~キオク(1)~
本編更新は今日の夜頃を目標にします!
…意識を取り戻した瞬間。此処は何処だと周りに目を向ける。
側に見えたのは、私を研究対象として見続ける群像だけだ。薄汚れた布地の上。力無く鎮座するこの未成熟な身体に、薄い板と筆を携えた群像の殆んどが目を向けている。
特別、私の中に何かが芽生えた訳でもないが、真剣に私を観察する者達に何かを答えようと、意識を声帯に向けて力を込める。
「……………………ァ…………アゥァ………………」
━━出たのは掠れた吐息と、声未満のノイズ。とても意図が伝わったようには見えなかった。
性能と肉体の齟齬が酷い。授けられた情報を認識・理解こそ出来ているのに、それらに見合った行動をする事が出来ない。
奇怪な人々に向けての興味・返答すら、言語化する事が出来ない。今度は言葉ではなく、肉体言語でのコミュニケーションを試みる。
「………………??」
腕が上手く上がらないし、足も思ったように動かせない。 自分の中で、何かを制限されているような強い束縛感がある。
「…こりゃ、また失敗かな」
「みたいだな。脳から上手く信号が伝わってない。バイタルも平均以下だし、次は少しばかり肉体方面にリソースを割いて実行してみるか。記憶のバックアップは一応取っとけよ」
……何を言っているのか、理解出来なかった。
理解出来ないまま、ヘッドギアを頭部に付けられ━━━
「電流放出開始。再訂後の性能予定値は━━━━━━」
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『ワタシ』は…………誰…………?