表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/374

約束された惨状1

ララ

「はい!これは何と読むでしょう!」


ララはリンゴのイラストをサラに見せる。


サラ

「ンゴ!」


ララ

「ん~ちょっと足りないかな?」

「ンゴの前に一文字あるんだけど」


サラ

「マンゴー!!」


ララ

「ほしい!!」


イト

「………楽しそうだな」


カリア

「すごい………親子みたい」


サラは言葉を覚えるためにララの指導を受けている。


ララ

「はい!これは何でしょう」


ララはトランヴェルを両手で抱えてサラに向ける。


サラ

「とらー………」


ララ

「とらー?」


サラ

「とらんベッド!!」


ララ

「ほしい!!」


トランヴェル

(私を出題するな)

(というかさっきから何一つ正解してないじゃないか!?)


ララ

「正解はトランヴェルでしたー!」


サラ

「トランユルー」


トランヴェル

(言えてないし………)


カリア

「ヴェって発音しにくいよね」

「サラにはまだ難しいと思う」


ララ

「そっかあ………トランヴェルは問題として出しちゃいけなかったかあ」


ララはトランヴェルを机に下ろし、スケッチブックにペンで絵を描き始める。


トランヴェル

(………やれやれ)


トランヴェルは机に座り込み、羽を大きく伸ばす。


カリア

「モップみたい」


羽を伸ばしたトランヴェルの姿は確かにモップのような形をしていた。


トランヴェル

(失礼な………)


イト

「トランヴェルって名前長いし言いにくいからモップにしようか」


カリア

「モップ!いいね」


トランヴェル

(よくねえよ!?)


ララ

「サラちゃんサラちゃん!ほらあれ何だ!」


ララはトランヴェルへ指を指す。


サラ

「モップ!!」


カリア

「正解!」


トランヴェル

(正解じゃねーよ!!?)


トランヴェルたちは和気あいあいと話をした。


一方国会では今日も騒がしく無駄に議論を広げていた。


議員

「自国の防衛をフンボルト軍に任せるなどあってはならない!早急に騎士団を強化するべきだ!!」


議員

「現状をよく見ろ!フンボルト軍無しでは魔物に立ち向かうのは困難だ!!」


議題はやはりフンボルト軍の介入についてだ。

ゲッカ国王の言う騎士団強化派とピレネー元国王の言うフンボルト軍委託派との争いが繰り広げられていた。

今日も結論は至らず議論は終了。今後の体制について何も決まらないまま日々が過ぎていった。


国会から100キロ程離れた場所に国営のアポロ病院がある。そこに魔女狩隊のナハンジ、ミハエル、サカは入院をしていた。


サカ

「………生きてる」


コンコンコン………


ドアのノック音が聞こえる。


ガチャ………


部屋にクエリが入ってきた。

どうやらお見舞いに来てくれたようだ。


クエリ

「あ………起きた?」


サカ

「………クエリ」


クエリ

「良かった無事で………サカが一番重症だったから心配したよ」


サカ

「………そうなのか」


サカは昨日の出来事を思い出す………。

ナハンジとミハエルは倒れ、魔物にやられそうなところをイトに助けてもらい、そのまま気を失ったのだ。


サカ

「魔女教会はどうなった?」


クエリ

「それがね………」


クエリはサカに魔女教会の出来事を話した。


サカ

「………フンボルトだと?」


サカはフンボルトと聞いて不可思議に思い、クエリに問いかける。


クエリ

「うん私もびっくりした………いきなりフンボルトの軍隊が助けに来たなんて信じられない」


サカ

「今騎士団は………どうなってる?」


クエリ

「混乱してるよ………」

「それは騎士団の皆だけではなく、統括も議員たちも皆」


サカ

「フンボルト軍を用意したのは誰なんだ………」


クエリ

「指導者のミドラスとガラウだよ………」


サカ

「ミドラス………ああ……あいつか」

「奴等が筆頭なら王宮とは別の意思で動いてるな」


クエリ

「ミドラスとガラウって元々ナルシーの民なんだっけ?」


サカ

「そう……あいつらの世代はまだ3ヵ国戦争を引きずっているからな」

「奴等がフンボルト軍を招いたことに納得は行く」

「しかし、いくら指導者とはいえ国王が黙ってはいないと思うが……」


クエリ

「うーん……わからない」

「でもフンボルトが来てくれたお陰で何とか助かった……」

「私たちだけではきっと殲滅は難しかったと思う」


サカ

「情けないことを言うな……お前も魔女狩隊の端くれだろ?」


クエリ

「……ごめん」


サカ

「それじゃあ上の奴等は大騒ぎしてるのか」


クエリ

「うん……今はフンボルトに軍を委託するかどうかで騒いでる」


サカ

「委託……だと?支援ではなくて?」


クエリ

「うん………ピレネー閣下が指示を出したみたい」


サカ

「ピレネーが?嘘だろ?」


クエリ

「嘘じゃない………本当」

「でも国王は反対してるわ。このままだと王宮だけではなく国家そのものが分裂する兆候が見えるよ………」


サカ

「………冗談じゃない」


サカは起き上がり、体を起こす。


クエリ

「まだ無茶しちゃダメだよ」


サカ

「じっとしてられないな………マジで」

(恐らくイトは生きているだろうな………もう一度あいつに会って何が起きたのか聞かねばならない)

(本当にフンボルト軍が援護に来たなんて………信じられん)


ピロロロロ………


クエリの横に魔方陣が広がっていく。


クエリ

「緊急着信だ………なんだろう………」


クエリは魔方陣に手を触れ、着信に応答する。


クエリ

「もしもし………クエリです」


『クエリ殿………早急にアサダへ向かってほしい』


クエリ

「アサダですか?一体何が………」


『現在アサダとアボットに魔物が出現した』

『至急に向かってほしい!』


クエリ

「!?」


サカ

「どうしたクエリ?」


クエリ

「アサダとアボットに魔物が………」


サカ

「なんだって!?」


クエリ

「いいサカ。安静にしてなさいよ!」

「またお見舞いに行くから」


クエリは急いで病室を出て、アサダへと向かう。


一方国会では大混乱と陥っていた。

アサダとアボットの結界が崩れ、魔物が大量に侵入したのだ。


議員

「騎士団はどうしている!?至急退治に向かえ!」


議員

「フンボルトの介入を要請しろ!」


議員

「フンボルトを入れるな!騎士団をまわせ!!」


オードリー

「………」

(なんてことだ………こんな時に………悪夢だ)


一方アサダでは市民が魔物に襲われ、地獄と化していた。


「助けて!!誰か!!」


「うわああああ離せ!!離せ!!」


市長

「結界師は何をしている!?」

「騎士団はまだか!!?」


『現在、結界師と連絡が取れません!?』

『騎士団は今こちらへ向かってきているそうです』


市長

「急がせろ!」

「おい!!脱出の準備は整ったか!?」


市長は叫ぶが誰からも返事が帰ってこない。

そして市長が振り向けば、大勢の魔物たちがこのフロアにいる市民を食い散らかしていた。


「た………助けて!市長!!」


市長

「ひぃッ!?」


市長は恐怖のあまり奥の部屋へと逃げ込む!


「し………市長!!………があああ」


市長

「冗談じゃない!こんなところで死ねるか!」


市長は地下にある緊急シェルター行きのエレベーターに乗り込み、ドアを閉めようとする。


ガッ!


エレベーターのドアを閉めようとしたところを魔物が手でドアを抑えた。


魔物

「逃がさないよ?」


市長

「はッ………ひッ………」


魔物はエレベーターに乗り込み市長を食い殺して、エレベーターで地下へ降りる。


チン!


エレベーターは地下へたどり着き、扉を開く。


魔物

「ほお~」


魔物は地下へと降りるとそこには大勢の人間がいた。


「ま………魔物が入ってきたぞ!?」


「うわああああ!?」


魔物

「こんなところに隠れていたのか………うまそうな肉どもだ」


魔物はエレベーターを降り、地下にいた数十人の人たち全てを食い殺した………。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツイッター:@hukurai_eichi
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ