魔女研究所1
ここは魔女研究所。ペルー村事件以来研究施設は拡大し、人員も増加していた。そしてドラフなき今、リリィが後釜として魔女の研究を進めていた。ペルー村事件の魔女との戦闘で採取した魔女粒子を分析し、魔女討伐のために研究を繰り返していた。
リリィは調べる……魔女の存在とは何なのか、そもそもどこから来たのか、彼女は一人図書館にこもって魔女を調べていた。
人間が魔女を認識したのは約2百年前だと言われている。
世界で初めて魔女の存在を知ったきっかけは東洋3ヶ国事件からだ。
当時東洋にある3ヶ国は戦争していた。
各国の軍隊が三つ巴をしていた時、突如前触れもなく一人の女性が現れ、圧倒的な魔力で3ヶ国の軍隊が壊滅したという。
当時は魔女の存在など認められておらず、戦争の激化により壊滅したと考えられていたが、後程の調査によれば戦場にはあり得ないほどの魔法粒子が測定され、さらに生き残った兵士たちの証言から魔女の仕業である可能性が浮上した。
それから翌年、大国ルナの国民が一夜にして消え去ったという事件が起こった。今回も生存者は声を揃えて一人の女性に滅ぼされたと言う。それから魔女は徐々に人間の前に姿を現す。
魔女の存在が明らかになったのは約150年前に起きたジョウガの魔女事件からだ。先進国ジョウガで一週間に渡って多くの国民が一人の女性によって拉致される事件があった。総勢200名ほど行方不明となり大騒ぎとなったが、一ヶ月後拉致された国民が一斉に帰ってきた。しかし帰ってきた国民の中で何人かは次々と爆発し周りにいた国民を巻き込み、大悲惨な事件となった。
爆発しなかった国民によれば、魔女と名乗る女性にこう言われたそうだ。
「ランダムにこの中の誰かの体内に爆弾を仕掛けるから」
そう言い渡されてから記憶を失い、気がつけば元いた場所に帰っていたという。この事件から魔女の存在は世界中に広がり、
人類の大敵として認識されるようになった。
しかし、ここ数十年では世界的に魔女の被害は数件規模であり、現在ほとんどの国が魔女の存在を忘れつつあるのだ。
また我が国の魔女の被害は他国に比べたら少なく、直近では約30年ほど前に氷山で交戦した事例のみだ。過去の事例どれもだが、交戦しては魔女を取り逃がしている。魔女狩隊は過去100年に渡る歴史を有しているが、直接魔女と戦って勝利をしたことがない。むしろ交戦すれば被害が多く、歴史書には取り逃がしたと記載されているが、実際は魔女に見逃してもらってたのではないかと考える研究者もいる。真実はどうあれ、我が国が魔女を倒したことは一度もないのだ。
魔女の厄介なところは人間社会に潜んでいたとしても容姿が人間の女性と同等であるため見た目では判断がつかないことだ。
見つけるのは非常に困難であり、唯一の方法としては血液から魔法粒子を測定することである。
リリィ
「………もうこんな時間」
本日リリィは官僚のオードリーと打ち合わせをすることになっている。先日の魔女教会から送られてきたペルー村の魔女について検査結果を伝えることが目的だ。そして魔女狩部隊のナハンジも魔女教会の調査結果を伝えることになっている。
リリィは図書室から出て、会議室へと向かう。
午前10時。魔女研究所の第一会議室で研究長のリリィと国の官僚オードリー、魔女狩隊隊長のナハンジ、同じく魔女狩隊のクエリ、サカが集まる。
リリィ
「遠方からわざわざお越し頂いて誠にありがとうございますオードリー様」
オードリー
「いえいえ………リリィ君も大変だねドラフが行方不明になってからいきなり研究長だもんね」
リリィ
「毎度報告に不備があり申し訳ないです………ドラフさんが今までどれだけ大変だったのかよくわかります」
ナハンジ
「ドラフさん………今頃どこにいるのやら」
オードリー
「彼が失踪してからかれこれもう3ヶ月ぐらい経つのか」
ナハンジ
「そうですね………きっとどこかで生きているはず」
サカ
「確かに魔女に殺されるようなタマじゃ無い」
オードリー
「彼は優秀だったからね………何でも一人でこなすタイプだったから後釜が育ちにくかったんだよ」
「いきなりで大変だろうけど、彼がいなくてもこの研究所を動かしていかなくちゃいけないからね」
「頑張って」
リリィ
「はい………精進して参ります」
オードリー
「早速だけど今回の事件について報告をもらおうか」
「まずはリリィ研究長から報告お願い」
リリィ
「はい」
リリィは資料をオードリーたちに手渡し、今回のペルー村の魔女の遺体について報告をする。
リリィ
「魔女教会から送られてきたペルー村の魔女ですが、以前ご報告した通りペルー村の魔女の死体であることは間違いありません」
「こちらの資料をご覧下さい」
「ペルー村で搾取したララフォー・メールの魔女粒子と教会から送られてきた死体の魔女粒子が100%合致しております」
「またカリア・ブロンドの魔女粒子も同様です」
オードリー
「………ペルー村の魔女は死んだということか」
リリィ
「はい………間違いないかと」
オードリー
「しかし魔女狩隊の報告によれば、これは本物の魔女の遺体ではないと聞いている」
ナハンジ
「はい………その件についてですが」
「魔女は過去に何度も自らの死体を作り上げた実態がございます」
「奴等は自分の死体も簡単に複製することができます………」
オードリー
「つまり奴等は自らの死体を作り上げ、魔女研究所に差し出し、逃亡したと?」
ナハンジ
「その可能性が大いにあり得るかと」
リリィ
「研究所としてもその可能性はあると考えております」
「過去の研究資料にもナハンジ殿がおっしゃった事例が記録として残されておりました」
「次のページにその詳細を記載しております」
オードリー
「………」
オードリーは過去の資料を読む。
そこには他国での事例がたくさん記載されていた。
オズワール帝国では帝国軍と魔女が衝突し、何とか魔女を仕留めることかできた。しかし実は魔女が死んだフリをしただけであり、魔女は生きていた。そしてオズワール帝国の内部に魔女を運んだ際に魔女が突然立ち上がり帝国軍を内部から皆殺しにしたという。
キサラキ国でも魔女と戦闘し、勝利をおさめたものの、魔女の死体は偽物であり、後日魔女に再び襲われるという事例もあった。
ナハンジ
「魔女は心臓が停止しても顔を吹き飛ばしても死ぬことがありません」
「奴等はもしかしたら死そのものすら操れるのかもしれないのです」
オードリー
「そんな………あり得ん」
ナハンジ
「今回も奴等はその場しのぎをするために死体を作り出したに違いありません」
「そんな都合よく魔女教会が信仰している魔女を殺して差し出すなんてしないはず」
「それに奴等とて人間………我々ですら倒せない魔女を奴等が倒せるとは思えない」
オードリー
「それは同意だ………」
オードリーは頭を抱えている………。
過去の事例をみればみるほど魔女という存在はあまりにも驚異的なのだ。
人類がどうにかして勝てるとは微塵たりとも思えない。
オードリー
「過去の事例通りなら魔女たちは必ず我々にキバを向けてくる………」
リリィ
「ええ………その可能性は十分にあり得るかと」
ナハンジ
「リリィ殿からの説明は以上になりますかな?」
ナハンジはリリィから貰った資料を目繰り上げ、今のページで資料が終わっていることを確認した。
リリィ
「ええ………私からは以上です」
ナハンジ
「それでは引き続き我々魔女狩隊から魔女教会の調査について報告いたします」
ナハンジの隣にいたクエリは魔方陣から映像装置を生み出し、
会議室の上空に映像を写しだす。
そこには魔女教会の内部が写し出されていた………。




