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絶晩成型(リメイク)  作者: 咫城麻呂
第一章 中立都市ツァオベラー
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1-4 学生、家を盗む。

 やっほー。千曳だよ。

 マイハウスっていいものだね。

 フリーターが買いたくなるのもわかる気がする。


 ――――――――――――――――――――


 それから一週間、引きこもった。――という訳でもなく、普通に外に出て野草を採ったり、魚を捕ったり、風呂を作ったりと充実した生活を送っていた。


 朝は川で顔を洗い、昼は家でゴロゴロし、夜は川原で風呂と夕飯、そしてふかふかおふとぅんで寝る! 罰が当たりそうなほど快適だ。


 昔なら、野生動物に怯えてそこらじゅうに罠を仕掛けまくってたんだけど、今回はその必要もない。なんてったって、頼もしい相棒ができたからね。


 このマジックハンド、使えば使うほど有用だってわかる。


 ――ほっ、と。


 まず、範囲。最初は半径十メートルだったのが、五十メートルまで伸びた。五十メートルといえば、一般高校生が平均七秒掛かる距離だ。高さにするとだいたい二十階くらい。具体的に言うと、三十センチものさし――ああ、めんどくさい。兎に角、結構な距離だってのが分かればいいんだ。


 そんなわけだから、我が家のどこいいても外の敵と戦えるのだ。これが地味に嬉しくて、距離が足りなかった時は倉庫にいけない等色々と制約がかかっちゃってたんだよね。


 ほかにも消費SPというものがあって、一分間に決められた量のSPを払わなければならないのだ。


 これがなかなかに厄介で、初期の頃なんて毎秒百も消費しなくちゃならなかった。最大SPが一万だから、一時間四十分で尽きる計算だ。


 ――これは……いいや、捨ててけ。


 で、魔王の話してた通りにSPの回復ってのは早いんだけど、この時、胸に激痛が走るのだ。


 原因は不明だけど、SPが回復すると痛い。これだけは確かだ。


 幸いなことに、半分で回復させるとそこまで痛くない。それに二、三日寝なくたって問題ない。夜通し戻して出して戻して出してを繰り返していたら、消費が二十五まで減った。六時間四十分。充分寝られる展開時間だ。


 ――これと、これと……後アレ。


 ああ、展開で思い出した。コイツ、同時展開数がえげつないんだよね。消費が追いつく限り、何体だって出すことができる。


 つまり、今の状態だと四百体まで出せるということだ。まあ、一分で消滅するんだけどね。すっごい痛いから、二度とやらないと心に決めた。


 更に、マジックハンドは大きくなるを覚えた。最大五メートルくらい。小さくなるも覚えて、一センチくらいまで縮小できるようになった。まあ、こっちは何に使えるかいまいち分からないんだけど、前者は兎に角有用だ。なんたって、僕を載せることができるんだからね。


 ――ん? ああ、これいらね。


 調べてみたけど、僕と幾ばくかの荷物程度なら苦もなく持ち上げられることがわかった。これで旅がし易くなる。


 あとは……色が変わるらしい。何に使うんだ、これ。まあ、透明化はすごくありがたいけどさ。


 そんなところかな。どう? マジックハンド、めちゃくちゃ便利しょ? 一家に一台の時代が来るね。でもお高いんでしょう、だって? 安心してください、非売品です。


 ホントにこれは人をダメにする。だって、動かなくてもいいんだもん。これを操るだけで炊事洗濯掃除仕事なんでもござれ。部屋を出るのなんてトイレと風呂くらいかな?


 まあ、それじゃつまらないから旅に出るんだけどさ。なんでも、スキルってのは希少品らしい。街中じゃ無闇に使えないかも。


 とはいえ、透明だからバレないとは思うんだけどね。下で補助させるって案もあるし、状況に応じて判断しよう。


 ふぅ。こんなところかな。後は出るだけ、だと思う。大丈夫だよね?


 さてと、準備もひと段落したことですし、旅立つとしますか。


 今日僕は、我が家を捨て旅に出る。その先にどんな困難があるのか、どんな仲間と出会い、何をするのか。今からワクワクが止まらない。


 マップを見たところ、初日に見た街は今も変わらずにそこに有り続けている。徒歩三日くらいかな? 森が一日分も残ってる。めんどくさいなぁ。


 あ、そうそう。メニューも結構変えたんだよね。


 まず、HPの表記をスタミナに変更して、SPと一緒に常時表示するようにしておいた。咄嗟の時にSPを確認できないとやばいからね。


 後は、マジックハンドの展開数と消費量も載せることにした。これ、地味に便利。


 マップを弄って、マジックハンドも表示するようにしておいた。


 と言うか、このマップ使いづらい。自分と他人の位置はわかるんだけど、古いロープレのマップみたいに色の違いくらいしか分からない。最近の3Dマップに慣れてるとどうしてもね。


 ま、これも一般人にはないらしいから、あるだけよしとしておきましょう。


 それにしても、一体どんな原理なんだろう? 野暮ってやつなのかな。異世界に理由を求めるだけ無意味なのかね。


 ま、いいや。今度魔王さんに会ったら聞いてみよう。……できれば知りたくないけど。


 さて、メニューはこんなところかな。装備の確認もしておこう。


 服装は灰色のコートとカーキ色のカーゴパンツってやつ。コートにはポケットが大量につけられていて、その上通気性がよく、見た感じかなり丈夫だ。フード付きなのが何よりもいい。カーゴパンツもポケット山盛りで、こっちも丈夫。


 対塵性もいい感じで、こんな一介の盗賊が持つには惜しすぎる性能だ。これ売るだけで盗む必要がなくなるくらいの収入はあると思う。


 盗んできたものなのかな? ま、盗られた方が悪いってことで、有効活用させてもらいましょう。


 靴も、上靴から置いてあった運動靴的なものに変えておいた。


 あ、どれも新品だよ? サイズはちょっと大きいけど、将来の拡張性を見越してのことだ。……成長、するかな?


 ほかの持ち物としては、保存食や燃料が主だ。一応短剣だけは持って行くけど、多分使う機会はないだろう。だってマジックハンドが便利すぎるから。


 本は……いいや。読み終わったし、そこまで有益なことが書いてあったわけでもないし。


 さてと、これで準備オッケー。一度マジックハンドを戻してSPを回復させ、三体召喚する。


 一体は魔物退治用で、一体は荷物持ち。最後のは乗り物だ。


 マジックハンドの武器も考えとかないとなぁ。流石に右ストレートだけで行くのにも限界があるだろうし。


 取り敢えず、適当な剣でも装備させておこう。錆び付いてるけど、コイツならなんとかしてくれると思う。


 さあ、出発だ!


 意気揚々と我が家から出ると、丁度生物が消えていくところだった。


 魔王さんの話だと魔物なる生物がいるらしいんだけど、正直野生の動物と見分けがつかない。そもそもこの世界の生態系が分からない訳で、地球にいない生物だっているだろうしね。


 それでも一つ言えるのは、今まで会ってきた動物は全て消えてしまったということだろうか。多分、死んでから五分後くらいかな? 半透明になって消えるタイプと、紫色の煙になるタイプの二つがいる。魚は消えないやつと煙になるのがいた。違いは分からない。


 これは街についてから聞くしかないかな。この世界の常識とか。できれば誰かに師事してもらいたいんだけど、そんな都合のいい人物はいないだろうなぁ。


 と言うか、せっかくのスキル持ちなのに、魔王さん放置しすぎじゃない? こっちは死にかけてるんだよ? 戦う相手がいなくなるんだよ?


 あれかな? この程度で死ぬくらいでは相手にならん、ってやつかな?


 そもそも、この召喚自体結構謎だよね。バラバラにしないで、自分で育てるなりすればいいのに。


 ま、それでもどうせやらないだろうけどね。戦うなんて、めんどくさすぎる。適当に生きて、適当に死ぬのが一番だよ。


 さて、行きますか。


 僕は乗り物用マジックハンドに乗り込み、軽く最終確認をしてから我が家を旅立った。

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