ダマの記憶4
場面が切り替わる………。
またダマとノーズとミスリルの3人が椅子に座って話をしていた。
ミスリル
「ダマ様………これ以上実験を続けるのは危険です………」
「サンプルたちを逃したことがバレたら我々は死刑にされてしまう…」
ダマ
「何を今更………それを言うならば、こんな実験をしている時点で、もはやアウトだろう」
ミスリル
「もはやアウトの次元が違うと言っているのです!」
「まさか脱走したキメラたちが人を襲うとは………世間に存在を知られてしまったのですよ!?」
「今全世界でパニックに陥ってるのに何故そんなに落ち着いてられるのです!?」
「これらのニュースを見ても何とも思わないのですか!?」
実験室の壁に映像が映る。その映像にはキメラが人を襲っていた。
未知なる生物として全世界に報道されていた。
ニュースの内容によれば、この生物は世界のあちらこちらで確認されており、
被害もどんどん拡大しているとのことだ。
ミスリル
「こんな大事件………もはや責任は取れない」
「数も明らかに増えている。まさか奴らに生殖機能があったなんて………」
ダマ
「ふん………こんなものどうにでもなるだろう」
ミスリル
「………どうしてそんなに平気でいられるのですか?」
「人類の敵を我々は生み出してしまったのですよ!?」
「脱走したのは数体のはずが、ここまで大量に発生しているとなると……人類の驚異になりかねない」
ダマ
「結構なことだ」
ミスリル
「なっ………」
ダマ
「人類には天敵ができたほうがちょうどいい」
ミスリル
「何をバカなことを………」
ダマ
「そもそも人間に天敵がいないから無駄に争いごとが増えるのだ」
「無駄に人は増え、資源を奪い合い、無駄に争う」
「どんなに科学が進歩しようと我々は我々で争うしかないのだ」
「人間には明確な敵が必要だ………それこそ生物として制御が効くのだ」
ミスリル
「狂ってる………」
ダマ
「本来の意図とは異なるがこれはこれで願ったり叶ったりだ………奴らは人間の抑止力として今後働くだろう」
トランヴェル
(やはり魔物はこいつらの実験によって生み出されたのか…)
場面がさらに切り替わる。
部屋が凍てついており、そこには魔女が椅子に座っていた。
トランヴェル
(さっきの記憶で出てきた魔女!?)
青い瞳の魔女
「なにやら最近面白いことになってるね」
「人間の天敵を作るとは…貴方は罪深い存在となったわね」
ダマ
「大袈裟な………」
ダマは魔女の対面にある椅子に座り、足を組む。
青い瞳の魔女
「ふふ………やっぱり貴方狂ってるわよ」
「そんな貴方にプレゼント」
青い瞳の魔女は対面にいるダマに手を向ける。
バチバチッ!?
ダマ
「ぐお!?」
ダマは右目を押さえてうずくまる………。
彼の右目は血のように真っ赤に染まっていた。
ダマ
「なんだ………何をした!?」
青い瞳の魔女
「あなたの目を改造したの。その右目で魔力を測定することができるわ」
ダマ
「なんだと…?」
青い瞳の魔女
「今貴方の右目は真っ赤に染まっているでしょ?相手が魔女ならば右目が赤く光るの」
「人間なら緑色に光るわ………ただ人間の中にも魔力が強い個体もいるでしょうから青く光るケースもあるわ」
「つまり魔力が高い者ほど赤みがかかっていくのよ」
ダマ
「……なぜこのようなものを?」
青い瞳の魔女
「日頃魔物を売ってくれるお礼よ」
ダマ
「……」
トランヴェル
(ダマの光った目は魔力を計るものだったのか………)
バチバチ!!
映像が乱れる………。
トランヴェル
(なんだ!?)
バチバチ!!
?
「貴様………何者だ」
乱れた映像の中から黒服の男が出てきた。そしてその者はトランヴェルへ向かって歩いてくる。
トランヴェル
(お前は………)
?
「私の心の中に入ってこれるとは…やはりただの鳥ではなかった」
トランヴェル
(ダマ!?)
ダマ
「お前は魔女か?」
トランヴェル
(違う………私は人間だ)
ダマ
「人間?人間がどうして私の『意識』の中に入れる!?人間なわけがなかろう!」
トランヴェル
(何と言われようと私は人間だ)
(ダマお前に聞きたいことが山ほどある)
(まずお前はこの世界とは別の世界から来たのか?)
ダマ
「どういう意味だ?」
トランヴェル
(お前が使っていた機械………どう見てもこの世界のものとは思えない)
(なんというか……私がいた世界に近いものなんだ……ちょっと未来な感じはするけど)
ダマ
「何を言っているのかわからんが………私はこの国に生まれ、アポロで育った」
トランヴェル
「お前はこの世界の住人なのか……じゃあ、あの科学技術はどこから調達したんだ?」
ダマ
「あんなものアポロに行けばたくさんある」
トランヴェル
「アポロ?アポロってあの月面到着したアポロか?」
ダマ
「月面到着?……貴様アポロ市を知らないのか」
「一つ教えてやろうアポロはこの国の都市だ」
トランヴェル
(都市……?)
ダマ
「アポロは何百年も前から存在している大都市だ」
「それを知らないということはお前は相当な田舎者か宇宙人としか思えん」
「貴様はどこから来た?」
トランヴェル
(それはわからない………記憶が無いんだ)
ダマ
「記憶が無い?」
「一体貴様は何者なんだ!?」
「まさか貴様………アンセスターか?」
トランヴェル
(アンセスター………?)
ダマ
「そうだ………確か貴様は探索機を操縦してたな………」
トランヴェル
(探索機?なんのことだ?)
ダマ
「とぼけるな………あの大きな機械を操作していただろう」
「魔法でも動かせない代物だ………相当訓練をこなさないとあれは動かせない」
トランヴェル
(大きな機械………あれか)
トランヴェルは思い出す………ノーズから逃げていた時、大きな機械に入り込み操作したことを。
ダマ
「あれは13年前に発掘したものだ………かつて祖先がこの地に足を踏み入れる前にあれを使用してこの大陸を探索していたという」
トランヴェル
(祖先………つまりアンセスターか)
ダマ
「あれを動かせるものは現代の人間ではいないはずだ………魔女ですら動かせなかったのだからな」
トランヴェル
(魔女ってあの白い服を着た奴か……)
(あの魔女は何者なんだ?)
ダマ
「……あの魔女は」
ダアアアアン!!
突如何か爆発したような音が鳴り響く!
そしてトランヴェルとダマの足元が崩れていく……!
トランヴェル
(何だ!?)
ダマ
「………どうやらここまでのようだ」
「結局お互い何も聞き出せなかったな。残念だ」
ダマは目から血を流し、体が徐々に粒子化していく。
トランヴェル
(おい!待て!!どういうことだ!?)
ダマ
「どうやら………魔女は………私を見捨てたらしい」
「最後に土産として教えてやる………アポロの魔女には………気を付けろよ」
「さらばだ」
ダマは粉々に散り、姿を消した。
ギュオオオオオオオ!!
突如津波がトランヴェルを襲う!!
トランヴェルは抵抗もむなしく流れていってしまう。




