アポロの図書館2
トランヴェルたちがアポロに到着してから一週間が経つ。
彼らはアポロに着いたものの、何をすればいいのかわからないでいた。
まず彼らは情報収集のために図書館へと行くことにしたのだ。
トランヴェルは図書館でこの国のことや王宮について知りたいと考えていた。
トランヴェルは最初イトとサラを連れて図書館へ向かおうと考えていた。というのもララやカリアは国から追われている身のためどうしても外へ連れていくのは難儀だと考えていた。しかし、イトは図書館よりも魔女狩隊員と接触したいと言い出し、彼は彼で別行動を取ることになった。そしてカリアも家の中にずっといるのは嫌だとわがままを言い始め、仕方なく一緒に図書館へ行くことになった。
カリアの顔がばれないように帽子とカツラを被らさせ、共に行動することにしたのだ。
トランヴェルたちはほぼ毎日図書館へ引きこもる。トランヴェルが読みたい本をカリアが本棚から取りだし、トランヴェルは羽を使ってページをめくり本を読む。トランヴェルが選ぶ本はほとんどがアポロにまつわる本だ。
アポロ市の人口総数は約600万人。ツクヨミ国では一番人口の多い都市だ。300年前にツクヨミ一家がこの国を支配し、独裁国家として成り立つ。それから100年後、戦争が何度か起こり、ツクヨミ国は一度3ヵ国に分裂する。それから60年後、3ヵ国で戦争が起き、ツクヨミ一家の率いるアポロ国家が勝ち、3ヵ国を統一し再びツクヨミ国家として成立する。しかし今回は独裁政権が廃止され、国民から指導者を選抜し、ツクヨミ一家と指導者たち共同で国を動かしていくことになった。そして40年後の現在に至る。
現代は魔物や魔女の出現により不穏な時代となったが、戦争も無く、比較的平和な世界が訪れている。
トランヴェルは最初この国の歴史について何冊も何冊も本を読んでいたが、最近は歴史だけでなく、魔女にまつわる文献もあさるようになっていた。初めはカリアに本を取って貰っていたが、次第に自分の足で本を取り出せるようになり、自らどんどん進んで本を読んでいく。
トランヴェルは魔女研究の本を片っ端から取りだし、魔女について調べる。
『魔女の成り立ちー人類と魔女の歴史』
著作者ギルド・マフィ
魔女が初めて人類に姿を現したのは約200年前だと言われる。ツクヨミ国では約140年前に初めて魔女と遭遇した。
140年前の3ヵ国の戦争で破れた国家の残党が魔女と出くわし、一瞬で滅ぼされたという。
その後、再びツクヨミ国家が成立してから、何度か魔女が姿を現しては村や町を荒らし、社会問題に発展していた。しかし、ここ数年魔女が現れなくなり、人類は魔女の驚異を忘れつつある………
トランヴェル
(………)
トランヴェルは次々と魔女に関する本を読んでいく。
『魔女の魔法粒子』
著作者ドラフ・ヴァレンチノ
つい数百年前まで人類は電気、ナノエネルギーを主に使用していたが、ここ数十年では魔法が主流となった。銃や剣を使うものも年々減り、魔法を使う若者が増えてきた。そして魔法使いが増えることと比例して魔女による被害も昨今増え続けている………
………魔女の魔法には人間の魔法と同様な因子が含まれている。魔法使いは血中に魔法の元となる魔法粒子を生成しているが、それと同様に魔女の血中にも魔女粒子というものを生成している。魔女粒子はほぼ魔法粒子と同じ成分でできているが、1割ほど魔法粒子には無い成分を含んでいる。魔女粒子にはアンチナノエネルギーという成分を保持しており、このエネルギーによって莫大な魔力を生成することを可能にしている。アンチナノエネルギー成分とはナノエネルギーとは対称となる破壊エネルギーの一種であり、この破壊エネルギーが魔女の魔法を増幅させている。我々人間にはこのような破壊エネルギーを血中につくることはできない。
トランヴェル
(魔女粒子………)
(ララを魔女と認定できたのはこの粒子を計ることができたからか………)
(人間と魔女の違いはこのアンチなんたらがあるかないかの差なのかもしれない………)
(もしかしたら私が彼女たちを魔女にする時、このアンチなんたらを彼女たちに与えているのか?)
(そもそもナノエネルギーって何だ?)
トランヴェルはもっともっと本を読み、この世界について知ろうと情報収集する。
『魔法の起源 命あるものが放つ未知なるエネルギー』
著作ドラフ・ヴァレンチノ
魔法の存在が認識されたのは約150年前。
人類はそれまで機械やナノエネルギーに依存しており、道具の延長としてそれらを扱っていた。そして魔法粒子という物質に遭遇してから人類は機械離れをし、自らの魔力であらゆるものを創造できるようになった。スリランカ博士が率いる研究隊がカグヤの不死山にて魔不死石を発見した。その石は触れれば粒子まで砕けちり、強く握れば手の中に溶け込んでしまう物質だった。世界で初めて体内に取り入れられる石として注目を浴びた。それから何十年も渡って魔不死石の研究は続き、その石の効果は人類を大きく変化させるほど素晴らしい効力を持っていた。ご存知の通り魔不死石を取り入れた人間は自ら想像したものを手から生成することができるのだ。
体内に取り込めば取り込むほど、生成するものを大きくしたり、増やしたりすることができる。この魔不死石の発見により人類は大きく文明を変化させた。かつての機械やナノエネルギーの生活から、魔不死石による生活へと変化した。この魔不死石こそ魔法の根源であり、以後魔法使いには欠かせない物質となった。
トランヴェル
(魔法使いはこの魔不死石とかいうやつを取り込んで魔法を使っているのか)
(………今では魔不死石無しでも自分の力で魔法をつくれる……か。ふーん……)
トランヴェルは飽きることなく、次々と本を漁る。
トランヴェル
(魔女や魔法に関する研究はドラフ・ヴァレンチノの本ばかりだ)
(他の著者の本を読んでみたいな)
トランヴェルは本を探していると聞いたことのある名前が目に入った。
『魔法防御に関する研究 魔法効率化の教科書』
著者ガゼル・ブロンド
トランヴェル
(ガゼル………カリアの父)
(本を出していたのか………)
(カリアは今外でサラと散歩してるし………読んでみるか)
トランヴェルはガゼルが書いた本を読んでみる。




