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記憶の大海 心に浮かぶ月


「今日も1日平和でありますように」


ペルー村のご神体の前で一人の女性がお祈りをしている。


「お母さん…ここで毎日お祈りしてるの?」


「そうだよーここで毎日村が平和であるようにお祈りしているの」

「神様は毎日ここで私たちを守ってくれるからね!」


「神様…」


「そう神様!どんな時でも守ってくれるの」


「神様神様!今日も平和に過ごせますように!」


「えらいえらい!」


「ララー!」

教会の入り口から一人少女が入ってきた。


「学校へ行こう!!」


「今行くー!!お母さん行ってきます!」


「気をつけて行くんだよー!あと絶対村の外は出てはいけないからね!」


「うん!わかってるよ!」



トランヴェル

(………)

(ここはどこだ?)


ベルチカ

「彼女の記憶の中だね~」

「どうやら彼女がまだ幼い頃の記憶みたい」


トランヴェル

(あの女の子はカリアか?)

(そしてこの女性は………ララのお母さん?)


いきなり辺りが暗くなり、トランヴェルたちが見ていた場面が切り替わる。

先程までは日照りがさしていたのに、教会の周りにはロウソクに火が灯っていた。

どうやら見ている場面は夜の出来事のようだ。


ララ母

「今日も1日平和でありますように………」


ララ

「お母さん…何で毎日お祈りしてるの?」


ララ母

「日課みたいなものよ」


ララ

「誰かに頼まれてやってるの?」


ララ母

「ううん…違うの」

「これは私が自主的にやってるの」

「毎日毎日お祈りすることで平常心を保ってるのよ」


ララ

「平常心…?」


ララ母

「そう平常心…どんなに村がひどい目にあっても辛いことがあっても毎日平和でいてほしい…そうお祈りしているの」


「村だけじゃなくて私たちにも平常心は必要なの」

「ほら私たちって嫌なことがあったら怒りにとらわれたり、悲しみにくれたりするでしょ」

「どんな辛い時でもやるせない時でも自分を忘れずにやり遂げるために平常心が必要なの」


ララ

「ふーん……」


ララ母

「人間は感情に振り回される生き物だからね…だからこそ目先の感情にとらわれないようにお祈りをしているの」


ララ

「そうなんだ…お祈りってすごいね」


ララは彼女の母親の隣に立ち、一緒にお祈りを捧げた。


ララ

(ペルー村が平和でありますように………皆元気でいられますように)


トランヴェル

(なんだ………?場面が変わった?)


ベルチカ

「僕らが泳げるのはほんの一部の記憶だけ…記憶に残っている出来事しか見ることができない」

「だから彼女の記憶全てを見れるわけじゃないんだ」


トランヴェルたちが話している間にまた場面が切り替わる。


「お母さん!」


切羽詰まった涙声が部屋中に響き渡る。目の前にはララの母親がベッドで横になっていた。

彼女の顔は雪のように白く、手は骨と皮だけで顔はやつれていた。

彼女はララたち家族に何か伝えようとしているが言葉が出てこない…どうやら喋れないようだ。

そして彼女は静かに目を閉じていく……。


ベルチカ

「これは彼女のお母さんとの死別の記憶だね」


トランヴェル

(ララ…)


ララは母親を失いひたすら泣き崩れていた。

そして次の場面では彼女の父と弟と共にお墓の前で花を添えていた。


ララ

「お母さん……」


また場面が変わる……辺りは暗く目の前にはペルー村のご神体が見える…。

その頭上には真ん丸とした月が綺麗に輝いていた。どうやら彼女は外へいるようだ。


トランヴェル

(コロコロ場面が切り替わるな…)


ベルチカ

「はじめはしょうがない…慣れないうちは断片的にしか記憶を見ることができないから」


さらに場面が切り替わる。

その場面にわずかな隙間ガゼルが見える…。


トランヴェル

(これは……もしかして)


ガゼル

「許してくれ!」


ガゼルの叫びと共に村の魔法障壁が解除されていく……。


トランヴェル

(ララはガゼルが魔法障壁を解除するところを見ていたのか…)


続いて魔物が襲ってくるシーンが映し出される。

そしてララの父親の死体が映し出される。


トランヴェル

(これは…ペルー村の…出来事か)


そして魔物がララの弟を捕食するショッキングな映像が映し出される…。


トランヴェル

(う……)


ララは悲鳴をあげ自分の弟が喰われていくところを見て絶望を感じる。

しかしここで一瞬一枚の手紙が彼女の脳裏に浮かび上がった。

そしてララは悲しみに暮れることも無く、恐怖に陥ることなく、

彼女は即座に魔物から逃げていった。


トランヴェル

(なんだ今の手紙…?)


ベルチカ

「さあね…彼女は自分の弟が食べられちゃった後に一瞬何かを思い出したようだったけど」

「一体何を思い出したんだろうね」


そして場面は再びご神体の中が映し出される…。

そこには多くの兵士たちが剣を構え、さらにその奥には魔法使いたちが呪文を唱えていた。

そして彼らが放った魔法がこちらに向かってくる!


ゴオオオオオオオオオオ!!


トランヴェル

(うお!?)


あまりの迫力にトランヴェルは体を仰け反っていた。


トランヴェル

(これは…魔女狩隊と戦闘した時の記憶か)


次の瞬間にはハンマーがこちらへ猛スピードで飛んできた!


トランヴェル

(うわああああああああああ)


グシャア…


あまりにも潰れた音が生々しく、トランヴェルは腰を抜かす…。


トランヴェル

(ララはこれを受けたのか…)


ザパアアアッ!!


トランヴェルたちは海面から顔を出す…。

そして見上げれば薄暗い夜空に無数の星が輝いていた。


トランヴェル

(今度は何だ…!?ここはどこだ?)


ベルチカ

「ここが彼女の記憶の終点だよ」

「僕らはできるだけ深く泳いで、そこから海面へ向かいながら彼女の記憶を見てきたんだ」

「つまりこの海は彼女の記憶そのもの…そして深く泳げば泳ぐほど彼女の記憶を遡ることができるんだ」


トランヴェル

(なるほどな……じゃあこの夜空は何だ?)


ベルチカ

「この夜空は彼女の空想…いや妄想というべきか…現ではないものだよ」

「そして夜空に浮かぶ星たちは彼女の願いや想いそのものなんだ」

「つまり夢」


トランヴェル

(夢……)

(こんなに多くララは夢を描いているのか?)


ベルチカ

「そうだよ!人間は自分が思ってる以上に沢山夢を持っているんだ」

「それはピンからキリまであるけれどね…明日あれ食べたいあれ欲しいっていうレベルから

将来はああなりたいとか成し遂げたいとか大きな夢もある」

「そしてあれを見てごらん」


ベルチカが指さした先に見えたのは無数の星たちに負けじと大きく輝き、どの星よりも美しく輝いている星だった。


トランヴェル

(……月)


ベルチカ

「そう……月……!どの星にも劣らず輝き続ける存在!!」

「あれこそが彼女が大きく望むもの」


トランヴェル

(大きく望むもの…)


ベルチカ

「さあトランヴェル!あの月へ行こう!」


トランヴェル

(へ?……月へ!?)


ベルチカ

「そう月へ!さあ!!」


トランヴェル

(ここから月へ飛んでいけるのか!?)


ベルチカ

「行けるとも!トランヴェルが信じればね」


トランヴェルは海面から羽を広げ、空へと飛び立つ……。


ベルチカ

「どうやら彼女はあそこにいるみたいだね…連れ戻すんでしょ?現実に」


トランヴェル

(あそこにララがいるのか…なら目を覚ましに行くまでだな……!)


ベルチカ

「じゃあ行こうか……あの月へ」


「彼女の望む…幻想へ」


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