第2話 歴史
翌日はいつも通り登校した。一時間目は社会だ。
授業はいつも通り始まるのかと思いきやいきなり見たことのない男が教室に入ってきて言った。
「今日はふつうの授業ではなく世界の歴史についての授業をします。」
その男の説明によると王政府の判断により王選を行うことが決定した。国民なら誰でも立候補が可能であるので、もしかすると学生の中から新しい王が出るかもしれない。なので学生には授業という形で世界について最低限の知識を教えるということだった。
西暦2836年突如として人類は特殊能力に目覚めた。
初めは世界中が混乱し能力を使用した犯罪や紛争の増加が問題になったが各国の首脳が集まり国を一つにしようという動きになった。そうして誕生したのがこのリオナル王国だ。政府は王政府となりまず国王を決めることにした。そうして第一回王選が始まった。
王としてふさわしい者を決めるため能力を使用した武力による試合が行われた。そこで勝ち抜いたのが先日暗殺された初代国王というわけだ。正真正銘世界最強。その後王に挑んだ者も少なからずいたそうだが王が負けたという話はない。
能力は誰しも生まれつき1つ持っている。稀に2つ持って生まれてくる人もいる。
一つの能力を持つ人をオンリーというのに対して二つの能力を持つ人をツインという。能力の効果は生後すぐの検査で分かるようになっている。
能力には大きく分けて戦闘系と非戦闘系の二種類ある。現在は生まれつき持った能力と二つまで追加で能力を付与するグラントという機械が発明されている。
二つ以上追加すると体が負荷に耐え切れず絶命する。他にも一定時間能力を使用できるアイテムなどが開発されている。
誰でも知っているような内容だったが入試にも出題されるとのことだったので俺は熱心に聞いた。
ちなみに俺が持っている能力は《剣技》というもので、剣を使用したとき高威力の技を撃てるらしい。それというのも俺は生まれてから一度も能力を使ったことがない。普通に生きていれば剣なんて使う機会がないので至極当然のことだ。
隣で眠そうに授業を聞いている詩の能力は《治癒》でその名の通り軽い怪我なら治すことができる。とても似合っていると個人的に思う。そんな能力を生かして将来は医者になりたいらしい。
王選についても詳しく解説された。
まず、一次試験で簡単なペーパーテストを行う。これは戦闘力が高くても頭が悪いと政治が行えないからという理由からだ。
次に二次試験では試合を行う。ルールは簡単で先に相手に攻撃を当てた方の勝ち。その際能力の使用はもちろんのこと武器、アイテム、乗り物など、なんでも持ち込んで良いらしい。
そうして全立候補者の中から10名に絞られ、10名でトーナメント形式で戦っていく。この時も二次試験と同じルールなのだが一つ違う点がある。それは相手を絶命させるか相手が降参するまで戦いは続く。そして最後に残った者が王になれる。
このルールには正直驚いた。負ければ死ぬなんて本当に立候補者が出るのかさえ疑わしい。降参ができるといっても降参する前に殺されてしまえば意味がない。王選に立候補するやつは腕にそうとう自信のあるやつか命知らずの馬鹿だろう。まぁ俺には関係の無いことだ。授業の最後に重大な発表がされた。
王になったものは全知全能になることができる。
病気の治し方、なぜ能力が人間に授けられたのかなど全てを知ることができる。だからこそ初代王は1000年以上もの間死なずに世界を治めることができた。
だが注意点として王になって知りえた情報を他言することはできないらしい。なんでも全知全能というだけあって皆が知ってしまうと世界のバランスが崩れてしまうからという理由かららしい。
この発言の真偽は定かではないが、さすがに俺も胸が躍った。一瞬立候補しようかなんて考えたが命惜しさに踏みとどまる。それにしても本当に夢のある話だ。だがまたしても俺には関係の無い話だという結論に至る。
そんな事を考えていると隣から話しかけられる。
「全知全能だって!九なら何知りたい?」
「クリぼっち回避方法」
「なにそれ!?」
俺は先日愛想のない回答をしてしまったので今回は冗談を言ってみた。
「じゃ、あたしが教えてあげよっか。」
突然そんなことを言われ驚いていると、詩は続けた。
「今年のクリスマスは家族で用事があるんだけど、イブならデートしてあげる。」
俺は夢でも見ているような気分だった。八年も好意を寄せていた相手にいきなりデートに誘われた。断る理由が見つからない。
「いいよ。」
「ホントに?やった!」
笑顔で喜ぶ姿を見て改めてかわいいと思う。
「じゃあ時間とか何するかとかはあとで決めよっか。何したいか考えててね。」
「他の子と遊ぶ約束したらダメだからね。」
そんな事するわけないだろと心の中で叫ぶ。
その日は家に帰ってからデートのことばかり考えてしまい夜はあまり寝れなかった。
読んで頂きありがとうございます!
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