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A World Without Colors.  作者: 紅也
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色のない世界

学生の趣味で書いた小説&初投稿なので、誤字脱字等は大目に見てください。こっそり教えてくれると嬉しいです(教えてもらうにも、どうすればもさっぱりですけど)

Twitter→→@TonarinoHisui

(A world without colors.)


物心がつく前から「私」の世界は、白と黒の世界だった。


「見てごらん、今日はお空がとっても青くてきれいよ。」


「おかあさん、「おそら」ってどれ?」


「私」は貧しいこの家の跡取りのため、

「私」の世界が白と黒だけであることは家族にとって死活問題であった。

毎日毎日切り詰めて生活し、五年後の十歳になる少し前、

やっと学のある先生に診てもらえたが、「私」の身体は正常で、どこにも悪いところなんてなかった。


「大丈夫、君の身体は正常だ。物の色がわからないなんて嘘なのだろう?

 ご両親を困らせてはいけないよ。」


嘘なわけがあるものか。

草も、木も。 花も、虫も。 空も、太陽も。

ホンモノの色が「私」には、認識できないのだ。


「外」と呼ばれる場所に出ても、何もわからない。

家の仕事をするにも、できるものは何もない。


この頃、母は「私」が目覚めるといつも叫ぶように言う。


「黄色くなっていたり、茶色くなっていたりする、元気のないものや、

植えてあるものと違う種類の植物を抜くのよ。

無駄に使ってしまったあなたの診察代は働いて返してもらうからね。」


「色がわからないからできない」とは言えないのだ。

とはいえ、当てずっぽうに草を抜けば、正常に育っている作物で、

目を凝らして抜けば、その草は正常に育っている作物なのだ。


「どうしてこんな雑草を抜くこともできないの?

そんなにも私たちに迷惑をかけたいの?

お隣の五歳の子はもう畑を耕しているのよ?

あなたはもう十歳になるのにどうしてなの?」


どれだけ頑張っても、色を理解することは、与えられた仕事をこなすことは、できなかった。


毎日、毎日。怒鳴り、叱られ、呆れられ続けた「私」に母はこう言った。


「もういいわ、あなたに期待した私が悪かったわ。

あなたなんて、産まなければよかった。」 


「おかあさん…!!」


「いいえ、私はもうあなたの母親ではありません。

お父さんや親戚、村の人たちと話し合った結果よ。この村から、出て行ってちょうだい。」


渡された荷物には、水の入っていない竹筒のみだった。

なんの前触れもなく、生まれ育った村を追い出された「私」は、途方に暮れた。

初めて家の敷地の外に出たのだから。


外には、敷地の中に漂っていた狭苦しい空気はない。首輪を外された犬のように私は駆け出す。


「まぁ、悪くはないか。」そう思いながら、「私」はひときわ高い木の上から村を見下ろした。


一人になった「私」は、眠りたくなった時に眠り、果実を齧って(かじって)生きていた。

話す人はいないが、怒鳴る人もいない。「私」の足取りは、村にいるころに比べて数倍も軽い。それほどに、森の中で生きることは楽しく、自由なものだったのである。

或る日、不意に森の香りと早朝の澄んだ空気が、途切れた。


「大きな村だなぁ。」


「私」のつぶやきは風の音にかき消された。

その村は、「私」の住んでいた村の人ならば一生かかっても来られないような場所。

世にいう『都』だと後から聞いた。


都は人で溢れていた。

右には米売り、左には干物売り、正面には見たこともないような大きさのナニカが

堂々とそびえたっていた。


「私」はそのナニカに引き寄せられるように正面へと歩いて行った。

人々は、痩せこけて土にまみれた汚い「私」を或るものは珍しそうに、

或るものは蔑んだ目で、或るものは嗤って、眺めていた。


大きなナニカのそばまで行くと時々年貢の取り立てに来ていた奉行様と同じような人が

これもまた大きな門の前で行き交う人々を厳しい目で監視していた。


「おい、子供。お前はここをなんだと思っている!ここは帝の住まう舘だ!

お前のような汚い子供が来る場所ではない!即刻出てゆけ!」


舘の中に行こうとすると

奉行様に刀を突きつけられ止められた。

下手な返事をすれば斬られて御釈迦である。


だから「私」は黙った。

黙って奉行様を見上げたのだ。


「私」は先程も言った通り痩せこけて土まみれだ。子供が全く生気のない目で黙って刀を突きつける大人を見上げる。まぁ、おかしな絵だ。


「な、なんだ。なにか言え!!」


奉行様は何も言わない「私」を不気味に思ったのか、変な顔をして刀を収めた。


「ここに入る気がないのならば向こうにいけ!」


野良犬を追い出すように奉行様は顔を顰めて「私」を引っぱって舘から追い出した。


「あの、奉行様。そちらの方は…?」


「これは姫様!この者が館に無断で立ち入ろうとしたのでつまみ出しているところです!」


「…」


「私」は「姫様」と呼ばれた人物をじっくりと見て見た。なるほど、確かに育ちの良さそう雰囲気である。恐らくは着ている服も仕立てのいいものなのだろう。


「おい!姫様をジロジロと見るな!

不敬であろうが!」


奉行様が「私」を鬼の形相で睨みつける。


「いえ、いいのです。そなた、ご両親は?」


「いない。」


「姫様に向かって何たる無礼な!!」


「奉行様、良いのです。見たところそなたは農村の者でしょう?なぜ都に?」


「村を追い出されたから」


「なぜ?」


「働けないから」


「ひ、姫様…このような小汚い子供とのお戯れはお控えください。民衆も見ておりますゆえ…」


奉行様の言う通り、ここは都のど真ん中で、帝の娘である「姫様」と汚い「私」が話しているなんて、天変地異が起きてしまうだろう。


「あっ!!待って!!」


「姫様」の声が聞こえた。話しかけてくれたのは嬉しいけれど、自分のせいで迷惑をかけたくない。「私」はその場から逃げ出した。


……To be continued


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