トランヴェル第6の魔女
魔物たちがイトやサラへ襲いかかってくる…!
イトは剣でサラは爪で敵を凪ぎ払っていくが、敵の数に圧倒される…。
彼女たちが交戦している間にノーズは己の体を修復し、カリアから魔力の吸収に専念していた。
トランヴェル
(くそ………戦力が足りない)
(イトとサラは魔物と戦うので精一杯…そしてミランダも体力の限界…ララは気を失っている………きついな)
ミランダはララのもとへ駆けつけ、魔法障壁を貼る…。
ミランダ
「ララ!目を覚まして!!」
ララは気を失ったまま横たわっている…。
ミランダはララに必死に呼び掛けるものの返事は一向に返ってこない。
トランヴェル
(他に………他に誰かいないのか!?)
トランヴェルは飛び回り、生存している騎士団員がいないか探し回る。
トランヴェル
(そろそろ30分たってしまう………誰か……誰でもいい…味方が欲しい!)
トランヴェルは生存している人間を探すが、死体しか見当たらない。
イト以外の兵士は皆やられてしまったようだ。
トランヴェル
(…このままでは全滅する…何とかしてカリアを助け出してここから退散するべきか)
トランヴェルはもうこれ以上は勝ちの見込みが無いと判断し、
イトたちへ撤退の指示を出そうとしていた…が、一人這いつくばって生きている者が彼の目に入る!
トランヴェル
(あそこに誰かいる!?)
トランヴェルはすぐそこへ飛び降りた!
「ダマ………ころ…して………やる」
その女性は片手で這いつくばり前進していた…。
背中には魔物らしき者を背負っていた。
その魔物らしき者は白目をむいており、下半身がなかった。
トランヴェル
(…人?)
トランヴェルは戸惑った…這いつくばっているものが人なのか魔物なのか判断がつかないからだ。血だらけで生きているのも不思議なくらいに重症を負っていた。
トランヴェル
(…お前は人間か?)
トランヴェルは訪ねてみる…もし人間でなければ魔物と判断し、諦めるつもりだ。
「誰だ……?」
トランヴェル
(君は……人間?)
?
「……なんだ…鳥が…しゃべっ……てる?」
トランヴェル
(質問に答えて欲しい)
?
「……ばけ、ものに……みえるか?」
トランヴェル
(君は……騎士団じゃないな……女性……?)
?
「……」
その女性は今にもこの世を去りそうだ……。
うかうかしてはいられないと思ったトランヴェルは、
その女性に続けて話しかける。
トランヴェル
(もしかして……協会の人間か?)
トランヴェルはこの女性を魔女信仰協会の信者と仮定して話を進めた。騎士団員であれば武装しているし、むしろ協会の信者たちが着ていた服と似ていたため魔女信仰協会の者ではないかと踏んでいた。もし魔女信仰協会の者であればもちろん魔女の力を与えることはできないが、この際敵でも何とかしてこちらの味方につけたいと考えていた。しかし、そんな思惑とは裏腹にことは進んでいった。
女性
(ダマ……ころす……)
トランヴェル
(え?)
彼女の口から物騒な言葉が出てきたが、
どうやらダマと敵対しているようだ。
女性
(あいつを……ころ……さないと……死ぬに……死ねない)
トランヴェル
(何故この女性がダマを殺したがっているのか不明だが……好都合だ)
トランヴェルはその女性に近づき、今までの記憶を彼女に見せる。
女性
(な………に?)
女性の脳内に次々と映像が写し出される。
トランヴェル
(君がダマを倒したいなら………魔女にならないか?)
女性
(ま………じょ………?)
トランヴェル
(もう一人魔女が増えれば戦局を変えられるかもしれない………ここで必ず一人戦力を確保しなくてはならない)
トランヴェルは女性に魔女になるように交渉を始める。
一方、イトはかなり苦戦を強いられていた。
敵を倒しても倒しても一向に減りそうに無いのだ…。
イトは魔物たちに剣を突き刺して行くが、息をきらし、
魔方陣が消えて剣を取り出せなくなるほど魔力を消耗してしまった。今握っている剣で敵を斬り倒すが、次々と魔物たちの攻撃を受けてしまう………。
サラも最初は苦もなく数十体倒していたが、余りにも敵が多いため体力は削られ、爪はボロボロになっていた。
爪が割れては再生してきたが、再生が追い付かなくなってきたのだ。敵をさばききれず、ダメージを負う回数が増えてきた。
ミランダもイトやサラと同様に限界が近づいていた。
ミランダ
「こ………これ以上は………無理」
ミランダの貼る魔法障壁はどんどん薄くなり、魔力の限界を迎えようとしていたのだ。彼女の後ろで倒れているララも起き上がる様子もなく、絶望の縁へと落とされていた。
ダマ
「数百体は出したが………ここまでやられてしまうとはな」
(こいつらは一体どこから現れたんだ…しかもそこそこ強い魔力を持っている………)
ダマはイトやサラがいきなり現れ立ち塞がってきたことに対して疑問を抱いていた…。この二人はどこから来たのか…不思議でならない。
ダマ
(おかげさまでもう一度研究のやり直しだ………)
「ノーズ!奴らを半殺しにし捉えるんだ!」
ノーズ
「御意」
ノーズは体から複数の腕を伸ばし、ミランダ、イト、サラへ向けた。
ノーズの手はイトたちを捕まえ、彼女たちの身動きをを拘束する。彼女たちの抵抗も虚しくノーズのもとへと引き込まれてしまう。
ノーズ
「これだけの魔力が強いものを取り込めば…私はもっと強くなる…!」
リイイイイイイン………
どこからか鈴の音が聞こえてくる………。
ノーズ
「!?」
リイイイイン…………
ダマ
「鈴の音…?」
部屋に響き渡る鈴の音…それは徐々に大きく響いていく…。
ダマは鈴の音が聞こえる方へ振り返る…そこには黒い喪服を着た女性が一人立っていた。
「ダマあ…………」
ダマ
「お前は……!?」
ダマはその女性に見覚えがある…その女性はつい先ほど切り捨てたはずの協会の人間の姿だった。
ダマ
「まだ生きていたのか…下種!?」
ルイ
「下種は貴様だ!!!」
そうその女性は魔女信仰協会のルイだった…!
彼女は先程ノーズの魔法で死んだと思われたが、リケルが彼女を庇い生き延びることができたのだ。
そしてその後トランヴェルと出会い、魔女としてこの世に再臨したのだ。
ルイ
「絶対に…絶対に貴様を殺す!!」
ダマ
「たわけが!貴様一人で何ができる!」
周りにいた魔物たちがダマの指示に従ってルイへ立ち向かっていく!
対するルイは自分の周りに黒い蝶をたくさん出現させる…!
ルイが出した蝶は魔物たちの肩や頭に乗っかると
魔物たちは白目を向き突然倒れてしまった…!
まるで蝶に生気を吸いとられるように、次々と魔物たちは蝶に触れてはバタバタと倒れてしまう!
ダマ
「何…!?」
ルイ
「ダマ………私はね…あんたに多くの大切なものを奪われてきたの」
「団長たちの命…そして私の未来…返してよ!!」
ルイは上空に向かって右手をあげ、掌に紫黒色の球体の魔法をつくる…!
その魔法はドス黒く禍々しさを感じる。
ルイ
「うわあああああ」
ルイの叫びと共に魔法は放たれた!!
そのドス黒い魔法は魔物たちを飲み込んでいき、ダマへと向かっていく!
ノーズ
「させるか!!」
ノーズはダマの前に立ち、魔法障壁を展開する!
ドス黒い魔法と魔法障壁は衝突して火花を散らし、相殺される!!
ノーズ
「ぬう…!」
ルイ
「はあ………はあ」
ルイが先程放った魔法はかなり強力であったためか、彼女の手は痙攣を起こしていた。
トランヴェル
(やはり魔女なりたてではきついか………何とかして奴の体からカリアを引き出して撤退できないものか…)
ノーズ
「まだまだ魔力が足りない…もっと吸いとらなければ…」
ノーズは体内にいるカリアからさらに魔力を吸い上げる…。
ノーズの体がどんどん膨張していき、魔力を高めていく…!
ルイ
「お前らなんかに…負けるか!!」
ルイはもう一度右手から禍々しい魔法を作り出す…。




