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絶晩成型(リメイク)  作者: 咫城麻呂
第一章 中立都市ツァオベラー
12/16

1-11 残留思念と七つの大罪

 やっほー。千曳だよ。

 魔物が何故誕生するのかって、余り語られてなくない?

 え? そうでもない? ……そっか。


 ――――――――――――――――――――――――――――――


 その後少しして、昼食の時間になった。あべんしゃーの面々が燃え尽きていたことに焦燥を隠せない。


 真っ白だったのは主に魔法使いの二人で、ポワとセルは至って普通だった。……一般男性と小五ショタが並んでるのって、すごくシュール。


 まあ、僕の作った料理で復活したみたいだから、きっと午後の練習も頑張ってくれるだろう。


 何をしたのか聞きたかったけど、明日からこれに参加すると思うと怖くて怖くて、結局触れないでおくことにした。今思うと聞いといたほうが良かったね。心構えって大事。


「ふにゃ~」

「で、お前は何してんの?」


 椅子に腰掛けるなり頬ずえをついて顔をふにゃけさせる合法ロリ。授業はどうしたよ。


「いや~、あんなにおいし~のはひさしぶりだよ~。ゆ~とくんとおなじくらいかなぁ?」

「うむ。確かに邑人ゆうとと肩を並べるレベルだ。礼を言うぞ、少年。久しぶりに満足した。」


 チーガルの横に座るのはカルネさん。何回か名前を出した、彼女の仲間だ。


 西羊の種族で、頭に捻れた角が生えている。いかつい顔と、ベリーショートの髪の毛。ともすれば悪魔みたいだ。羊の悪魔なんて結構いるしね。


 外見は、服の上からでもわかる程の発達した筋肉を持ったガチムチおにーさん。ポワは細マッチョと言った感じだったけど、こっちは筋肉達磨だ。こんなに鍛えてるのにチーガルの方が強いと言う事実に驚きを隠せない。コイツ、それらしきもの全く見えないんだけど。


「しつれ~な~! あたしだってきんにくぐらいあるんだぞ~」


 どうやら怒っているらしいんだけど、全体的にふやけているせいで全く怖くない。と言うか、心を読むのやめてくれない? それも解析魔法?


「少年は顔に出やすいな」

「きんにくなさすぎ~」


 表情筋と顔に書いてあるって関係あるの? あったとしても、僕筋肉つかない体質だからどうしようもないんだよね。


 この話は終わりにして、ひとつ質問。


「それにしても、高級料理店とかで食事したりしないの?」

「基本はコイツの作る必要最低限に少し届かない料理だからな。外食はまずしない。コイツが疲れているときはその限りではないが」


 昨日の夕飯がそうだったけど、確かに微妙に足りてない。極端に野菜の少ないスープとか、味付けが全くない串焼きとか。抗議すると、自然界で満足できる料理が食べられると思っているのか! とまさかの反撃をくらった。


 気持ちはわかるけど、だからこそ普通の時は豪華で美味しいものを食べたくなるものじゃないの?


「これからしばらくは少年のりょ~りだね!」

「戻ったか。では、私は行くとしよう」

「いってらっさー!」


 今は休憩中らしい。食べたあとの運動はお腹に来るからね。


 彼女等のためにもう少し引き止めておこうかとも考えたんだけど、めんどくさいからパス。あべんしゃー、強く生きろよ!


「よし、やるか」

「よ! 待ってました!」


 えっと、魔物についてだっけか?


 魔物といえばファンタジーでお馴染みの獣害だね。


「その前に、残留思念グラッチポイントについて説明しなきゃ」


 またかよ! またグダるのかよ!


残留思念グラッチポイントってのは、まあ、残った考えだよ」

「ざっつ!」


 残った考えって何だよ! 説明する気ゼロだろ!


「生物がね、死ぬと、えっと……まあ、出るんだよ、今わの際が。それを、七つに分類したのが、残留思念グラッチポイント、なんだよ、うん、きっと、たぶん」


 てっきとうすぎる。


 これ以上師匠の醜態を晒すと僕の評価すら下がる気がするから、ここからは独自解釈で。


 生物が死ぬと、死ぬ間際に強く思っていた欲望が放出され、それは傾向によって憤怒、嫉妬、暴食、強欲、色欲、怠惰、傲慢の七つに分けられる。これが残留思念グラッチポイント。魔物の元だ。


 空気中に含まれているため、生物は常にこれを吸い込んでいる。


 通常なら何気ない行動の中で解消されていくのだが、濃度が濃いと徐々に供給が消費を追い抜き、やがてその欲望に体を乗っ取られていくことになる。これが魔物、もしくは魔人誕生のプロセスだ。


 完全に支配されると、脳が固まり欲望まっしぐらになる。こうなってしまうと治す方法はない。周りに被害を出さないうちに殺すしかない。


 また、魔物の出す被害によって空気中の残留思念グラッチポイントが減るらしい。これによって魔物は、無念を晴らす者、とも呼ばれている。まあ、一緒に無念を量産するんですが。


 森で生物を殺したときに、紫色の煙が出たじゃん? あれが目に見えるほど濃くなった残留思念グラッチポイントなんだって。あそこまで無念が溜まると、凝縮してクリスタルのようなものになるらしい。


 通称ダンジョン核と呼ばれるそれは、無尽蔵に欲望を吐き出し、紫煙は生物を形作る。だから、ダンジョンの魔物は死んだとき霧散してしまう。


 何も旨みはないが、被害は増える一方だから排除するしかない。ハイリスクノーリターン。なので、この世界で故意にダンジョン核を作るのは御法度なのだ。


 あと、高度な知性や体の大きな生物は、その分放出量も増えるらしい。ドラゴンが死んだ時には、視認できるほどの残留思念グラッチポイントが出たとかなんとか。


 ドラゴンもちゃんといるんだね。魔物化したトカゲかな? 一度見てみたい。


「魔物化すると見た目が変わるんだよ」

「あ、お帰り」

「自分から追い出しといてよく言う」


 ここからは師匠の説明をどぞ。


「魔物化初期には大した変化はないんだけど、それ以降も残留思念グラッチポイントを吸い続けたり、殺した生物から摂取したりすると、少しずつ見た目に変化が現れるんだ。角が生えたり足が発達したりね」


 逆に言うと、それまでは動物と大差ないわけで、小動物だからと子供が戯れていたら殺された、なんて話が結構あるらしい。


「あと、吸い込んだ欲望でも変化が出るよ。基本的に、一種類の欲望を吸い続けたほうが強くなるんだ。こうなった魔物を、大罪ディザイアって呼ぶよ」

「基本的って?」

「怠惰が動くとでも?」

「あぁ……」


 たとえ大罪ディザイアでも、動かないんじゃねぇ。


「まあ、睡眠を邪魔されないために奮闘する場合もあるけど」

「だめじゃん」

大罪ディザイアなんて基本出ないよ。出たら国が滅びるから」


 軍隊規模で強者が編成され、決死の思いで倒しに行くんだとか。


「楽しかったなぁ。あれは確か、ヒュドラルギュルムだったっけ?」

「いや知らないよ」


 台風の中に飛び出していく子供か! いやまあ、そんだけ強いんだろうけど。


 と言うか、昔出たことあるのか。よく残ってるな、この国。


「ま、ホントに希だから、気にしなくておっけー」

「そういうのフラグになるからやめいや」


 どうせ近いうちに出てくるんだろうなぁ。異世界物のお決まりとして。


「魔物についてはこんなもんかな」

「次は?」

「……神話」


 なんでそんなに嫌そうなの?


「だってあれクッソ長いんだもん! めんどくさいったらありゃしない」


 いつもどおりのチーガルで一安心だよ。

誤字脱字の指摘、感想等お願いします。


次回は神話!

この世界はなぜ出来たのか?

邪神とは一体なんなのか?


乞うご期待!

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