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「ぐッ、がはッ!!」
「わッ、わわッ! メ、メイちゃん!」
「落ち着いて下さい梢様、今ルノ様が調合した鎮痛剤を取ってきますので」
「お願い」
メイちゃんは部屋を出る時こちらをチラッと見て出て行った。
「あわわわッ、やっぱり病院の方が」
「ね、ねぇ梢さん…… それよりもあなた達に私達のお仲間になって欲しいの、今日はそれで」
「ええッ、それでこんなことになっちゃったんですか?! 一体どんな誘い方を……」
なんとなく想像はつくんだけど。
「だから私はあなた達が首を縦に振るまでここを動かないつもりよ、ミロク様にも許可を取ってきたわ」
「そんな……」
ハル君達の仇の人達に仲間になれなんて言われても今までのこと忘れてそう簡単に「はい」なんて言えるわけないのに。
「ちょっとそれは難しいのではないのでしょうか? だってあなた達は」
「ふふッ、わかってるわよ。 私もそれを承知で来た、こういうことになるのも覚悟で」
とは言っても不知火さん苦しそうだ。
「私は病気だけど身体は結構頑丈なの、なんせゲンブの家系の者だから。 だからこれくらい…… ゲホッ」
「だからって無茶し過ぎですよ」
「無茶でもなんでもやらなきゃいけないの私にとっては」
「どうして……」
「そうね、貴女になら話してもいいかもね」
「え?」
すると不知火さんは事の顛末を話し始めた。 なんでも私達の話と前の世界の自分達の組織のことをスザクさんから聞いたそうだ。
「スザクの能力さえあれば咲姫を…… 咲姫を助けることだって出来るの」
「そんなこと出来るんですか?」
「ええ、多分…… でもミロク様も戻りたがってる」
「戻りたい…… ですか」
前の世界に未練がないわけじゃない。 けれどそうなったら…… 今の方がマシ? でも私は前の世界で死んだ、パパもママも死んだ。 でも今は会えはしないけど生きてる、あの家で。
「咲姫と約束したの」
「え?」
「ミロク様が。 なんとかするって…… ミロク様、スザク、ゲンブはウィルミナーティとの戦いで全て死んだ、咲姫の目の前で。 きっと咲姫はなんとしてもミロク様をお守りしたかったはず、けれどダメだった。 だからミロク様は死ぬ前に咲姫になんとかするって約束したの」
「ちょ、ちょっと意味がわからないですが」
「いずれわかるわ、私達の仲間になってくれさえすれば」
「でも……」
「娘が」
「え?」
「私は咲姫がとても愛おしい、どんな形であっても私は咲姫を助けたい。 ミロク様も私達セイリュウや、ゲンブ、スザク、新しく来たビャッコのことはとても大切に思っている」
そういえばビャッコって人は前に敵味方問わずに暴走してたけどミロクって人だけは落ち着いていたような気がする。
「なんか優しいんですねミロクって人は。 身内だけのような気もしますけど」
「誰にでも見せる優しさは特別じゃない。 私達だけ見せるミロク様の優しさがあるからこそ私達はミロク様を命を掛けてお守りする」
「私にはあまりわかりませんが…… とにかくあなた達にとってミロクという人は特別なんだってことはわかります」
その時ドアが開いて薬を大量に持ってきたメイちゃんが居た。
「すみません、わかると思ったのですがどれがどれだかわからなくて」
「あ、ああ……」
私はメイちゃんが両手に抱えてる大量の薬に目を通す、確かにわからない。
「うーん、間違えるわけにはいかないしどうしようかなぁ」
「ふあぁぁッ、さっきからシトシト小うるさい喋り声もするしカチャカチャうるさいし起きちゃったじゃ〜ん」
「あ、カズハちゃんおはよう」
「こちらとしてもカズハ様にはまだ寝てもらっていた方がいいのですが」
「ああッ!! メイたんそれはあたしがやかましいってこと?!」
「ご自覚があるようで」
「むむむッ!! むむぅ〜ッ! ん? あ、こいつ部屋から抜け出したの?」
カズハちゃんは横たわる不知火さんを鎖鎌の柄で突こうとした。
「ダメだよカズハちゃん! こんなに大怪我してるのに」
「だってみてよあたしのこの髪の毛ッ! チリチリにされたんだよ?! 明日美容室そっこーで行かなきゃ」
「前みたいなカラフルで目立って尚且つ掴みやすそうな髪型は戦闘に向かないので逆に良かったのでは?」
「メイたんだって髪長いくせに〜ッ!」
「私は纏めますし何よりそうくるのを見越して反撃出来るよう心掛けていますので」
メイちゃん…… そんな風に言うとカズハちゃん更に怒っちゃう気が。
カズハちゃんを見ると明らかに不機嫌モード。
「カ、カズハちゃん! ショートカットそのうち流行るよ、ほら、どこかの歌姫も最初はショートだったし」
「んん? あ、そっかぁ。 そういえばそうだね、これを機に流行の最先端〜ッ!」
「なんて単純な…… わかってましたけど」
「それよりこいつに何してんの?」
「ええと怪我が酷いから少し手当をね」
「ふーん、まぁあたしにこんなことして自業自得なんだから。 それよりシエルちゃん、お兄ちゃん達は?」
「お仕事に行ったよ」
「そっかぁ、なら今はここの守りの最大の要はあたし! 超重要スポットじゃん!!」
「なのにグウグウ寝てる豪胆さ。 私には真似出来ませんね」
「えへへ、見直したでしょ」
カズハちゃん違うよそれ、呆れられてるんだよ……
「と、とりあえず不知火さんはこんなところじゃなくてせめてベッドがある部屋くらいにはしないと」
「そのような命令はハル様達からは聞いてませんが」
「メイちゃんお願い」
「ふう…… わかりました」
「メイたんシエルちゃんに激甘ッ!!」
メイちゃんは不知火さんをちゃんとした部屋に抱えて行きベッドに寝かせた。
「あの…… 結局お薬はよくわからなかったのでごめんなさい、だからせめて」
「いいのよ、気遣いありがとう梢さん」
「シエルちゃんはお人好しなんだから。 あたしのあれで生きてるんだから放っておけば治ると思うんだけどなぁ」
その時だった、メイちゃんとカズハちゃんからピリッとした空気を感じた。
「あはッ!」
「いつの間に……」
「メイたん、こいつはいつもそうなんだよ」
部屋の中にいつの間にかスザクさんが居た。
「こんばんはおチビ。 ププッ何その髪型超笑えるんですけど」
「はぁ!? はぁーーッ!! 気にしてたのにこいつ!! それにもうおチビじゃないんですけど!」
「拘束させてもらいます」
「わわッ」
メイちゃんがスザクさんに迫るとその場所からスザクさんは消えた。
「ちょっとちょっと! いきなりお痛はなしだよぉー! 私戦闘員じゃないんだし無害無害!」
「ムカつくから無害じゃないッ! マジムカつくムカつく!!」
「カズハちゃん抑えて抑えて! ここには怪我人も居るんだし戦うとか無理だよ」
「あははッ、ひとりまともなの居て助かるわー、シエルちゃん。 ああ、梢ちゃんだったね。 ジーナは元気?」
「へ? ジーナって誰ですか?」
いきなりよくわからないことを言われる。 ジーナ?? ジーナ…… ジーナってなんだろ? 犬? 猫?
「やっぱ覚えてないかぁ。 まぁいっか、それよりキリオちゃんも生きてるみたいで良かったね!」
「スザク、貴女どうしてここに?」
「セイリュウがこのこと知ってブチ切れて襲撃して来る前に私が来たんだけど」
「主人は今留守ですから」
「それもそうだけどさぁー、もしもってことがあるかもしんないじゃん? ってね」
「私はまだ帰るつもりはありません、ミロク様に私が進言したのにこんな結果では終われません」
「ん〜、まぁセイリュウもまだしばらくは帰ってこないと思うしいいと思うけど。 ミロクもハル達と今は全面戦争なんて起こすつもりないしね」
「今は? 聞き捨てなりませんね」
「へ? うわわッ、嘘? 私を捕まえたの?!」
メイちゃんはスザクさんのように一瞬で消え気が付いたらスザクさんの腕を捻り上げていた。
「うっわぁ〜、メイたんなかなか速い」
「カズハ様の方が速いですがこれは歩法の違いですよ」
「いやーん、助けて梢ちゃん」
何故か私に助けを求められる。 けどどうしたらいいんだろう? このままスザクさんもここに居てもらった方が。 でもそしたらあっちも黙ってないだろうし。
「メイちゃん、あんまり乱暴しちゃダメだよ」
「この方の力は得体がしれないので何もさせてはダメだと思ったので」
「そ、そんなことないって。 ほら、現に動けないし! てか私その冗談の通じなそうな顔苦手だなぁ〜私」
何故余計なことをスザクさんは…… なんとかしようとしてるのに。
「いたたたッ!」
「冗談は嫌いです」
「え? え? なんかメイたんあたしにも言ってるように聞こえるんですけど!!」
「ババンババンバンバンバンッ!」
「は?」
「ん?」
「え?」
突然スザクさんが素っ頓狂にお風呂なフレーズの歌を口ずさむ。
「なんですそれは?」
「あ、いやぁ、みんな極度の緊張状態にいるみたいだからほぐしてあげようと思って」
「別に緊張などはそれほどありません、もうこうしてあなたは拘束してしまっていますし。 それと先程冗談は嫌いだと申したはずですが」
「わぁーたたたッ、お、折れる〜ッ!!」
「バカじゃんスザク。 あーあ、何してくれようかなぁ」
カズハちゃんがスザクさんに近付こうとした時……
「はぁー、荒っぽいことはしたくなかったんだけどなぁ」




