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内なる勝利


あれからどれくらいの時間が経ったんだろう……。


私が母と買い物していた日からどれくらいの日時が過ぎていったんだろう。


私は……もう生きて帰れないのかな……。


ミランダはノーズの黒い魔方陣に入った後、この薄暗い牢獄に転送されてしまった。手と足は拘束されており、身動きができない…。もはや彼女は生きることを諦めていた。


ガッ!ガッ!


彼女がいる牢獄にはもう一人の少女がいた。

彼女はつい数時間前にこの牢獄へ飛ばされてきたのだ。

ミランダと同様に手足には魔力を纏った鎖で拘束されている。

しかし、彼女は手足をばたつかせたり、手から微力な魔法を鎖にぶつけたりして脱出しようと試みていた。


ミランダ

「そんなことしても無駄だよ……」


ミランダは隣でばたついている少女に話しかける。


ミランダ

「私も何回もやってみたけど一向に鎖から抜け出せない……無駄な体力使うだけだよ?」


ミランダは少女に脱出できないことを伝えるものの、その少女はミランダの言葉を無視して何度も鎖を外そうとしている。


ミランダ

「無駄だってわからないかな……もう何してもここから出れないよ」


ミランダは哀れそうにその少女を見つめる。


ミランダ

(お母さん……ごめんね…もうダメみたい…)


ミランダは母との思い出を思い返す。


(あの頃に帰れたら……)

(なんで私がこんな目に……)

(お母さん……帰りたいよ……)


ミランダの心境は過去に戻りたい願望と今の苦境から逃れたい諦め、誰かが助けに来てくれるだろうと僅かな期待へと変わっていき、また過去への願望にもどる。

その心境はぐるぐると周り、彼女を無気力の状態へと追いやっていった。

そして隣で少女が懸命に脱出を試みていることにたいして哀れみを感じ、さらに彼女は無気力へ際悩まれる。


ガンガンッ!


ミランダ

「いい加減に諦めなさいよ……」


少女が数時間ずっと脱出しようと奮闘していることに対して、ミランダは嫌気をさしていた。


ミランダ

「そんなので出れると思ってるの……?バカじゃない?」


ガンガンッ!


少女はミランダの言葉に耳を傾けず、ひたすら鎖を外そうと色々試している。


ミランダ

「ねぇ!やめなよ!!」


ガッ!ガッ!……


少女は脱出を試みる。


ミランダ

「聞いてる!?無駄だって!」


ガッ!……ガンガン!!


ミランダ

「無駄だって言ってるでしょ!?」


ミランダは思わず、声が高ぶる……。


少女

「まだ諦めるのは早いよ……」


ミランダ

「!?」


少女は口を開け、ミランダに返答する。


少女

「もしかしたら抜けられるのかもしれない」


ミランダ

「無駄だよ……」


少女

「ここでじっとしているほうが無駄だよ」


ミランダ

「!?」


ミランダは思わず舌打ちをして、少女から目をそらす。

少女は思考を巡らせて、色んな魔法で鎖を外せないか試している。

火も氷も雷もダメ……。鎖と繋がっている壁を壊そうとしたが、やはり壁にも魔法障壁が張られており、傷一つつけられない。

天井や牢屋の柵にも魔法をぶつけてみるが、びくともしない。

少女は周りを見渡す……何か牢獄から抜けられる手段がないか探し続ける。


少女

(あ……)


少女はこの牢屋の奥に排水溝があることに気づく……。

彼女は手から小さい雷の魔法を放ち、排水溝へと放つ……。


バチ!!


排水溝の中へ魔法が入り込み、何か破裂する音がした。

それから少女は何度も小さい魔法を排水溝に放ち、排水溝から破裂する音が徐々に遠ざかっていく。


ミランダ

「……何をしているの?」


少女

「あの排水溝には魔法障壁が無かったの……試しに私の魔法をあの中へ入れて何とかならないかなって考えてる」


ミランダ

「……そんな魔力じゃ何も壊せないよ」


少女

「私……ここ数日魔法を使えなかったの……でも今になってやっと少し出せるようになったの…」


ミランダ

「そうなんだ…」


少女

「貴女は魔法を使える?」


ミランダ

「使えるかな……でもあなたみたいにうまく使いこなせないの」

「私はさっき使えるようになったからね」


少女

「ねえ……一か八かあの排水溝に魔法を放ってさ……何とかこの部屋を壊せないかな」


ミランダ

「壊せるかどうかわからないけど……どうせ無理よ」


少女

「諦めないで……まだ出れる可能性はあるよ?」


ミランダ

「無理だよ……貴女はいつからここにいるのか知らないけれど…私はもう何日も前からここにいる…」

「化け物に追われて…噛まれて…それでも助かって…魔女になって希望が見えたと思ったらまた化け物にやられた」

「ここから出られたとしても…どうせまた捕まる…」


少女

「…魔女?貴女今魔女って言った!?」


ミランダは少女の反応に驚く…。


ミランダ

「うん…もしかして貴女もフクロウに魔女にされたとか?」


少女

「え!本当に!」


少女は驚き興奮を隠せないでいる。


少女

「フクロウって黄金に輝いている奴じゃなかった!?」


ミランダ

「そう…それだ……まさか貴女も魔女の力を得た人間?」

「そういえば思い出した…あのフクロウ…私のように魔女の力を与えた人間が二人いるって言ってた」


少女

「良かった……なんか安心したよ」


ボコッ!


少女が放ち続けていた魔法によって排水溝の周りが陥没した!


少女

「地面に穴が空いた!」

「ねえ……お願い……手伝って!このまま地面を壊して、何とかこの壁も崩せるかもしれない!」


ミランダ

「……」


希望が見えたと言わんばかりに少女の顔は明るくなり、彼女はミランダに協力を促す。

しかし、ミランダはうんとは言い切れないでいた。

これまで彼女も少女のように何度もこの地下から出ようと試みてきたのだ……しかしいつまで経っても抜け出せない……。

そんなことから彼女は無気力な状態となっており、何もできないでいたのだ。


少女

「……貴女も魔法が使えなくなったのかな……?」

「大丈夫!私一人でも何とかやってみるよ!」


少女はどんどん微力な魔法を地面に放っていく……。


ミランダ

(なんでこの子は諦めないんだろう……)


ミランダは少女の奮闘を見守るばかりで何もできずにいる。

次第に少女から放たれる魔法は小さくなっていき、地面も少しヒビが入る程度にしか壊せないでいた。


少女

「はぁ……はぁ……」


少女の息があがり、先程の明るい表情から苦しさが滲み出ていった。しかし、少女は何度でも何度でも魔法を放つ……。


ミランダ

(何でこんなに苦しいのに……続けられるの?)


地面が少しずつ崩れていき、排水溝からミランダたちの地面に近づいて陥没が広がっていく。


ミランダ

(例えここから出れたとしても、また捕まるのに……)


少女は放ち続ける魔法を……。


どんどん地面は割れていき、ミランダたちの後ろにある壁にもヒビが入っていった!

地面も壁も表面には魔法障壁が張られていたが、どうやら裏面や中までは至っていないようだ。

少女の魔法は地面を通じて壁の中へと通じる。そして壁を壊していく。少しずつ少しずつ彼女の魔法が壁を破壊していく……!


ミランダ

「すごい……」


ミランダは少女をみて自分が情けないと感じた。

恐らく自分より若い少女が諦めずに行動を起こしているのだ。

その行動が成果を見出し、壁が崩れてきている…!


ミランダ

「ありがとう」


少女

「はぁ…はぁ……大丈夫……後…少しだから」


ミランダ

「少し…休んでて」


ミランダは右手から魔法を自分の足下にある地面へと放つ!

その魔法は地面からミランダたちの背面の壁へと伝わり、壁を内部から破壊していく!


ミランダ

「もう少し!後…もう少し!!」


少女はミランダが手伝ってくれる姿を見て笑みを浮かべ、再び魔法を微力ながらも地面へ放つ!


ミランダ

「これで…どう!」


ガラガラガラガラ!!


ミランダたちの放つ魔法によって背面の壁が崩れ、壁についていた鎖が壁とともに崩れ去った!!


ミランダ

「やった……やった!!」


ミランダと少女の手足は解放され、宙に浮いていた体が地面に落ちる。そして手足をつき、拘束から逃れることに成功した!


少女

「ありがとう……おかげさまで…出られた」


少女はふらつき倒れそうなところをミランダが支える。


ミランダ

「ううん…お礼を言いたいのは私だよ……」

「ありがとう」


少女

「はぁ……はぁ……ここから出られるかな……?」


ミランダ

「……出られるとも…絶対に…ここから出よう!」


少女

「そうだね…」


少女はミランダに支えられながら立ち上がる。


ミランダ

「そう言えば名前聞いてなかったね…私はミランダ」


少女

「私は…ララ…よろしく……!」


ミランダたちはお互いの体を支えながら、牢屋の柵を壊して脱出する。

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