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「お昼ご飯持ってきました」

「ああ、梢さん。 今朝も持って来てくれて悪いわね」

「いえいえ、私に出来ることなんてこういうのしかないですから」



あれから3日経った。 キリオさんの看病は私がするということに決まった、ヤタガラスとは一時休戦になったけどハル君はミロクさんからの提案から考え込んでてルノさんもそれに付きっきり、メイちゃんがやろうとしても旦那様を傷付けられたからかキリオさんはいい顔しないしカズハちゃんは言わずもがな、消去法で私に決まった。



だけどキリオさんと話すのもなんだか楽しいしこれで良いかなぁなんて思ってる。



「それにしてもキリオさんがまだ30歳だなんて驚きです、綺麗だし…… そういえば咲姫さんもとても美人でしたし納得です」

「梢さんったらお上手なんだから。 貴女だって綺麗よ」

「そんなそんなッ、傷も良くなってるようでこんな短期間に本当凄いですね!」

「ゲンブの血に感謝ねそれは」

「ゲンブさんもホント何されてもへっちゃらみたいに頑丈でしたもんね」



私もそうだったら車に跳ねられたくらいじゃ死ななかったのになぁなんて思ってみた。



「咲姫も頑丈でちょっとやそっとどこかにぶつかったくらいじゃなんともなくてね……」



キリオさんは咲姫さんのことを話しているとほんとうにうれしそうだ。



「でも咲姫のことセイリュウ家始まって以来の才覚なのだとミロク様は仰っていたけどまだ赤ちゃんだしスザクから聞いたのだろうけど本当なのかしらねって思うところはあるわねぇ」

「咲姫さんが?」  

「ええ、あの化け物…… 新しくビャッコの位置についた黒狼にも負けない潜在能力があると仰っていたわ。 そんな風には全然見えないのだけれど」



うーん、戦えもしない私からじゃよくわかんないけどハル君はビャッコの方が強いみたいなこと言ってたし。 



ミロクさんからしても可愛い咲姫さんに肩入れしてるんだろうか?



「あはは、梢さんのそんな様子じゃやっぱりそれは過大評価だったみたいね」

「そ、そんなことないです! 確かにビャッコさんと咲姫さんが戦ってたの見ましたけど凄く強かったですよ!! 私じゃ説得力ありませんが」

「ビャッコと戦った…… ?!」



あ、あれ!? この反応はミロクさんからそこまで聞いていない?



「なぁーんてね、そこら辺も大体聞いたわよ」

「もぉー、ビックリするじゃないですか」



咲姫さんもそうだったけどキリオさんも美人だけどとてもキツそうな顔しているからとっつき難いかもと思ったのは最初だけで話せばとても良い人…… なのかな?



「梢様、そろそろ梢様も昼食を摂ってください」

「あ! そうだね、じゃあメイちゃん一緒に食べよう?」

「ええッ、ここでですか?」

「うん!」

「はぁ……」

「ふふッ、貴女もそんな風に動揺するのね。 弱点は梢さんね」

「いいですか薄汚い賊め、梢様に何か少しでも危害を加えようとするのなら今度は私があなたを潰します」

「へぇ、余裕もなくなるのね」



バチバチと2人の間に火花が見える…… ってなんで喧嘩腰になってるのよ!



「ダ、ダメですよキリオさん、メイちゃんも!! 楽しく食べようねッ?」

「そうよね梢さん」

「そのように努めます」



あ…… またしても水面下で見えない何かが始まってる。







◇◇◇







私は今ハルとハルのお父さんと一緒に居た。 ハルはクザンがハルのお父さんだということを打ち明けることはなくて。



打ち明けたからといってそれが良い方に行くとも限らないし打ち明けたら打ち明けたでどうしたら良いかもわからないみたいだし私がとやかく言うことじゃない。



とりあえずクザンはうちで雇い入れることとなったけどクザンはそれにまだ納得も行ってないみたいだしハルもミロクからの提案をまだ思案している。



そりゃあそうだよね、この時代に飛ばされてきた時からずっと打倒ヤタガラスで何年も掛けてここまできたんだもの。



下手に回答を急いで後悔はさせたくない、私はそう思った。 だからハルと一緒に考える。



「あんた方も大層な組織力を持っているみたいだが今このビルのこの場に居るメンバーしかろくに人も見当たらなぇじゃねぇか、どうなってる?」

「うちは企業としてもやってるの、だから手広く仕事もしてる。 いつでも裏の仕事だけを生業としてるわけではないの。 そういう部隊も勿論あるわよ? その辺の直轄はカズハちゃんなの」

「ほぉ、あの娘がねぇ。 大丈夫なのか?」

「それなりに纏めているし事があればすぐにでも招集も出来るわ、あなたは逆に裏の仕事一本でやっていたみたいだから基本的な普通の仕事もこれからはやってもらうけどいい?」

「まぁあんた達2人がまがいなりにもここのトップだっていうなら俺は従うしかねぇがこの坊やはいつまで難しい顔をしてるつもりだ?」



お父さんを無事に確保出来たのはいい、ハルも家族のことに対しては懸念してたし。



「もう少し待ってあげてクザン、私達はヤタガラスを潰すために動いてきたのをいきなり協力してくれなんて言われたんだから」

「ふん、そうなった時は…… って俺はもうこっちの陣営か、だがミロク様もこっちとは平和的に事を済ませたいんだろうからこれ以上何もしてきやしねぇよ。 さて、何もねぇなら俺は昼飯でも食ってくるがお前さん達も行くかい?」

「ハル」

「すまん、ひとりにしてくれ」

「でも」

「頼む」



はぁ、そろそろだとは思ってたけど私まで追い出されちゃった。



「おや、嬢ちゃんも昼飯かい?」



ビルの外に出るとクザンが居た。 



「あなたこそまだ行ってなかったの?」

「いやな、これまでミロク様に支えて仕事してきたもんだからよ、これから大丈夫なのか柄にもなく心配になってな」

「ハルはあなたとあなたの家族は絶対見捨てないわ」

「嬢ちゃんあいつのなんだ? 恋人か? それとももう結婚してんのか?」

「結婚…… ってそんなの別にどうでもいいことよ」

「まぁ嬢ちゃんみたいに整った顔なら誰とでも結婚できらぁな」

「誰でもいいみたいに言わないでくれる?」



ハルのお父さんって笑った顔ハルにそっくりだなぁ、お父さんはハルを見て何も気付かないのかしら?



でもハルが息子だなんて思うはずもないでしょうし。 この世界ではハルはまだ赤ちゃんで…… 前から思ってたけど同じ人間は2人存在しえないとか見たことあるけどこの世界の法則ってどうなっているんだろう?



私にも家族は居た、探そうと思えば探せるかもしれない。 でも私自身はこの世界の人間ではないし会ったら会ったでどうしてかいいかもわからないのは私もハルと似たようなものね。



「それにお嬢ちゃんじゃないわ、私はルノよ」

「そうかいルノ嬢ちゃん」

「はぁ……」



ハルのお父さんに名前を呼ばれた。 もし前の世界でハルの家族が生きてて私がお嫁さんになったらみんなで仲良く平和に暮らせたら……



ああ、そんな都合の良い話もないし。 ハルは落ち込んでるし追い出されるし私もハルと同じ目標だったから何していいかわからない。



「なあ、そこのラーメン屋でいいか?」

「え? 私も一緒??」

「嬢ちゃんが勝手について来たんだろうが」

「あ、ああ、そうだったんだ。 うん、じゃあそこで」



もっと良い店はあるだろうに凄くボロいラーメン屋を選んだハルのお父さんは席も適当に決めて私はその向かいに座った。



「こういうとこ美味しかったりするんだよな」

「その理屈わからないわ」

「そういうもんなんだよ、仕事で行き詰まった時は何か食べて腹一杯にしとけば大抵なんとかなる」

「ごめん、ますますわかんない」



ハルとはちょっと違う思考回路だなぁ。 けどなんかホッとするのはハルのお父さんってわかってるからだろうか?



「嬢ちゃんも何か悩み事か?」

「ええ、ハルが落ち込んでるの」

「ほう、それで?」

「なんでもいいからハルの力になりたい…… ハッ!!」



私はなんで自分のことをペラペラと……



「はははッ、どうでもいいとか言っといてあの坊やにベタ惚れじゃねぇか嬢ちゃんは」

「そ、そういうことじゃ…… ええ、そうよ。 私はハルのことが好き、何よりも好き」

「じゃあ一緒だな」

「え?」

「あの坊やも前に戦った時視線がちょくちょく嬢ちゃんに行ってたからな、あれはあの坊やが嬢ちゃんのことが気になって気になって仕方ないって感じだな」



そう言われると表情がつい緩んでしまうのを隠すのが難しくなる。



ハルも私のことが大事って言ってくれた時も死ぬほど嬉しかった、けど第三者の…… ハルのお父さんに言われると嬉しいし照れてしまう。



「そ…… そうなんだ、ふーん」

「今更取り繕ったってバレバレだぞ? 普段はポーカーフェイスなのに坊やのこととなるとそうなるんだな」

「ああもう、そうよ、ハルのこととなるとこうなるの!」

「はははッ、そうやって素直でいる時の嬢ちゃんの方が綺麗だぞ? あの坊やにももっともっと素直に察してみたらどうだ?」



もっと素直に……




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