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ビャッコの手の爪が鋭く尖った。
こいつも身体強化の類か? だとしても対したことはなさそうだが……
「ハル、あなたはミロクをやりなさい、ここは私に任せて」
「だが……」
「大丈夫、元は私あなたより強いんだから。 それに万が一の時はアレがあるわ」
「まったく。 だがわかった、無理はするな。 ミロクをやったらすぐに駆け付ける」
「行かすかよッ!」
「あなたこそさせると思う?」
ルノが俺の行手を阻もうとするがルノのアーデルハイトがビャッコの腕を貫通する。
「ぐがッ」
「ルノ頼んだぞ!」
俺がミロクに迫るとスザクが指を刺して「来たよ来たよ」と慌てふためく、どうやらこれ以上の隠し玉はないみたいだな。
ミロクの首をへし折ろうと俺は飛び掛かったが光の障壁のようなものが俺の腕を阻み弾かれた。
「な、これは光のミロク?!」
「そう、僕がこうなれば何人も僕に危害を加えることは出来ない」
クソ! だがこれを破らなければミロクを討ち取ることは出来ない。 何か突破する方法があるはずだ、現にミロクは元居た俺達の世界で死んだんだ。 何か方法があるはずだ。
「これはメイにも破れなかった障壁だ、髪型かな力じゃどうにもならんさ」
「ならんさならんさーッ!! やっちゃえミロク!」
「いや僕は動かないしなんならスザクが行ってもいいんだよ?」
「わかってるって! 勢いで言っただけだって」
俺は攻撃を浴びせ続けるがやはりどうにもならない。 すると……
「無駄なことはやめて僕達は闘いの趨勢を見届けようじゃないか、君が大将だろう? 僕と同じ立場だ」
「ふざけたことをッ!」
セイリュウの刀でもダメなのか!
「あと闘うことは出来ないと言ったが弾き飛ばすことは出来るんだよ」
「なッ!?」
光の障壁が俺に向かってくると体が吹っ飛びルノが飛び上がって俺を受け止めた。
「ハル! 大丈夫!?」
「あ、ああ、ダメージはない。 だが」
ミロクはニコリと笑い俺に手を振る。
ふざけやがって……
「2人まとめていただきッ!」
下にいたビャッコが飛び上がりルノは俺を突き飛ばして回避した。
「ハル! こうなったらサッサとこいつをやっちゃいましょう! 2人でミロクを討つわよ」
「仕方ない」
「今度は2人掛かりか!? いいぜぇ!」
ルノは空中で無防備になったビャッコをアーデルハイトで撃ち抜く。
「ぐあッ、いってぇ! さっきからバカスカ撃ちまくりやがって!!」
ルノに撃たれたところが見る見る再生していく。
「なんだこいつは?」
「基本大したことない奴なんだけど身体が瞬時に再生するのよ」
「ヒャッハァッ!! 全快だ!」
「面倒だなこいつ」
持ってきた手榴弾を調子に乗って大口開けてたところに投げた。
「むぐぅッ!?」
「バカな奴だ」
そして爆発してビャッコは粉々になった。
「こうするのが手っ取り早い」
肉片が辺りに散らばるが動く気配はない、死んだか?
闘いの趨勢をというミロクの言葉で視覚聴覚を強化してメイとカズハの方向を見る。
メイは圧倒的だった、セイリュウは満身創痍でなんとか食らい付いてはいるがあれはもう時間の問題だろう。
カズハは……
一方的にゲンブを叩きのめしていた、第三者から見ればカズハが圧倒的に有利に見えるが流石はゲンブだ、カズハの攻撃を喰らいながらも耐え抜いてカズハの注意を引いている。
「セイリュウがやられたら勝機が一気にこちらに傾くわね。 そしてそれはもう間近、私達もミロクを」
「待てよ!」
なんだ!? ついさっきまでビャッコは粉々だったのに。
「くくッ、くくくくッ、俺は四神だぜ? 不滅のビャッコ様だぜ、テメェら如きの凡夫がいくら集まっても倒せるかよ!」
周囲がビャッコの身体から出た湯気のようなものに包まれていた。
「これは…… いくらなんでも人間が持てる能力を逸脱し過ぎている。 あなた達四神は一体なんなの?」
「ははははッ! 文字通り神だ」
「いいや違うな」
神だとしたらいくらメイが強かろうが負けるか? 殺されるか? こいつらは確かに常軌を逸した力を持っている、だがそれだけだ。
「威勢がいいなぁ? じゃあもうちょっと神の力を見せてやろうか」
「なんだと?」
ビャッコのスピードがいきなり段違いに上がる。 まだ対処出来るレベルだが急激にパワーアップしていた。
「この爪はなぁ、毒入りだぜ」
「ハル!」
ルノはファングブレイカーで俺に攻撃を加えようとしたビャッコに猛打を浴びせた。 ビャッコの頭を潰し胴体も潰した。
「危なかったわね」
「女ァ…… 再生はするが痛いは痛いんだぜ?」
「そんなッ」
先ほどとは違いビャッコは一瞬で再生してみせた。 そしてルノの足首を掴んで爪を食い込ませようとした。
「ちいッ、硬ぇッ!!」
「この!」
腕を蹴り飛ばしてルノは飛び退く。 ファングブレイカー越しだったのだろう、ルノは毒攻撃を受けずに済んだ。
「ならこっちだ!」
「なッ?! さっきよりも速いだと??」
襲い掛かってくるたびにこいつの攻撃速度は上がっていく。 これでは今は防げていてもそのうち……
「ハル?! あなた本気で闘ってるの?」
「は?」
飛び退いたルノからいきなり放たれた言葉。 意味がわからない、全力でこいつの攻撃を捌いているってのに。
「ハル…… ? ッ!! もしかして」
ルノはアーデルハイトでビャッコを撃ち抜き体勢を崩させた。
「ちいッ! 邪魔しやがって!!」
ルノは撃った場所から勢いよく木を蹴り猛スピードでビャッコをその場から吹っ飛ばした。
「ハル、ここから出るのよ」
「え?」
「いいから早く!」
赤い霧に包まれていた場所から出ると再生したビャッコが追撃態勢に入る。
ヤバい、今度は防げるかわからないと思い防御姿勢を取るがルノが「大丈夫だから」と俺の肩に手を置いた。
「私がやるわ」
「ルノ!」
だがビャッコの攻撃はとても遅くルノは余裕で受け流してビャッコの腕を掴み力一杯投げつけた。
「げはッ」
ビャッコは木がへし折れるほどに激突した。
「ふう」
「…… 一体なんだったんだ?」
「あいつの能力は多分範囲だったの、具体的なことはまだよくわからないけどあの赤い霧に包まれていた時あいつが強くなったんじゃなくて私達の力が落ちていたの、だからあの霧の中じゃあいつの独壇場だったってわけ。 でもあいつの再生能力までは現状どうしようもないと思ったからとりあえず気絶させたの」
「そう言われれば確かに霧の外からのルノの蹴りがありえないくらい速く見えた」
「でしょ? あの身体から出た赤い霧みたいなのはもうビャッコから出てないし本当に気絶したのね」
仕留めるまでにはいかないが余計な邪魔が入らない分仕方ないか。
「ハル、今度こそミロクを討つわよ」
「ああ」




