83.対破壊特化型戦獣(3)
「━━━━っ!」
恐れでもない。怒りでもない。少なくとも、そんな直情的なモノではない。
強いていうならば、粘度の高い廃油に触れた気分だ。不快、困惑、無理解。それらを含めた『虚』な気持ち悪さが、溢れて止まる事を知らない。
気が付けば歯を噛み締めていた。こびりつく不快を振り切らんと、異常な執着の果てに怪物となった親友に聞かなくてはならないと、例え躓こうとも地面を駆けていた。
「一体……何が君をそこまで駆り立てた…!」
━━強く刃を突き付けるが、剣戟の音は響かない。しかし、『衝突』は間違いなく発生している。炸裂も、類する高周波もない。あるのはまるで真空の中、無理くり抑え込まれた様なぼんやりとした、形容の出来ない感触の音。
「んー…適度に便利だね、コレ。結構優秀じゃないか。モノを飛ばす、防ぐ。シンプルなだけに脅威になる。そう思わないかい?ウスズミ」
「……逸らかすなッ!!」
だからといって退く事は出来ない。右腕を強く、渾身を込めて前へと突き出す。……だが、斬ろうとも突こうとも、突き破ろうとも。繰り返される行動の全てが空を打ち、跳ね返される。
雷電を纏った刃が届く事はない。磁力にも似た反発力が壁となって、君臨するキナリに傷の一つも許さない。
「逸らかすもなにも……国の理想を常日頃念頭に置いておくのも僕等の責務なんだよ。おかしいのは君なんだって。
逆に聞きたいのはこっちさ。何が君を駆り立てている?たかだか兵器が人の姿形をしてるだけの話じゃないか」
明らかな規格外。至るまでに必要となる膨大な素材によって構成される彼は、かつての兵器を嘲笑う。 ━━だが、裏を返せばそれは綻びだ。
異形と相成った、狂った歯車の奥底。本来であれば隠したいとさえ思う『根っこ』を━━
「まぁ……強いていうなら」
「なんか、面白くないじゃん?」
容易く、取り出した。