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自然な摂理

場面は魔女マベルへ移る。

脱け殻となったトランヴェルの体を抱えながら村の様子を見ていた……。


「……あらら…なんか想像してたのと違う」

魔女マベルは驚いた様子で村の惨状を見ていた。


「村人たちがただ単に襲われて終わりだと思っていたけど、

魔物たちが逆に狩られてるのね…。自分の予想とは裏腹にことが起きているとかさ~…非常に面白い!」


「魔女よ!約束は守った!娘をかえしてくれ!」


魔女マベルが面白がっているなか、森の中でガゼルの声が響き渡った。


「あーはいはい…もう戻ってきたのね……今面白いところなのに」


魔女マベルは杖に乗ったままガゼルのもとへ向かった。

ガゼルが再び森で叫ぶ!


「魔女よ!いるか?」


「あーうるさいね~…ここにいるよ」


「魔女よ!私は村の結界を解いたぞ!娘をかえしてくれ!」


「ははッ!本当に解除してくれたのね~…娘思いの良いお父さんだね~お陰様で村はほらッ!」


魔女マベルはガゼルに水晶を見せる。

水晶に写し出された映像には多くの村人たちが倒れていた……。


「やめろ……やめてくれ」


「フフ……何目をそらしてるの?この惨状はあなたが招いたものでしょー?」


「貴様……」


「あらぁ何かしら?私のせいと言いたいの?これやったのはあなたでしょう?あなたが自ら決断してやった結果でしょ?」


ガゼルは口を食い縛り、体が震えていた。


「これはね……あなたが望んだ結末なの」


「違う!俺は!」


「違うわけないじゃん!お前が娘を助けるために村を見捨てたんだろ!?違うか?」


「……お…俺は」


「人間ってさあ…そうやって責任逃れをしようとするんだよね…俺はやってないとか、俺は仕方なくやったとかさ」

「なるべく自分の罪を軽くするためにありもしない弁明やしょうもない言い訳をする…どう理由があろうと結末にかわりはないのにね」

「お前が村に対してどう感情を抱こうとお前は村人を皆殺しにしたんだ…ただそれだけだよ」

「結果が全て。過程なんてどうでもいい…それがわからないから人間は下衆な種族なのよ」


ガゼルは反論できないでいた。ただ言われるがままじっと耐えていた……。


「たださ裏を返せばアンタはあたしとの約束を守ってくれた……」


「早く…娘をかえしてくれ!」


「そうだね…じゃあ娘を返すね…












なーんて返すと思うかバーカ!!」


「な!?」


「あはははははは!本当に返してくれると思ったあ?ここから生きて帰れると思ったあ?」

「本当にそう思ってるなら滑稽滑稽!魔女があなたたち人間を見逃すと思う?思わないよねー普通さあ!」


ガゼルは口を開けたまま愕然としていた…。

そして魔女マベルに杖を向けられる……。


「まあまあ楽しめたよ……さよなら!」


森の中で爆音が響き渡った……。


一方ペルー村では魔物が魔女によって次々と倒されていった……。


「逃がさないよ…お前たちは絶対に!」


魔女ララの手のひらから雷撃が放たれようとしたとき、目の前の魔物がいきなり倒れ込む。


「!?」


魔物の後ろには熊型の魔物が立っていた。


「まだ生きてたんだ」

魔女ララは少し驚いた様子で熊型の魔物を見つめる。


「約束は守ったぞ……」

熊型の魔物は息を切らしており、爪に血がたっぷりと浸っていた。


「約束通り…俺を見逃してくれ…」


「まだまだ魔物はいるみたいだけど?約束は守れたと言うのかしら?」


「勘弁してくれ……もう数えきれないほど仲間を殺した……」


「仲間?あはは!あんたたちに仲間の感情があるとはねぇ!?」

「お前たちが殺してきた人たちにも仲間と家族がいたんだよ!何故その仲間意識を持ちながらも人間を襲う!?」

魔女ララは冷笑から怒りの表情へと移る……。


「何故…だと…それではお前らに聞くが…お前らが家畜にしている豚や牛を何故殺す?」


「は?」


「俺たち魔物にとってお前ら人間は家畜そのものだ…食い生きるためにやっている…自然だろ?」


「……お前たちにとって人間は家畜だと?」


「そうだ…だから俺たちがお前らを襲うことは不自然ではない」

「お前らも俺たちも根本は一緒だ…ただ喰うか喰われるか…それだけの関係だ…」


魔女ララは神を思い出す…。

何故人間は…生物は…他の生き物を殺して食すのか…。

何故このような仕組みになっているのか…。

彼女はこの世を恨んだ…。


「もういいだろ…お前のお陰で俺たちも懲り懲りだ…もう村を襲うことも無いだろう…そしてお前ら人間側も何人か生き残っているみたいだ…そちらを手当てするほうが先じゃないのか?」

「もう…無駄な争いをやめよう…頼む逃がしてくれ…俺は約束を守った…」


「そうね…」

魔女ララは体に纏う魔力を解除した…。


「すまねぇ…もう村は襲わねぇ…」

熊型の魔物はボロボロになった体で何とか歩き始めた。


「ねぇ…知ってる?」

魔女ララが口を開く…。

「あなたの言い分が自然の摂理に沿うもので仕方のないことだとしたらさ…」


熊型の魔物はいきなり話し出すララの言動に嫌な予感を感じていた…。


「世の中ってさ…弱肉強食なんだよ」


熊型の魔物が走り逃げ去ろうとした瞬間、熊型の魔物の体が燃え盛った…。


「がああああああッ!」


熊型の魔物がじわじわと燃え盛る…。


魔女ララは微笑みながら涙を流していた…。


再び場面は魔女マベルに戻る。

魔女マベルの魔法は森の木々を吹き飛ばし、遠方で爆発を起こしていた…。


「は…ひッ」

ガゼルはその場で腰を抜かしていた…。

魔女マベルの魔法はガゼルにすれすれで放たれていた…。


「返さないッ…な~んてうっそお」

魔女マベルは微笑みながら、ガゼルの前にカリアを差し出した。


「お父さん!」

「カ…カリア!」


カリアはガゼルに抱きつき、涙を流していた。


「さあ約束は果たしたよ」

魔女マベルは再び杖に腰をかけ、上空へと上がっていく。


「よかった…カリア…よかったッ」

ガゼルはカリアを抱きながら泣き崩れていた。


魔女マベルは空へ飛び立ち、水晶を覗いた…。


「え!?魔物が全滅してんじゃーん!以外!」

「人間にもこんな魔力を放てる奴がいるんだねー面白~」


彼女はこの騒動の一部始終にご満悦のようだ。


「ん?」

彼女の目先には人間の群れが森の中を駆け巡っていた。

その群れは王宮の旗を掲げ、ガゼルがいる方向へ進んでいた。


「ほほう~」

魔女マベルはニヤリと笑う…。


「まだまだ楽しめそうね」

彼女はクスクス笑い、水晶玉を再び覗き始めた…。


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