ダマの罠
ドラフなき国営研究所に二人の死体が送り込まれてくる。
アマミ
「おいおい!仏様を送り込んでくるんじゃない!?」
「葬儀屋じゃないんだぞここは!?」
アマミはぶつぶつと呟きながらララとカリアらしき死体に計測器をつける。
ピピピ……
この計測器は指紋やらDNAやら読み取り、国のデータベースにある個人情報とマッチさせるものだ。国民は皆生まれながらにして生体情報を計測され、情報を記憶装置に保管している。また定期的に健康診断という名目で再度計測して、さらに魔法粒子など赤子の頃になかった情報も取っている。
この計測器はかつてドラフの研究チームが開発したものだ。魔法が主なこの時代だからこそ、彼は魔法粒子の計測にこだわり、この様な機械を多く開発していた。この計測の結果はわずか3秒で出すことができ、処理スピードもなかなかのものだ。
計測器からララとカリアの結果が弾き出される。
結果、遺伝子情報は二人とも一致と出た……つまりこの死体は本人に該当する。
ララとカリアのデータはちょうど昨日分析して更新されたばかりだ。ペルー村での彼女たちの血痕や魔法粒子から彼女たちの情報は追記されていた。その情報と死体から計測した情報を付け合わせて、合致するかどうか確認をしたのだ。
アマミ
「うん…合致したね…イト君へ残念なお知らせを送ろう」
アマミは結果を記した魔法レポートを転送魔法でイトへ送る。
一方イトたち騎士団は教会の隅々を視察、そして魔法粒子の計測や魔女探索機を使用して魔女を探索していた。
イト
(あの死体はフェイク……きっと魔女はこの教会のどこかに潜んでいる)
(あのダマとかいう奴の反応を見る限り絶対何かを隠している……)
イトは探る探る周りを見渡す……。
そしてダマはにやついた顔で騎士団たちを見ていた…。
ダマ
(まんまと入ってきたな……)
ルイ
(ダマ……どうするつもり!?それにあの死体は……)
ルイはダマに小声で話しかける……。
ダマ
(お前は黙ってついてくればいい……そこでじっとしていろ)
ダマとルイは騎士団たちと共に教会内へ入っていく。
ダマ
(少々準備不足だが、ここを放棄するか……)
(まさか国の騎士団がここに押し寄せてくるとは思ってもいなかったが……絶好のチャンスだ)
ダマとルイは騎士団についていき、彼らの調査を窺っていた。
イトは隅々まで魔法粒子探知機をかざしていた中、彼の魔法通信機にアマミからのメッセージが届く…。
イト
「バカな……」
アマミから届いた結果に彼は驚く……。
イト
(……作戦変更だ…奴らには魔女を倒せるほどの戦力があるということだ…)
(一体どうやって奴らは魔女二体を倒せた……?)
(調査は継続……そして警戒しなければいけない)
(……いや…一度出たほうがいいのか…?何かヤバい感じがする)
(一度ナハンジさんと合流してからでも遅くはない…)
ダマ
「どうしました?顔色が悪いですよ……?」
ダマがいきなりイトの後ろから話しかけてきた…。
ダマ
「そろそろ結果は出ましたかね?」
イト
「……まだだ」
ダマ
「そうですか……」
イト
(やはり危険だ……この男何か企んでやがる……)
イトは騎士団たちに合図を送る……騎士団たちはその合図に従い、来た道を引き返していく。
ダマ
(遅い……)
騎士団たちは引き返そうとしたが、出口が塞がれていた。
イト
「!?」
騎士団たちはドアを押したり引いたりしたがびくともしない…!
イト
(まずい…!)
イトは腰に隠していた剣を抜いて思いきってドアを斬り込む!…がドアに強力な魔法障壁が張られており、剣が弾かれてしまう!
ダマ
「どうしたんですか?……もうお戻りになられるのですか?」
「まだまだ先はありますよ?調査しに行くのではないのですか?」
「それに武装解除をお願いしていたのですが……約束を破るんですねぇ…国の騎士団は」
「騎士道を行くものとして恥ずかしく無いのですかあ?」
ダマはニヤついた顔でイトを煽っていく…!
イト
「ふざけるな…貴様何を企んでいる?……」
ダマ
「何をおっしゃいますか…何も企んでないですよ」
イト
「そう言うならばこのドアを開けろ!!」
ダマ
「そういうわけには……いきませんなあ」
フオオオオオオオオオ!!
いきなりこの部屋全体に魔方陣が出現する!!
ダマ
「貴方たち国営騎士団は極上のエサですからね!逃す訳にはいかないのですよ!!」
イト
「なんだ!?全員戦闘準備!!」
ダマ
「遅いですね……これだからぬるま湯に浸った奴は…」
魔方陣が輝きだし、その光がイトたち国営騎士団を包み込む…!
ルイ
「ちょっとダマ……!?何なのこれ!?」
ダマはニヤリとしたまま騎士団たちとともに光に包まれていった。
一方外へ待機命令を受けた騎士団たちは教会へ入っていったイトたちと通信が途切れたことに気づいた。
騎士団員
「通信が途絶えた……イト隊長たちの身に何かあったのか!?」
騎士団員たちは騒ぎだす…!
騎士団員
「まずナハンジ隊長へ連絡、我々は教会に突入!!」
残された騎士団員たちは教会の中へ向かう……が、
教会の中から巨体な化け物が二体出てきた。
騎士団員
「なんだ……こいつらは…」
二体の化け物は3mぐらいの高さがあり、それぞれ羊と馬のような顔つきをしていた。
羊のような化け物
「おー…すげえ!こいつらモノホンの国の騎士団だ」
馬のような化け物
「こいつら全部喰っていいの?」
羊のような化け物
「ダマ様が一匹残さず食べろだって」
二体の化け物はニタリと笑みを浮かび、ジリジリ騎士団たちに迫っていく…。




