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あのビャッコを倒せるのか? ……メイなら。
「ビャッコ、あの刀はセイリュウの大切な刀なんだ、出来ることなら取り返したい」
「ああ、わかった」
何?! 刀を奪う気か?
形態変化させた腕をメイに振り下ろすが刀で受け太刀する。 ビャッコはそのまま押し潰そうとしたがメイは受けていた刀から力を抜き刀はビャッコの腕を半回転したと思うとメイは刀を握り直し腕を切断した。
ビャッコもそれには少し驚いた様子だった、更にメイはその傷口にアーデルハイトを撃とうとしたがビャッコに蹴り飛ばされる。
「あッ、あっぶなぁ〜、もうちょっとでビャッコやられるとこだったじゃん」
「ああ、あのビャッコとここまで闘えるのはメイくらいだろうねぇ」
ビャッコがやられるかもしれないというのにミロクは随分と余裕でスザクと語っている。
「小娘、メイと言うのか」
「そうですが?」
「覚えておこう」
「その必要はありません、あなたはここで私に殺されるのですから」
「もう勝った気か?」
更に激しい戦闘が繰り広げられると思った時……
「ビャッコ、そろそろ引き上げようか」
「なんだと?」
引き上げるだと?
「引き返せると思っているのか? 俺達がお前を逃がすと?」
「そうだよ、逃がしてくれないか? 元々僕らは君達と闘うつもりはなかったんだ、だが君らが強引に僕達を倒そうとするからやむなくといった具合だ」
「ここまでやって今更それか? 形勢が不利になったらおめおめと逃げ出すなんてヤタガラスもたかが知れてるな」
「調子に乗るなよ」
俺とミロクの会話の最中ゲンブが俺に掴みかかろうとした。
「おっと。 なんのつもりだゲンブ?」
「よせゲンブ、一旦落ち着いてくれよ。 目的が早く達成したしもう少し先になると思っていたが君達に僕から提案があるんだ」
「提案だと?」
「君は僕に恨みがあるみたいだけど」
ああ、今すぐお前を八つ裂きにしてやりたいくらいにな。
「だがどうだ、ここで僕は君に恨まれるようなことをしたかい?」
「は?」
「現に君の父親も無事だしなんならこれまで以上に厚遇しよう」
「何を言っているんだ??」
「簡単なことさ、僕だって知らないことはどうしようもない。 けれどスザクのお陰で知ることが出来た、これは君にとって大きな利点とも言えるし最大のリスクにもなるわけだが」
こいつの舌先三寸な口調で話されるとどうにもイライラしてしまう、俺が拳に力を込めるとルノが俺の肩に手を触れた。
「つまりあなたはこう言いたいの? 知ることが出来たからハルに恨まれるようなことはするつもりがない、だからこの世界でまだ起きてもないことで自分が恨まれるのは筋違いだと」
「ははッ、やんわり言おうと思ったのにストレートに言われたよ」
「筋違いだと!? それ以前にお前は前と今も同類の勘違い野郎だ、自分を神か何かと思い違いしているだけのクズ野郎だ!」
「おやおや、これまた容赦ないねぇ。 だとしてもだ、君がつまらない因縁で僕達と決着をつけようとして多大な損害を被るのと僕からの良い提案を聞いて丸く収まるのとどっちがいいかという話だ、バカじゃなければどちらがいいか考えなくてもわかるはずだ」
な、なんだと!? ふざけるな、お前らは全員皆殺しにしなきゃ俺の気が収まらない……
「ハル様、どのように致しましょう?」
「やれ」
「待ってハル! ミロクの言ったことをよく考えて! あなた頭に血が登って冷静じゃないわ!! メイ、今のハルの言葉は忘れて」
「ルノ、どういうつもりだ?」
「あなたのお父さんとお母さんはどうするつもり?」
え? 父さんと母さん…… !!
ミロクを見るとニヤリと笑う。
「そっちの子は冷静で助かる。 そうだよ、ここにはクザンが居る、そして僕が一声掛ければ…… くくくッ」
「だから待ってハル! 落ち着いてッ」
ミロクに掴みかかろうとするとルノが制止する。
「離せルノ! こういうところだ、こいつの気に食わないところはッ」
「一時の感情で動けばどうなるかわかるよね? その子の言う通り落ち着ぶッ!!!」
「ル、ルノ?!」
「貴様ぁーーッ!」
「わわッ、ミロク!?
「ええッ?!」
ルノがミロクを殴り飛ばしていた。 ゲンブがルノに向かって拳を振り下ろすが血管が浮き出るほどの身体強化によってゲンブの腕をファングブレイカーで砕いた。
「ぬうッ!」
「あなたは動かないのですね」
「とんだ茶番なのでな」
メイがビャッコに尋ねる。 は?
「ゲンブ、熱くなるな。 僕は大丈夫だ」
「はぁ〜ッ」
ルノは大きく溜め息を吐いて俺を見ると……
「気は落ち着いたハル?」
「え? あ、いや、まぁ……」
「あなたの代わりにミロクは私が殴ったわ、ハルったら後先考えなそうなんだもん」
「…… ルノ」
「私もあいつの言い様にムカついてたしね。 ハル、少しは冷静になったなら話はわかるよね?」
「ああ」
くそ、多分ミロクは俺がこの場でミロクの言うことを受け入れなければ本当に父さんと母さんを殺すだろう、父さんはここに居るし母さんだって今すぐにでも殺すことが出来ると思う。
「ビックリしたなぁもう。 首が吹っ飛んだかと思ったよ
「それだけで済んで良かったわね、もしそれが私じゃなくてハルだったら今頃あなたどうなってたか」
「ははは、そうだね君で良かった。 女性に殴られるなんて滅多になかったから新鮮だったよ。 それとハル、さっきの返事は?」
「ちッ、好きにしろ」
「では後日使いを出そう」
「ならさっさと消えるんだな、俺の気が変わらないうちに」
「行こうみんな、あとそうそう。 ビャッコの歓迎会もしないとね」
ミロクはビャッコにニコリと笑うとビャッコは「ふん」と言ってミロク達についていったと思うと立ち止まりこっちを見て地面を力強く踏んだ、するとメイの足元から触手が這いずり出しセイリュウの刀を弾きビャッコの元へと投げた。
「流石だね」
「あの者が戦意がある状態ならこう易々とはいかない」
「小ズルい手を使うのですね」
ミロクはそんなメイに微笑むと今度こそ消えた。
「クソッ! クソクソクソッ!!」
地面を何度も殴りつけた。
「よしなさいハル。 それと出過ぎた真似してごめんなさい」
「…… いや、ルノがああしてくれて助かった、確かに俺は冷静じゃなかった」
「お兄ちゃん……」
「ハル様、あの者の使いというのは信用出来るのですか?」
使いという名の刺客すらありえる。
「いいや、信用しない方がいいだろう」
「わかりました」
「梢にもし万が一のことがあったら」
「その時は私が相手に100倍以上の後悔をさせます」
メイは低い声でそう言いミロク達が消えた方をしばらく見ていた。
◇◇◇
「メイちゃん!」
「ただいま戻りました、留守にしてしまい大変申し訳ッ、うぷッ!?」
「良かったぁーーッ! 帰ってきた…… ってハル君達も?!」
メイにギュッと抱きついて俺達も一緒に居たのが不思議だったのか梢は俺達をマジマジと見る。
「ハル君、ルノさん、カズハちゃん……」
「ただいまシエルちゃん」
「寂しかった梢ちゃん?」
「無事に帰ってくるって約束だったからな」
「みんな……」
ヤタガラスを潰すということもビャッコを倒すということも出来なかったが梢の顔を見るとどこか俺もホッとしていた。




