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身銭を切って生きていく。

作者: 紫ヶ丘




徳長(とくなが)(しげる)二十五歳。

外資系IT企業の営業事務員。

先月ついに閑職で有名な第七課へ異動辞令が出た。

いくら経っても覚えが悪くミスを連発、電話もろくに取れない俺に匙を投げたんだろう。

コピー機、ファックス、コーヒーメーカー、プリンター、機械に弱い俺は未だにメモを見ないと使い方が分からない。

一昨日は課長のデスクにコーヒーこぼしてパソコンや書類を台無しにして大目玉食らったし。

早期退職優遇制度はあってもリストラはない会社で良かった。


今日は第七課配属初日。

いつも通り家を出て、大通りのバス停まであと少しというところでトラックに跳ね飛ばされた母校の制服を着た高校生カップルが俺に向かって飛んできた。

咄嗟に腕でガードしたが、いつまで経っても衝撃は来ず、恐る恐る目を開けると周囲の光景が一変していた。



「……どうなってるんだ?」



壁に等間隔に灯る明かりが部屋の異様さを浮かび上がらせる。

床だけでなく四方の壁にもびっしり、これぞ魔法陣といった模様が描かれているのだ。

血の臭いがしないから黒魔術系では無さそうだが、怪しさは満点。

…………。

もしやこれは異世界召喚てヤツか?

だがおかしい。

何で誰もいないんだ?

ラノベやネット小説じゃ召喚者がいるはずだろう?

当分の衣食住を保障してくれる王族が我が国を救ってくださいとか言うんじゃないのか?


いや、待てよ?

トラックの運転手に拉致された可能性もあるな。

実はあの時、俺は高校生カップルと衝突して意識を失っていた。

運転手は目撃者の俺をトラックに乗せて人目につかない場所に移動させた。

このヤバい部屋は警察の捜査が入ったとき心神喪失を装うための小細工。

流石に無理があるか?

でも異世界召喚よりも現実味があるよな?


最後はどっきりの可能性。

だが芸能人でもない俺をどっきりにかける理由がない。

ここはあれか?

異世界あるあるのお約束を言ってみるか?



「ステータス、オープン!」



─────────────────────────


名前:ゲルト 〈シゲル・トクナガ〉

性別:男

職業:OL

レベル:MAX(単位:千円)


HP:100/100

MP:100/100

STR:10

INT:10

VIT:10

DEX:10

AGI:10

LUK:10


スキル:同時通訳MAX、隠蔽MAX、身銭を切るMAX

加護:GOG


─────────────────────────



……出たよ。

ステータスが出ちゃったよ。

さようなら地球。

こんにちは異世界。


てか突っ込みどころが満載なステータスだな?

何で名前が二つあるわけ?

ゲルトって何?

そんな風に呼ばれたこと一度もないぞ?

しかも職業がOLだし。

俺は男!

性別も男になってんのに何でOL?

俺はオフィスレディじゃなくてオフィスウォーカー、OLじゃなくてOWだろ?

レベルとスキルがMAXなのは良いが一律10ってどうなんだ?

レベルの(単位:千円)って何?

異世界なのに通貨が円ってことか?

スキルの身銭を切るって何?

パーティー組んでも全部自腹?

つまりソロ推奨?

いくらなんでも意味不明が過ぎるぞ。


しかしこれからどうするか。

状況からして俺は召喚されたわけじゃない。

誰かに見つかれば不審者として捕まる可能性がある。

出会った相手を説得して味方につけるなんて真似俺には無理だしな。

そうと決まれば脱出……ん?

何だこの格好?

ポロシャツ、チノパン、スニーカーがチュニック、ズボン、サンダルに変わってる。

誰かに着替えさせられたのか?

だとすると着替えさせた相手はどこにいった?

誰もいないんじゃなくて一旦退室してるだけなのか?

いや、世界に合わせて服が変わった可能性もあるな。

……とりあえず外に出よう。

何にせよ動かないと始まらないからな。















冒険者ギルドなう。

ゴツい冒険者がたむろしているのかと思えば閑古鳥。

職員以外に誰もいない。

お約束の酒場が併設していないからか?

とりあえずカウンターの白髪混じりのおじさんに声をかけてみるか。



「あの、冒険者登録について聞きたいんですが」


『はい、何についてご説明しましょう?』



すごいな。

おじさんの口の動きを見ると日本語を話していないのに、流暢な日本語に聞こえる。

これが同時通訳のスキルMAX効果か。

口元を見なければ日本人にしか見えない。

幸いこの国は金髪よりも黒髪や茶髪の方が多いようなので目立つ心配は無さそうだ。



「えーと、すみません。実は田舎から出てきたばかりで何も分からないんです」


『では一通り説明しますね。先ず、冒険者登録は無料です。簡単な手続きで身分証明にもなるギルドカードが発行され即日冒険者になれます。このカードがあれば基本的にどの町にも無料で入れますので大変お得です。他にも冒険者になればギルドの依頼が優先して受けられますし、素材の買い取りの手数料が無料になります。如何でしょう?冒険者登録しますか?手続きのためお名前を伺っても?』



メリットしか言わないのは冒険者が足りていないからか?

それとも隠したいデメリットがあるのか?



「注意点とかありますか?」


『そうですね、注意点という程ではありませんが、冒険者にはランクがありまして、ランクに応じた依頼数をこなさないとランクが落ちてしまいます。ギルドカードも初回発行は無料ですが二回目からは有料になります』



この辺はギルドあるあるだな。

もう少し聞いてみるか。



「他にもありますか?」


『……そうですね、あまり関係ないかもしれませんが、拠点を移す際は冒険者ギルドに報告する義務があります。報告を怠ると罰金になりますのでお気をつけください。他には……国や貴族からの依頼は優先して片付けること、討伐令が出た際はランク関係なく全員受注する義務もありますね。とはいえランクに応じた場所に配置されるそうなので、それほど心配はいらないでしょう』



討伐令は義務?

まるで傭兵だな。

話を聞く限り手数料を気にしなければ冒険者になるメリットは無い。

少なくとも他の国を見てから決めた方が良さそうだ。

ま、最後にもう一つ聞いておくか。



「一番最近討伐令が出たのはいつですか?」


『四日前ですね』


「四日前ですか……」



だからギルドに誰もいないのか。

城の警備がザルだったのもそれが理由か?

さっきまで俺が居たのは城の地下だった。

そこから更に階段を下りたら水路があって、水路沿いに歩いたら外に通じる抜け道を発見、出入口に見張りもなく悠々と脱出成功。

あまりに閑散としてたから城下町の賑わいに驚いたくらいだ。



『ところであなたのお名前は?』


「いえ、すみません。説明ありがとうございました。冒険者に登録するのはもう少し考えてみます」


『お名前だけで仮登録出来ますよ?』


「いいえ、今回は止めておきます」


『そうですか、残念です。気が変わったらいつでもお越しください。私はホヅミと申します』


「ありがとうございました」



名前も日本人っぽいな。

あまり信用できない人っぽいけど。

俺に名前を聞きながら仮登録用紙にペン当ててたし。

最初に名乗ってたら勝手に仮登録されていたかもしれない。

それで討伐令が出たら仮登録でも冒険者ですからとか言われて拒否したら罰金とか普通にありそう。


しかし困ったな。

どうやって金を稼ごう?

宿屋に手伝いをする代わりに泊めてもらえるよう交渉してみるか?

でも俺口下手だしなぁ。



カーン

シャラララーン

シャララララーン


何だこの音?

いきなり周囲が慌ただしくなったぞ。

何かあるのか?

魔物の襲撃?

それにしては音が長閑なような?



『おい、兄ちゃん!あんたは見に行かないのか?勇者様がそろそろ帰ってくるってよ!』


『中央広場で酒が振る舞われるんだ!行かなきゃ損だぞ!』


『早く行かないと無くなるぞ?余所からもそれ目当てで集まってきてるからな!』



親切なおじさん三人組がホットドッグみたいな食べ物片手に走っていく。

結構足早いな。

あれでステータスどのくらいなんだろ?

ま、とりあえず行ってみるか。

混雑で落ちた財布を拾って届けたらお返ししてもらえるかもしれないし。








「……マジか」



凱旋する集団の中にあの高校生カップルがいる。

変な方向に曲がっていた首、手足、陥没していた頭部……こちらに来る前に見た光景がフラッシュバックする。

あれは明らかに即死だった。

なのに何故生きている?

他人の空似ではない。

だって彼らは母校の制服の上に革の鎧を着ているのだから。

異世界に来たことで生き返った?

ということはあの時俺も死んでいたのか?

だからここにいるのか?


女子高生と刹那視線が合うがすぐに外される。

こちらを気にする様子もない。

それはそうだろう。

俺は彼らを知っているが彼らは俺を知らない。

だって死んでいたのだから。

異世界あるあるの白い部屋で謎の人物に会ったのか?

そこでチートをもらって転生した?

いや、姿形そのままだから転移の方か。



『勇者様ー!聖女様ー!討伐ありがとうございました!』


『勇者様ばんざーい!聖女様ばんざーい!』



凱旋集団を褒めそやす人々が口にする気になる言葉。

得意気な様子からしてあの二人が勇者と聖女のようだ。

認知度の高さからいって勝手に名乗っているわけではないだろう。

つまり異世界召喚はあったのだ。

トラックで即死した彼らは俺を巻き込んだくせに俺を置いてきぼりにして衣食住を保障してくれる王族に召喚されたのだ。

そうでなければあんな立派な剣を買えるはずがない。

羨ましいが、今更俺も召喚されたと名乗り出ても誰も信じてくれないだろう。

仮に彼らと話せても逆に消されそうな気がする。

二人揃って名誉欲に酔ってるのがありありと分かるからな。

合流は無理だ。

俺は凱旋集団を見る人々とは別、おじさん率の高い人の流れに乗った。

行き先は恐らく中央広場だろう。

この世界の酒を飲んでみよう。

無料みたいだし。











木のコップになみなみと注がれた赤ワイン。

空気に流され誰彼構わず乾杯をし一気に飲み干す。



「美味い」



アルコール度数は低く、ぶとうジュースに近い。

口当たりがいいからついつい飲みすぎて潰れる者も多いだろう。

スリに注意しなければと思うが一文無しの俺には関係ないか。

それより酒の列に神父さんぽい人まで並んでるのは良いのか?


「聖職者も飲むのか?」


『ははっ、大っぴらに飲むのはこの国の奴だけさ。この国は勇者信仰が強いからな、あいつら聖職者は肩身が狭いんだよ。赴任当初は真面目に神様の素晴らしさ?そういうのを説くんだけど誰も聞かねえから酒に逃げるんだよ。ま、酒を飲むことで距離が近くなって話を聞いてもらえるようになるんだから面白いよな』



独り言が聞こえたのか赤ら顔のおじさんが教えてくれる。

勇者信仰か。



「今回は聖女もいるみたいですね」


『そんなもの居ねぇよ!実はな、お触れがあったんだよ。勇者様と一緒に来た嬢ちゃんを聖女と呼ぶようにって』


「そうなんですか?」


『ここだけの話、神殿から抗議が来たらしいぞ。聖職者でも清らかでもない少女を聖女と呼ぶとは何事か!ってな。あの嬢ちゃん見るからに男を知ってるだろ?俺もお相手してほしいぜ。お、兄さん、お代わりが来たぞ!』



言うや否や人混みを掻き分け酒樽の前に陣取るおじさん。

千鳥足のわりに身のこなしがすごいな。

俺ももう一杯もらおうかな。











教会なう。

各国の城下町には神殿があるらしいけど、ここは勇者信仰が強いから教会しか許可されなかったらしい。

あれから二杯お代わりしたことで色々聞くことが出来た。

お金がないとき、ステータスについて聞きたいとき、仕事が欲しいとき、とりあえず困ったときは神殿や教会に行けばいいそうだ。



「……誰もいない」



ステンドグラスはないんだな。

寂れた感じはないけど派手さもない。

正面にででーんと鎮座している水晶玉が気になると言えば気になるが今は少し眠りたい。

三杯しか飲んでないのに一気飲みのせいで結構酔った。

ベンチを借りて休ませてもらおう。













『これ、これ、いい加減起きなさい』



ゆさゆさ肩を揺すられる。

目を開けたら酒の列に並んでいた神父さん。



「ああ、すみません。勝手に入ってしまって」


『御布施ですか?』


「いえ、実は一文無しでして」


『成る程、スラれたのですな?そのせいで宿に泊まれず、ここで寝ていた。そうでしょう?』


「えーと、そんなところです」


『……嘘はついていないようですな。よろしい、お助けいたしましょう。何がお望みですか?』


「幾つかあるんですが、構いませんか?」


『聞かせていただきましょう』


「先ずは冒険者になる以外のお金の稼ぎ方が知りたいです」


『その気持ちよくわかります。この国では冒険者を勇者の肉壁と思っていますからね。あそこの冒険者ギルドは特にひどい。国王公認だからといって本来ないはずの規律を作り違約金や罰金を取るだけでなく、ここから拠点を移そうとするとランクを下げると脅したり、実際に下げたり、依頼の妨害をした上に文句を言えばギルドに反抗的だと申し送り書に書いたり、神殿の建設に反対したり教会で仕事を斡旋するなと怒鳴り込んできたり、誠に嘆かわしい限りです。しかし神は私を見捨てなかった。酒に逃げた私にすらその手を差し伸べてくださったのです!ええ、実はギルドに愛想をつかした冒険者もこちらを利用するようになりましてね、依頼の量も増えているのですよ。畑の収穫の手伝い、ごみ拾い、炊き出しの手伝い、チラシ配り、配膳の手伝い、あなたでも出来る仕事が色々ありますので一度ご覧ください』



いきなり饒舌になったな。

けど神父さん、多分冒険者が増えたのはお酒を飲むようになったからだと思うぞ。

言わないけど。



「はい、ありがとうございます。二つ目は、しばらくここに泊めてもらいたいのですが大丈夫ですか?お金が入るまでの間で構いません。もちろんお手伝いもします」


『常に人手が足りない状態なので構いませんよ。粗末なものでよければ食事も出しましょう』


「ありがとうございます。助かります。最後にステータスについてお聞きしたいのですが」


『ステータスは自分以外には見えません。それは秘匿すべきものだからです。その上で質問してくださいね?私もこれ以上神の教えを破るわけにはいきませんので』


「実はレベル1の平均値が知りたいのです」


『10です』



即答だな。

秘匿すべきと言いながらあっさり言ったぞ。

酔ってるのか?



「合計ではなく平均が10なんですか?」


『はい』



俺レベルMAXで10なんだけど?

バグか?

落ちこぼれなのか?



「秘匿しているのにどうして平均が分かるんですか?」


『凡人でも英雄でもレベル1ではそれほど差がありません。子どもは口が軽いですし対抗意識が強いですからね、自然と平均値が出来たんです。各国の平均ですので信用していいと思います』


「勇者はどうです?」


『あなたは見所がありますね。勇者信仰によって目が曇っていない。よろしい、秘匿中の秘匿をお教えしましょう。傍に寄ってください。もう少し。………レベル1の平均が70以上です。代々の勇者のお手付きになったシスター達の情報ですのでそれなりに信憑性はあると思います』


「限界値はあるんですか?」


『一応ステータスは999、スキルは9が限界値だと言われていますが、確認されている最高値がこの国の先々代の王になった勇者の673と7ですので、正確には分かりません』


「有名なスキルや有用なスキル、珍しいスキルや不人気のスキルはありますか?」


『有名なスキルはやはり勇者の光の剣でしょう。切れぬものはないとされていますから。有用なスキルは浄化でしょうか。アンデッドから服の汚れまで手広く清めることが出来ますので。珍しいスキルは色々ありますが、この国の王女が以心伝心スキルを持っていると聞いたことがあります。不人気スキルは国によって代わりますが、この国では伐採でしょうか。近場に森がありませんし、木こりは低賃金ですから』


「スキルは新しく覚えられるんですか?」


『はい。料理や算術など日常的なスキルは覚えやすいですね。逆に戦闘系のものは覚えにくく師を持つか修行が必須だと言われています。そうだ、ご自分のステータスを確認しますか?あの水晶玉に手をかざすとより詳細なステータスが見れるんです。人によっては助言をもらえたりするそうですよ』


「そうですね、確認してみます」


『では銀貨一枚の寄付をお願いします。……もちろん後日で構いません』


「はい、必ず寄付します」



─────────────────────────


名前:徳長 茂 〈ゲルト〉

性別:男

職業:お金LOVE♥️

レベル:MAX(ステータスは全部×1000してね♥️)隠蔽中だけどちょっとだけ見せてあげる♥️


HP:100 〈100000〉

MP:100 〈100000〉

STR:10 〈10000〉

INT:10 〈10000〉

VIT:10 〈10000〉

DEX:10 〈10000〉

AGI:10 〈10000〉

LUK:10 〈10000〉


スキル:

同時通訳MAX(MAXボーナスで文字も読めるよ♥️)

隠蔽MAX(MAXボーナスで看破無効♥️)

身銭を切るMAX(MAXボーナスでステータスをお金とかに変換出来るよ♥️)使用MP5


加護:黄金神の寵愛(内緒だぞ♥️)



ゲルトはドイツ語でお金のこと♥️

ドイツ語ってイケてるよね♥️


─────────────────────────



ハートマークが多いな。

色々突っ込みたいが、まず職業!

お金ラブだからOL?

せめてマネーラブのMLにしろよ!

紛らわしいんだよ!


(単位:千円)の意味が×1000すること?

一気に強くなったけど初見殺し過ぎないか?

この水晶玉じゃなきゃわかんないだろ。


同時通訳MAXは話せる・聞ける・読める、書けないってことか。

隠蔽はパッシブスキル。

これがなきゃヤバかったかもしれないな。

身銭を切るMAXは説明文読んでも意味が分からない。

ステータスをどうやって変化させるんだよ。


最後に黄金神の寵愛。

ゲルトってあれか?

この神様が俺につけたあだ名なのか?

どれだけお金好きなんだよ。

まあ俺も好きだけど。



『いかがでした?お役に立ちましたか?』


「はい、お陰さまでスキルの意味が分かりました」


『それは何よりです。ではさっそくお手伝いをお願いしても?』


「はい」


『床掃除と窓拭きをお願いします。私は夕食を作りますので』


「わかりました」



用具入れからほうきを取り出し床をはく。

床の雑巾がけはどうしよう?

とりあえず余力があったらでいいか。


しかし変なスキルだよな。

ステータスをお金に変換するって。

流石に円には変わらないよな?

金貨や銀貨に変わるんだよな?

異世界で万札出したら多分鼻で笑われるぞ。


でもなぁ。

マジだったら使えるよな。

一回試してみるか?



(身銭を切るスキルを使いたい!!)




─────────────────────────


身銭を切るスキルを発動しました。

変換するステータスを選んでください。



HP:100000 〈 ← 〉

MP:100000

STR:10000

INT:10000

VIT:10000

DEX:10000

AGI:10000

LUK:10000



─────────────────────────



出た!

成る程、強く念じれば発動するのか。

どれを変換しよう?

うーん。

今のところ出番がなさそうなMPにするか。



─────────────────────────


身銭を切るスキルを発動中です。

MPが選択されました。

〈↓↑〉で数値を決定してください。



MP:99999 〈 ↓ 1 〉



銀貨一枚 or 銅貨百枚 に変換可能です。


─────────────────────────



マジでお金に変換できるみたいだな。

銀貨一枚が銅貨百枚だとすると銀貨百枚が金貨一枚ってことか?

とりあえず100下げてみよう。



─────────────────────────


身銭を切るスキルを発動中です。

MPが選択されました。

〈↓↑〉で数値を変更できます。



MP:99900 〈 ↓ 100 〉



金貨一枚 or 銀貨百枚 or 初級ポーションセット に変換可能です。


─────────────────────────



お金以外にも変換できるのか。

しかし初級ポーションセットねぇ。

何種類かのポーションがあるのか初級ポーションが何個かあるのか。

これじゃどっちか分からないな。

うーん。

よし、決めた。



─────────────────────────


身銭を切るスキルを発動中です。

MPが選択されました。

〈↓↑〉で数値を変更できます。



MP:99800 〈 ↓ 200 〉



金貨二枚 or 銀貨二百枚 or 中級ポーション、または金貨一枚 ・ 銀貨百枚 ・ 初級ポーションセット から二つ変換可能です。


─────────────────────────



よし、思った通りだ。

確定は……やっぱり念じるのか?



(MP200を銀貨百枚と初級ポーションセットに変換する!!)



……ん?

何も起きない……うおっ!?何だこれ?

腰に重みがと思ったら、がま口のウエストポーチが付いていた。

ここに銀貨百枚と初級ポーションセットが入ってるのか?

それにしては薄っぺらいけど。



─────────────────────────


取り出すアイテムを選んでください。


・銀貨×100

・初級ポーションセット×5

・???


─────────────────────────



がま口を開けると頭に浮かぶメッセージ。

…………!?

これはもしや異世界あるあるのアイテムボックスか?



(銀貨十枚。)



思った瞬間手に重みが。

開いてみると銀貨が十枚乗っている。

すごい。

まるで魔法だ。

これで一先ず冒険者登録しなくて済むな。

だが三つ目のアイテムはなんだ?



(???を取り出す。)



今度は何も書かれていない真っ白な封筒が現れる。

分厚い。

分厚すぎる。

……果たし状か?

恐る恐る封を切ると蛇腹折りの手紙が入っていた。


…………。

………………………。


さて。

掃除を続けよう。

ウエストポーチはチュニックで隠れるし、普通に物を出し入れできることも確認した。

え?

手紙?

野暮な質問はよしてくれ。

馬に蹴られても知らないぞ?









『お疲れ様です。夕食ができましたよ』


「あ、お疲れ様です。この窓で終わりますので」


『素晴らしい。とても綺麗になりましたね。ありがとうございます。夕食は向こうの部屋に用意しますので終わったら来てください』


「はい、わかりました」



掃除が捗りすぎて怖い。

全く疲れない。

首も腰も痛くない。

流石ステータスの桁が違うだけある。

さて、後片付けしてご飯を御馳走になろう。





『本日のメニューは芋のスープ、芋フライ、芋サラダです。パンはスープにつけてお食べください』


「はい、いただきます」



うん、芋はジャガイモだ。

少し薄味だけど美味い。

気になるのはポテトサラダの味付け。

これ絶対マヨネーズだよな?

俺、若干マヨラー入ってるから地味に嬉しい。

あっという間に平らげてしまった。



「ごちそうさまでした。美味しかったです」


『それは良かった。部屋は二階の一番手前をお使いください。お風呂はありませんがお湯はありますので必要でしたらどうぞ。依頼書が張ってある掲示板は教会横の建物にありますが、夕方には閉館しますのでお気をつけください』


「ご親切にどうも。明日見てみます」


『ああ、そうだ。もう一つありました。ここは手数料の高い冒険者ギルドに依頼できない方が主な依頼主ですので、依頼に対して金額が低く感じるかもしれません。しかしその分多岐に渡る仕事がありますし、住み込みや食事つきのものもありますのでご了承ください』


「こちらからも良いですか?一般的な宿屋の相場が知りたいのですが」


『食事がついていない安宿でも銀貨十枚はしますね。高いでしょう?冒険者の宿代を半額にするため、冒険者以外に負担を強いてるんですよ。これくらいの小さなパンも冒険者は銅貨三枚で買えるのに我々は銅貨七枚払わないと買えません。お陰で私も料理スキルが増えて小麦からパンを作れるようになりました。目に見えて冒険者を優遇しなければこの国で冒険者になろうという者がいないのです。戦争は原則拠点を置く国側での参加になりますからね。傭兵ではない冒険者は参加するもしないも自由なのですが、この国は強制参加なので成り手がいないのも頷けます。まあ勇者が召喚されたので多少変化はあるでしょうがある程度稼いだら他国へ行くのが良いでしょうね。入国料の目安は大銀貨二枚です』


「大銀貨?……金貨、銀貨、銅貨の三種類では?」


『いえ、八種類ですよ。大白金貨、白金貨、大金貨、金貨、大銀貨、銀貨、大銅貨、銅貨です。まあ大白金貨と白金貨は王侯貴族専用と思っていただいて結構です。金貨十枚が大金貨、銀貨十枚が大銀貨、銅貨十枚が大銅貨です。まあ田舎の方は村長や商人以外は物々交換でしょうし見たことがなくても仕方ありません。今手持ちがなくてお見せできませんが、依頼を受ければ自然と目にする機会もあるでしょう。……ああそれと、既に知っているかもしれませんが、他人にみだりに名乗ってはいけませんよ?名乗るなら本名ではなくあだ名や二つ名にしておいた方が身のためです。結婚したり家を買ったり新たに商売を起こさなければ基本必要ありませんので。特にこの国では悪用される恐れがありますからね』


「そうなんですか。だから名前を聞かなかったんですね。色々詳しく教えていただきありがとうございます」


『困っている方々に手を差し伸べるのが我々聖職者の務めですから。何かあれば遠慮なくご相談ください』


「ありがとうございます」










寝室なう。

お湯で体を拭くだけで結構違うな。

しかしこれからどうするか。

そうだ。

大銀貨が銀貨十枚ってことは、アイテムボックスから大銀貨として取り出せるか確かめてみるか。



─────────────────────────


取り出すアイテムを選んでください。


・銀貨×90

・初級ポーション×5

・???


─────────────────────────



(大銀貨を二枚取り出す!)



よし、成功!

成る程、銀貨より一回り大きい銀貨が大銀貨なのか。

ズボンに入れていた銀貨十枚と合わせて見比べると花、鳥、太陽、月、剣の五種類の模様があることに気づいた。

もしかして国によって違うのか?

まあ混ざってるってことは模様が違っても価値は同じだろう。


それより物価が問題だよな。

食事なしの安宿が銀貨十枚。

冒険者が銀貨五枚。

だとすると相場は銀貨七枚か?

つまり銀貨一枚が千円?

でもそうなると銅貨が十円になるよな?


いや待て。

ここは異世界だ。

例えステータスに(単位:千円)と書いていても日本円に換算するのはおかしいよな。

郷に入れば郷に従え。

今までの価値観を優先し過ぎたら絶対浮く。

俺のステータスがどうあれ目立つつもりはないからな。

ああいう荒事は勇者と聖女に任せればいい。

俺は自由気ままに生きていくんだ。

あ、そうだ。

スキルを使ってからステータスを確認してなかったな。



─────────────────────────


名前:ゲルト 〈シゲル・トクナガ〉

性別:男

職業:OL

レベル:MAX(単位:千円)


HP:100/100

MP:97/99

STR:10

INT:10

VIT:10

DEX:10

AGI:10

LUK:10


スキル:同時通訳MAX、隠蔽MAX、身銭を切るMAX

加護:GOG


─────────────────────────



MPの最大値が減ってるな。

3しか減っていないことから自然回復あり、と。

職業はOLのままか。

さて、今回は一度に複数のステータスを変換出来るのか確かめてみよう。



(身銭を切るスキルを使う!)



─────────────────────────


身銭を切るスキルを発動しました。

変換するステータスを選んでください。



HP:100000 〈 ← 〉

MP:99900

STR:10000

INT:10000

VIT:10000

DEX:10000

AGI:10000

LUK:10000


─────────────────────────



(HPとMPを変換したい!)



─────────────────────────


身銭を切るスキルを発動中です。

HPとMPが選択されました。

〈↓↑〉で数値を変更できます。



HP:99999 〈 ↓ 1 〉

MP:99899 〈 ↓ 1 〉



銀貨二枚 or 銅貨二百枚 or 食器 or携帯食品に変換可能です。


─────────────────────────



あ、出来た。

これかなり便利なスキルかもしれない。

新たに食器と携帯食品が出たな。

食事をしたから増えたのか?

俺がこの世界を知る度に変換出来るものが増えていく?

……ということは勇者の持ってた剣も?



─────────────────────────


身銭を切るスキルを発動中です。

HPとMPが選択されました。

〈↓↑〉で数値を変更できます。



HP:10 〈 ↓ 99990 ※限界値です。〉

MP:10 〈 ↓ 99890 ※限界値です。〉



・???、???、???、???、???、???、???、???、???、!!!に変換可能です。


・現在変換可能なものは各通貨、各ポーションセット、食器セット、携帯食品セット、掃除道具、酒、鋼の剣です。


※GOGの加護により一部表示できません!ステータスを変換出来ません!数値を変更してください!


─────────────────────────



何だ、勇者の剣は鋼の剣だったのか。

え?

注目すべきはそこじゃない?

分かってる。

?だらけで変換出来ないことだろ?

一瞬バグったかと焦ったが、単に俺が知らないから表示されてないだけだと思う。

でも最後の!マークは何だろう?

俺は知ってるけど伏せられてるってことか?

GOGの加護で変換出来ないのは……これだけ下げたら体に変調をきたすから?

もしくは今は無闇矢鱈と変換しないで知識を高めろってことかもしれない。

まあ異世界初日なんだからポジティブに考えよう。

せっかくの異世界、楽しまなきゃ損だ。


出来るならさっさとこの国を離れたいが、戦闘スキルがないから用心棒を雇うか、乗り合い馬車か何かを利用するかしないと駄目なんだよな。

いや、待てよ?

今なら周辺の魔物が減ってるかもしれない。

凱旋集団が行き帰りの道中に出た魔物を倒しているはずだ。

どうする?

金銭面はクリアしたけど一晩泊めてもらった以上一度は依頼を受けておきたい。

それで心付けと寄付金を払って気持ちよく旅立つか。

日中なら店や市場で色々見れるだろうし俺にとっても損はない。

そうと決まれば今日は寝よう。







ごみ拾いなう。

城下町のくせにかなり汚い。

いや、綺麗な場所とそうじゃない場所の差が激しい。

住民街、教会、城門付近は綺麗なのに広場や商店が立ち並んでいる付近はポイ捨てが横行しているようだ。

大きなかごを背負ってごみ拾いに励む俺に感謝の言葉をかけてくれる人が大半だが、鼻で笑う奴等も当然ながらいる。

だが何でその中に勇者と聖女が混ざってたんだろう?

城で暮らしていないのか?

それとも出入りフリー?

視線が合わないよう気を付けるのが大変だった。

だってあれ聖剣ぽい見た目の鋼の剣なんだろ?

思わず吹き出しかけたわ。


食事休憩をのぞきゴミを拾いまくった。

疲労知らずの体になったようでありがたい。

お金も落ちてたぞ。

銀貨三枚、銅貨七枚。

後でどうしたらいいか神父さんに聞いてみるつもりだ。

依頼通りかご三杯分を依頼主に引き渡すと銀貨一枚と作業着をもらえることになった。

もちろん浄化済み。

どうも一日で終わらせたことが良かったようだ。

着替えができて嬉しい。


その後教会に寄って神父さんに拾ったお金と寄付として銀貨三枚と初級ポーションを渡したら、今晩も泊まると思われていたらしく夕食を用意してくれていたのでお相伴にあずかることにした。

献立はじゃがバターとポテトグラタン。

神父さんはホワイトソースも作れるらしい。

料理スキルが高そうだ。






寝室なう。

よし、今日も身銭を切るぞ。



(身銭を切るスキルを使う!)



─────────────────────────


身銭を切るスキルを発動しました。

変換するステータスを選んでください。



HP:100000 〈 ← 〉

MP:99900

STR:10000

INT:10000

VIT:10000

DEX:10000

AGI:10000

LUK:10000


─────────────────────────



今回もHPとMPを変換する。

思い通りのヤツ出てくれよ!



─────────────────────────


身銭を切るスキルを発動中です。

HPとMPが選択されました。

〈↓↑〉で数値を変更できます。



HP:99700 〈 ↓ 300 〉

MP:99700 〈 ↓ 100 〉



金貨四枚 or 銀貨四百枚 or 上級ポーション or 中級ポーションセット or 旅人セットに変換可能です。


─────────────────────────



よし!

旅人セット出た!



(HP300とMP100を旅人セットに変換する!)



さて、アイテムボックスを確認するか。

どんなセット内容かドキドキするな。



─────────────────────────


取り出すアイテムを選んでください。


・銀貨×70

・作業着

・初級ポーションセット×4

・旅人セット(テント、ミニランタン、火石、水筒、コップ、皿、小鍋、小刀、タオル、下着セット、マント、毛布、携帯食品)

・???


─────────────────────────



やった!

思った通りスキルの方が普通に買うよりお得だ!

いや、中身を見てみないとわからないか。

とりあえず全部出してみよう。


テント。

真ん中に支柱を立てるタイプ。

変な模様入ってるけど撥水加工されてて丈夫そう。

コンパクトだが中は結構広い。

足を伸ばして寝られるのは良いな。


ミニランタン。

中に入っている石に魔力を流すと一定時間光るタイプ。


火石。

魔力を込めて薪と一緒にくべたら火が付く。

火打石より簡単。

消すときは魔力を込めた水や土をかける。


水筒。

皮袋タイプ。


コップ、皿。

木製。


小鍋。

銅製。


小刀。

折り畳み式のナイフ。


タオル、下着セット。

木綿製。


マント、毛布。

フード付きマントと温か毛布。

厚手で丈夫そう。


携帯食品。

干し肉と黒パン。


すごいな。

想像以上に良いやつだ。

値切ることなく店で買ったら金貨八枚でも揃えられないんじゃないか?

乗り合い馬車が銀貨三十枚で乗れるらしいから携帯食品をもう少し買ったら隣国は無理でも他の町にいけるよな?

……よし。

明日ここを発つ。

勇者と聖女とおさらばだ。

おやすみ!











異世界三日目。

お世話になった神父さんに旅立ちの挨拶をすると昼食にどうぞとサンドイッチをもらった。

本当に感謝。

シスターだったら惚れていたかもしれない。








乗り合い馬車なう。

商人の馬車と合わせて四台で出発。

まっすぐ国境に向かうのではなく、国境までにある町を巡りながらののんびり旅だ。

料金は国境まで銀貨四十枚で毎食事付き。

安いだろ?

ちゃんと理由があるんだ。



『勇者様、お見事です』


『流石勇者様。見事な腕前ですね』


「あはは、褒めすぎですよ」


「ちょっと、次は私の番だからね!」


「ああ、分かってる。次は譲るよ」



護衛の中に何故か勇者と聖女がいるんだよ。

又聞きだから正確か分からないが、商人のおじさんは米を取り扱っているらしく、それを知った二人が押し掛けてきて栽培場所に連れていけと言ったらしい。

一度は断ったらしいが、国のお偉いさんが二人を目的の村に連れていくなら往復の護衛を出すと言われて了承したそうだ。

元々乗り合い馬車と一緒に出発する予定だったが、護衛代が浮いたことと王家の紋章入りの旗を今回掲げられるということで荷馬車を一台増やし、乗り合い馬車の俺達にも食事を振る舞ってくれることになったらしい。


乗客と話していると同時通訳スキルについて分かったことがある。

食事で芋サラダが出されたとき、俺が「ポテトサラダ」と言ったのに『芋サラダが好物なのか?』と聞かれたのだ。

同じように「じゃがいも美味しいですよね」と言ったら『毎食芋は飽きる』と返された。

ポテトと言ってもじゃがいもと言っても違和感を持たれないのだ。

同じように最初鳥の餌と聞こえていた米が現物を見せてもらってからは米と聞こえるようになった。

どうやら俺が知らないものは相手の認識で訳されるが、知ったあとは俺の認識で訳されるようだ。


米は日本人のソウルフード。

あの二人が駄々をこねても手に入れたいと思ったのも仕方ない。

しかし俺は思うのだ。

鳥の餌にされているような米が本当に美味いのか?

異世界の米がジャポニカ米のように品種改良されているとはとても思えない。

分かってる。

こんなのただの言い掛かりだ。

だが期待値を大幅に下げておかないと、いざ食べたときに食えたものじゃなかったときの絶望感に打ち勝てない。

だって俺、マヨネーズよりも米が好きなんだ。

一人暮らしなのに高い炊飯器買っちゃうぐらいご飯が好きなんだよ。

米があるのに不味くて食えないなんて絶望以外に何がある?


……いや、待てよ?

この世界の米を知ったから身銭を切るスキルで出せたりしないか?

お願い身銭モン!

俺に日本のブランド米を出してくれ!



(身銭を切るスキルを使う!)




─────────────────────────


身銭を切るスキルを発動しました。

変換するステータスを選んでください。



HP:99700 〈 ← 〉

MP:99700

STR:10000

INT:10000

VIT:10000

DEX:10000

AGI:10000

LUK:10000


─────────────────────────



今回は確かめるだけだからHPで。



─────────────────────────


身銭を切るスキルを発動中です。

HPが選択されました。

〈↓↑〉で数値を変更できます。



HP:99699 〈 ↓ 1 〉



※米5㎏まで〈1〉足りません。

銀貨一枚 or 銅貨百枚 に変換可能です。


─────────────────────────


出た!

米が出た!

神様、これ俺が知ってるジャポニカ米ですよね!?

噛めば甘みが出る美味しい米なんですよね!?



─────────────────────────


身銭を切るスキルを発動中です。

HPが選択されました。

〈↓↑〉で数値を変更できます。



HP:99698 〈 ↓ 2 〉




米5㎏(!!ヒカリ) or 銀貨二枚 or 銅貨二百枚 に変換可能です。

※GOGの加護により一部表示できません!


─────────────────────────



これは!!

某ブランド米を伏せ字ってるのか!?

そうだよな!?

絶対そうだよ!

うわ、マジで変換したい。

変換したいけど……米を炊く道具がないんだよな。

せっかくの米だ。

美味しく食べたい。

……仕方ない。

土鍋を手に入れるまで我慢しよう。

変換出来ると分かっただけで今は十分だ。

そうだ。

別に諦めるわけじゃない。

今は変換しないだけだ。

米よ、暫しさらば!



『お兄さん?どうした?泣いてんのか?目にゴミが入ったのか?大丈夫か?』



(身銭を切るスキルを中止する!)



……。

…………ん?

あれ、消えないぞ?

もしかして途中で止められないのか?

なら銀貨に変かぁああああ!?



─────────────────────────


身銭を切るスキルを発動中です。

HPが選択されました。

〈↓↑〉で数値を変更できます。



HP:99698 〈 ↓ 2 〉




米5㎏(!!ヒカリ)()()()()()() or 銀貨二枚 or 銅貨二百枚 に変換可能です。

※GOGの加護により一部表示できません!


─────────────────────────



()()()()()()!!

米5㎏が()()()()()()になってる!!



(HP2を米5㎏初回土鍋付きに変換する!!)



ハッ!?

思わず変換してしまった!

だが後悔はない!!



─────────────────────────


取り出すアイテムを選んでください。


・銀貨×30

・作業着

・初級ポーション×4

・旅人セット(テント、ミニランタン、火石、コップ、皿、小鍋、小刀、タオル、下着セット、携帯食品)

・米5㎏

・土鍋七号

・???


─────────────────────────



よし!

ちゃんと入ってる。

手元にあるだけでこの安心感。

流石ソウルフード。

国境の検問所に行くまで色んな町や村を回るらしいからご飯のお供を探してみよう。

神様、本当にありがとうございます!

異世界に来て一番嬉しいかもしれない。

二番目はマヨネーズ。

神父さんが昼食にと持たせてくれたポテトサラダのサンドイッチ、マヨネーズが多めで美味しかった。

若いシスターだったら惚れていたかもしれない。



『お兄さん、何かこの国で辛いことがあったのかもしれないが隣国に行くんだろ?きっと良いことがあるさ。ほら、泣いてないで酒でも飲んで楽しくいこうや』



そう言って斜め前に座ってるおじさんが酒瓶を差し出してくる。

泣いてる?

あ、マジだ。

嬉し泣きだな。



「ありがとうございます。いただきます」



アイテムボックスからコップを取り出して注いでもらう。

目隠しとしてマントを羽織っているから取り出しても不自然さはないはず。

やっぱり酒はワインなんだな。



『少し強いからな。一気は止めとけよ』



忠告の通りまずは一口。

うん、ワインだ。

広場で飲んだのがぶどうジュースの割合が七だとしたらこれは四。

でも甘くて飲みやすい。

俺、今までワインの良さが分からなかったけどこっちのワインは結構好きだ。



「美味しいです」


『だろ?酒は落ち込んだときの景気づけにもってこいだ』


『オレにもくれよ』


『よし、なら酒盛りするか!』


『『『「おー!』』』」


『酒盛りはいいけど絡んでこないでよ?』


『いびきかくのもダメ!』


『だめー!』


『ボクも飲む!』


『あんたはまだ駄目!大人になってから!』


『何だよ!ケチ!』


『けーち!』


『真似すんなよ!』


『すんなよー!』



あー、何か平和だなぁ。

俺さ、ずっと旅に憧れてたんだ。

木陰に寝転んで無為な時間を過ごしたり、各地の名物料理を食べたり、ちょっと高価なホテルに泊まったり、旅館で温泉を満喫したり……。

現実は疲れが取れなくて休日は寝て過ごすことが多かったけどな。

だからこういう事でもないとずっと家と会社の往復生活をしていたと思う。

そう考えればチャンスなんだよ。

耐性がないから怪我や病気や呪い等が怖いが、だからといって引きこもるのはもったいない。

せっかくの機会だと思って色んな場所を見て回りたい。


表舞台で輝く役は勇者と聖女に任せる。

それこそ身を削って名誉を欲しいままにしたらいい。

俺は世に埋もれながら身銭を切って生きていくからさ。










主人公になう。を使わせたかった。

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― 新着の感想 ―
[一言] なんか主人公破滅しそう……
[気になる点] 1行目から「この主人公、あれ?叔父さんと(字は違うけど)同姓同名だww」という個人的な衝撃から始まり、中々面白い身銭の切り方(スキル)でした。 出来れば連載で読んでみたかったです。 …
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