国営騎士団 入団試験 2
騎士団員
「2番前へ」
騎士団員に呼ばれ、サラは試験場にあがる。
騎士団員
「さあ武器を選べ」
試験場には剣、弓、銃、ハンマーなど様々な武器が置かれていた。
受験者はここから好きな武器を取りだし、騎士団員と戦うことになる。
サラ
「………」
サラは昨日の出来事を思い返す………。
昨日イトやララたちと会話していた時のことだ。
イト
「あ!!」
ララ
「………どうしたの?」
イト
「忘れてた………」
カリア
「何を忘れてたの………?」
イト
「入団試験で武器を使う試験があるのだが………」
カリア
「うんうん………それで?」
イト
「サラって武器使えるのか?」
ララ
「………」
「どう?サラちゃん………」
サラは大きく首を横にふる。
カリア
「え……武器使わないといけないの?」
イト
「ああ………そもそも人間なら誰しも武器を使うからな」
ララ
「格闘術得意な人だっているでしょ?」
「必ず武器を使わなきゃいけないなんてことは無いんじゃないの?」
イト
「それはそうだが………そもそも格闘術は必須なんだよ」
「もはや出来て当たり前」
「格闘術だけでなく、武器の扱いも審査の対象になるんだ」
ララ
「え………そうなの?」
イト
「格闘術はどちらかと言えば護衛するためのものなんだ………もちろん拳で魔物たちと対峙することはできる………」
「しかし、国営騎士団の所有する武器は格闘術を遥かに越えた力を持っているんだ」
「魔女研究所によって開発された魔力が籠った武器なのだ………国営騎士団ではこの武器を使うことを義務づけられている」
「これを使えば通常の戦闘力に増して攻撃力を上げることができるからな」
カリア
「そうなんだ………」
イト
「騎士団に入ったら必ず武器を持つことになる」
「だから試験でも武器を使用できるか試されるわけだ」
「俺も騎士団に入るために剣を磨いてきたんだ」
ララ
「そうだったんだ………でもサラに武器の使い方を教えるとしても間に合うかな………」
イト
「剣ならば教えてやれるが………サラ自身どんな武器が合うのかわからないんだよな」
「人によって合わないものもあるからな」
「こればっかりは探さないといけない」
カリア
「剣でいいんじゃない?」
「だってもう明日試験なんだよ!?」
イト
「というか………サラは剣握れる?」
サラ
「うう………」
スプーンすら持てないサラにとって剣を持つことはハードルが高すぎた………。
イト
「武器を持つのは難しいだろうからこういうのはどうだろう」
イトは魔方陣から鉄甲鉤を取り出した。
ララ
「なにこれ!?」
イト
「これは手につける武器だ」
イトは自ら手に鉄甲鉤を着けてサラに見せる。
イト
「これなら手で武器を持つ必要もない」
ララ
「爪みたい」
イト
「これで相手を引っ掻いたり引き裂いたり突き刺したりすることができる」
サラ
「………ゴツい」
イト
「お前そんな言葉まで覚えたのか」
ララ
「これなら戦えそう?サラ」
サラ
「うん多分」
イト
「まあサラの場合、手の爪で相手を引っ掻いたりしてたから鉄甲鉤と相性がいいと思う」
カリア
「なるほど!同じように戦えるってわけね」
イト
「ちょっと試しにかかってこいよ」
サラ
「ワカッタ」
サラは鉄甲鉤を取り付け、イトへ向かっていく!
ザスッ!
イトは剣を抜き、サラの攻撃を防いだ。
イト
「そんなに大きく振りかぶらなくてもいいぞ」
「そいつは割りと切れ味があるからな」
「もう一度来いよ」
ガ!ガ!ガ!
サラは果敢にイトへ切り込んでいく!
イト
「スピードはあるが、やはり技術がないな」
「ただ動き回っても仕方ないぞ?」
ガ!ガ!
サラとイトはその後も何度か刃を交えてた………。
サラはイトとの練習で鉄甲鉤の使い方が以前より大分ましとなった。
騎士団員
「2番早く前へ」
サラは現実に意識を戻し、鉄甲鉤を身につけ舞台へとあがる。
騎士団員
「鉄甲鉤………?珍しいな」
「よし!かかってこい!」
サラは足を曲げて、地面を蹴り上げる!
ビュッ!!
一気に騎士団員の目の前に飛び込んだ!
サラは風を切る音が聞こえるほど素早かった……!
そしてサラはそのまま騎士団員の腹にタックルをかます!
騎士団員
「ぐけ!!」
騎士団員はぶっ飛び、壁に体を叩きつけられた!
騎士団員は倒れ、意識を失う。
周りが騒然としている……。
騎士団員
「おい!大丈夫か!?」
他の騎士団員が駆け寄り、倒れた騎士団員に声をかける。
騎士団員
「……気絶してる」
周りがどよめく……。
サラはきょとんと立ち尽くしていた。
イト
(………)
イトは遠くからサラの試験を見ていた。
イト
(サラに武器はお飾りだな………)
サラとイトはこの後無事第一試験を通過し、
続いて第二試験、第三試験も通過した。
そして最終試験が始まった………。
ここまで残った志願者は約8千人ほどだ。
従来の入団数は約5千人ほどであり、
ここから3千人ほど試験で落とされる。
騎士団員
「それでは最終試験を行う!!」
「試験内容を発表する」
従来であれば最終試験は志願者同士の力比べだ。最終試験まで残った志願者の中からより強いものを入団させるのが目的だ。
しかし、今回の最終試験はいつもとちょっと違う内容となっていた。
騎士団員
「最終試験は魔法のみで試合をしてもらう」
周りがどよめき始める………。
イト
(なるほど………魔法のみか)
志願者
「すいません!武器は使っちゃダメなのですか!?」
志願者が騎士団員に質問をした。
騎士団員
「武器の使用は不可」
「そして物理的な攻撃は一切禁止とする」
「魔法以外で攻撃を使用した場合は即失格とする」
志願者
「ばかな………」
志願者
「嘘だろ………魔法なんてほとんど使えねぇよ」
騎士団員
「それでは試合の一覧表を今から表示する!」
「自分の番号が記載されている会場へ向かうこと!」
騎士団員の背後に大きなスクリーンが写し出される。そこには志願者たちの番号と試験会場が記載されていた。
イト
「………おおサラ」
「お前と一瞬の会場だ」
サラ
「ホントだ」
イト
「そういえばお前………魔法使えるよな?」
サラ
「使ったことない」
イト
「そうだよな………この試験内容は想定してなかったしな………」
「俺も魔法は使ったことは無いな………どうしたものか」
イトとサラは普段物理的な攻撃をメインとしているため、ララやカリアたちのように魔法攻撃を使ったことが無いのだ。
イトもサラも魔女ではあるが、彼女たちは無意識に身体能力向上の魔法をかけて戦ってきたのだ。彼女たちが能動的に魔法を使えるのか怪しいのだ。
イト
「一応俺たちは魔女だし………何とかなるよな?」
サラ
「でもどうやって魔法使うの?」
イト
「………まあ気合いで」
サラ
「ララはどうやって魔法出してるんだろ」
「教えて貰えばよかった」
イト
「ちょっと今出せるか試してみるか」
イトは両手に力を入れて魔法を出せるかどうか試しにやってみた。
イト
「………出ないな」
「こうか?」
イトはあれこれ試しにやってみるが、魔法は一ミリも出ない。
イト
「やばいな………」
騎士団員
「2番、239番!早く会場へ移動しろ!」
「ボケっと突っ立ってるな!」
イト
「仕方ない………行くぞサラ」
イトとサラは試験会場へ進みながら魔法を出せるかどうか試した。
彼女たちは魔女のくせに魔法を使えない。
魔法を使えない魔女二人は会場に近づくにつれ不安が徐々に強まっていった。




