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別れは旅立ち

ララたちは土を掘り、キマリの遺体を埋める………。

皆それぞれお墓の前で黙祷をする………。


ルイ

(………何故私はこいつに殺されそうになったのにお祈りをしているの?)


ルイが瀕死の時、キマリは彼女を助けようとせず、

むしろサラに食べさせようとしていたのだ。


ルイにとってキマリは忌むべき存在なのだが……人がいいことに皆と共に黙祷を捧げていた。


サラ

「おと………さ…ん」


サラはお墓の前で肩をすくめて、目を閉じている……。


ルイ

(………)


ルイはサラの側に寄り、かがんで後ろから優しく抱きしめる。


ルイ

「あんたは幸せものだよ………皆が祈ってくれてさ」


サラ

「………!」


ルイ

「ちゃんと父親のためにも長生きするんだよ」


サラ

「くぅん………」


ルイは立ち上がり、後ろを向いて歩き出す。


ルイ

「トランヴェル……色々言ったけどさ……あんたには感謝しているんだよ」


「お陰で私はもう一度この世界に生まれることができた」

「本来なら私はもう死んでいる……だから感謝しかないんだ」


「私は今まで誰かのために生きてきた」

「自分の意思を殺してでも誰かに尽くしてきたんだ」

「でもそれでは生きていても死んでいるのと変わらなかったんだ」


「だから私はわがままに生きたい」


トランヴェル

(………)


ルイ

「私はいずれあんたに恩返しをするよ………約束する」

「でもそれは今じゃない……今のままじゃ私は足手まといなだけ」

「本当に自分の意思で行動できるようにならないと……あんたたちと一緒にいられない」


ララ

「ルイさん……そんなことは」


ルイ

「あるよ」

「わかるんだ私には……あんたたちには世界に負けない強い意志がある」

「あんたたちは自分を信じてるから敵の本拠地に行こうだなんてアホなことが言えるんだ……」


「私にはアポロに行く自信なんて無い……」


「だからいつか……いつか私が……!」

「世界と戦える自信を持ってあんたたちに恩返しをする」

「だから私はわがままに己の意思で行く」


トランヴェル

(気をつけて行けよ……ルイ…応援してる)


イト

「またその日までお別れだな………また会おう」


ルイ

「じゃあね………」


ルイはトランヴェルたちに背を向けて、そのまま立ち去って行った。


ルイは空を見上げる。


ルイ

(団長………)

(私はあの時の自分が一番輝いていた………)

(だから探すよ………団長たちのような本当に必要な仲間を)

(私が私でいられる場所を………!)


ルイが立ち去った後、ララたちは山を降りることにした………。

サラは出発前までお墓の前に立っていた。


ララ

「サラちゃん………行こう」


サラ

「………」


イト

「やはり彼女も置いていくべきか?」


カリア

「その方がいいかもしれない………」


ザザ………


サラは突然お墓に背を向けて、ララたちのもとへ走り出す!

そして誰よりも前へ道を進んでいく………!


イト

「おい!いきなりなんだ!?待てよ!!」


ララ

「イトさん置いていかれるよ!」


ララとカリア、ミランダもサラに続いて走り出す!


イト

「あの犬ころ………ふっきれやがったな」


イトも続いてトランヴェルの体を背負いながらサラたちを追いかける!


サラ

「ワオーん!!」


サラの雄叫びが山を響かせる………!

その雄叫びは悲しそうにも感じ取れるが、

どこか前へ進もうとする内に秘めた熱い想いも感じる。

彼女は何かを胸に秘めて精一杯走って行った。


山を降り続け約3時間ほど、トランヴェルたちはルナ街の近くにたどり着いた。


イト

「これ以上行くと街に入ってしまう………ここでお別れだなミランダ」


ミランダ

「皆本当にありがとう………無事を祈るわ」


カリア

「元気でねミランダ…お母さんにもよろしくね 」


ララ

「ミランダ………」


ララは別れが辛くて悲しくて涙が押さえきれず、ポロポロ涙を流す。


ミランダ

「ララ、カリア気を付けてね………」


ララ

「私………ミランダと会えたこと………絶対に忘れない」


ミランダ

「ララ………またここに帰っておいでよ」


ララ

「え………」


ミランダ

「ララたちにも帰れる場所があるんだよ!」

「ララとカリアは一度私の家に来てるんだから!」


「だからいつでもおいで………お母さんもきっと喜ぶ」


ララ

「ミラン………ダ」


カリア

「ミランダ…ありがとう………!」


ララとミランダは抱き合い、お別れを告げる。

ララはこの後もしばらく泣きっぱなしで、

目のあたりが真っ赤になっていった。


トランヴェル

(この世界はまだまだ未知なことは多いけれど………人を想う気持ちはどの世界でも変わらないんだな………)


(どんなに辛くて悲しくても………きっと望みに辿り着ける)


(この歪んだ世界でも………きっと………)


ララたちと別れたミランダは山を降りきって、久しぶりにルナ街に足を踏み入れる。そして彼女は真っ直ぐ自分の家に向かって歩いて行く。


ルナ街では昨日の魔女教会の事件が話題となり、ざわついていた。そこには買い物をしているコーネリアスの姿があった。


コーネリアス

(あの子たち………大丈夫かしら)


コーネリアスは食材を買い、家の前の路地にたどり着く。


彼女の視線の先にオレンジ髪の女性が家の前で立っていた。

そして女性はコーネリアスの方を向き、お互いに目があった。


コーネリアス

「え………」


コーネリアスは食材を入れた袋を手から落とす………。


ミランダ

「っ………」


コーネリアス

「ミランダ………!」


ミランダはコーネリアスの顔を見て、彼女のもとへ走り出す!

コーネリアスも彼女の顔を見ては数歩前に前進し、両手を広げる。


ガバッ………


ミランダはコーネリアスへ走った勢いで抱きつき、コーネリアスもミランダを遅れて優しく抱きしめる………。


コーネリアス

「ミランダ………」


ミランダ

「ただいま………」


ミランダは先程まで堪えていた涙をぼろぼろと流し、コーネリアスを強く抱きしめる………!


コーネリアス

「ミランダ!ミランダ………ミランダ!!」


ミランダ

「おかあ………さん………おか………さ」


コーネリアスとミランダはしばらく抱き合ってはお互いの顔を見て、久しぶりの再開に涙を流した………。




二章完。三章「秘密の王宮」へ続く。

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