にして。 おもてなしだ、ああ、それと梢ようこそ」
ミロクは梢に微笑むと梢は苦笑いだ。




