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国営騎士団 入団試験 1

オードリーは魔女研究所へ今後の魔物の対策について打ち合わせをすることになっていた。


彼が宿屋を出て馬車に乗り込み、魔法研究所へ向かう途中、騎士団養成所の前で大勢の人が集まっていることに気づく。

そこには大きく旗が掲げられており、「第83回騎士団入団試験」とでかでかと表記されていた。


オードリー

(今日は騎士団の入団試験か………)


騎士団は年に2回入団試験を行っている。

毎年国内から大勢の入団志望者が集う。


オードリー

(これから騎士団がどうなるのかわからないと言うのに………こんなにもまだ人が集まるのか)


昨今の国営騎士団はめぼしい活躍はなく、ここ最近はフンボルト軍に活躍の座を奪われているのだ………。

昨日、ゲッカ国王の提案によりフンボルト軍への軍事委託が国会で可決した。

国の軍事を担ってきた国営騎士団はフンボルト軍にとって変えられそうになっているのだ………。

そんな中でも、騎士団の入団試験は開催され、多くの志願者が集っていた。

オードリーは憂き目で入団試験に集まる人たちを見ながら、その場を過ぎ去って行った。


今回の入団試験の志願者は総勢約200万人。

一次試験から四次試験を通過すれば入団試験の会場にたどり着くことができる。今会場にいる人数は約1~2万人ほどだ。

そしてその中にはイトとサラの姿があった。

彼らは国籍も本籍も不明であるが、サカの協力もあり、でっち上げた経歴で試験を通過してきたのだった。


イト

「割りとまだ人気じゃねーか……」


イトは昨今の騎士団の失態から志願者が減ると踏んでいたが、そんなことはなく毎年と同様に多くの志願者が集っていた。


イトはこの試験を受ける前に一度サカとコンタクトを取り、アボットで起きた出来事について情報を共有していた。


フンボルト軍が圧倒的な力を持っており、騎士団の存在が危ういということ。そして王宮も国会もフンボルト軍に軍事を任せていく方向で事を進めているということ。お互いに様々な情報を共有し、そして会話の中でいくつか疑念が生まれた。


何故フンボルトの軍隊が我が国に介入してきたのか。そして何故王宮はフンボルト軍の介入をあっさり許したのか。そもそもフンボルト軍が何故これほどの力を持っているのか。魔女であるイトですら苦戦した魔物を簡単に排除したことに違和感を感じていたのだ。そして国会も魔女研究所も国営騎士団もフンボルト軍について何一つ知ることができず、まるで何か裏があるのではないかと思わせることが多いのだ。


イトはもう一度サカに協力をお願いした。

王宮しかりフンボルト軍について調べるために国営騎士団に入団することを……。

イトは反対されると思っていたが、サカからは承諾の返事が返ってきたのだ。

サカはサカでフンボルト軍に対する王宮や国会の態度に違和感がぬぐえないのだ。そして今の国営騎士団では魔物に対抗できないとわかったため、やはり少しでも戦力を増やしたいと考えていた。イトと名乗る女性が本当にイトであるかわからず、もしかしたらイトを装った魔女が自分を騙して国を内部から破壊するかもしれないとも考えていたが、彼はこの女性をイトであると信じて騎士団の入団を手伝うことにしたのだ。


この会合の後、サカはイトとサラの経歴を異国から来たものとしてでっち上げ、自分の推薦として二人を入団試験に無理矢理参加させた。


イトとサラは入場手続き済ませ、試験会場で待機をしていた。


イト

「サラ問題無かったか?」


サラ

「うん……」


サラはつい最近まで全く言葉が喋れず、文字すら読めなかったが、ララの特訓のお陰で日常会話レベルまで到達することができたのだ。


サラは難しい言葉はよくわからないが、何とか入場手続きはできたようだ。


イト

(サラの場合、筆記もでっち上げで来ちゃったからな……大丈夫かな)


イトがあれこれ心配している中、国営騎士団の者が一人教壇に立ち上がる。


騎士団員

「これより第五十三回国営騎士団入団試験を行う」


イト

(もうあれから7年前か……)


イトは7年前に入団試験を受けていた。

結果は筆記も実技も二位で合格している。

ちなみに一位はサカであり、七位にクエリがいた。

イトはその頃を思い返し、懐かしく感じていた。


騎士団員の説明が終わり、続いて騎士団団長の一人であるコッホが教壇にあがる。


コッホ

「入団希望者の諸君!今宵はよくここに来てくれた!!」


「昨今ではご存じのとおり魔物による被害が拡大し、魔女による脅威も大きくなっている」


「こんなご時世だからこそ!今こそ我が国営騎士団の力が必要とされている!」


「しかし、今の魔物はかつてとは比べ物にならないほど脅威であり、はっきり言って我が騎士団の現状はとても厳しい………」


「だが、我々は国の守護神だ!日々鍛練に励み、そして日々成長して国のために尽くし、国を護っていかなければならない!」


「今はフンボルト軍が我が騎士団の下に着き、我が騎士団は魔物や魔女を駆逐する存在へと変貌しておる」


「入団志望者諸君!是非ここで力を発揮し我が騎士団の一員となって国を………いや国民を……我々の大切な家族を守るソルジャーとなってほしい!」


「健闘を祈る」


コッホは教壇から降りる……。


イト

(フンボルト軍が下に着くと言うか……逆にならなければいいがな)


騎士団員

「それでは第一試験を行う!」

「会場は番号ごとに振り分けられている……入場時に配られた番号を見て該当する会場へ整列」


イト

「俺は239番だ……お前は?」


サラ

「2番」


イト

「え……マジで?早いな」

「2番ならあっちだ」

「俺はこっちに行くから……頑張れよ」


サラ

「ワカッた」


サラは二本足でぎこちなく歩き、会場へと進む。


イト

(大丈夫かな……)


本日の試験は第三試験まであり、どれも実技試験となる。


第一試験は自分の得意な武器を使用して騎士団員と数分戦い、戦闘力を測る内容となっている。

参加している騎士団員は皆上位者だ。

かつてイトもこの試験の審査員として参加していた。


イト

(もう一度この試験を受けることになるとはな……)


入団志願者は剣を武器に騎士団に向かっていく。


イト

(太刀筋はまあまあかな)


イトは前の番後の入団志願者の戦いぶりを見ていた。


試験官

「よし……そこまでだ」

「次239番前へ」


イト

(やっと出番か……)


イトは剣を抜き取り、試験官へ立ち向かっていく。

イトと試験官の剣がぶつかり、つばぜり合いとなる。


試験官

(この女………なんて素早さだ)


イトは力強く剣を弾き、試験官を剣と共に凪ぎはらった!

試験官はあまりの力強さに剣を落としてしまい、さらに尻餅をついてしまった。


試験官

(!?)


試験官が立ち上がろうとした時、試験官の額に剣先を向けられる。


イト

(………未熟者め)


イトは剣を引き、試験官に手を差しのべる。

試験官はイトの手を取り、立ち上がった………。


試験官

(この女………相当の手練れだ)

「よし……次!240番前へ!!」


イトは剣をしまい、すたすたと第一会場を立ち去る。

周りにいた志願者や試験官は唖然として立ち尽くしていた。

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