交差する意図
ルイは明日のスピーチの練習を終えて帰ろうとしていた。
ルイ
(だいたい覚えられたし、明日は何とかなるでしょう)
帰ろうとしたところ、外にある懺悔室の方から爆発音が聞こえてきた…!
ルイ
「何……!?」
ルイが急いで窓から外を見れば、そこには多くの兵士たちが群れをなしていた。
ルイ
「何なのあいつら……テロリスト!?」
しかし、ルイは即座に前言撤回をする…。
その集団はあちこち国旗を掲げており、また兵士たちの防具にはこの国のマークがつけられていたのだ。
ルイ
(もしかして……国の奴らが襲ってきた……!?ナンデ!?)
突然国の騎士団が襲いかかってきたため、ルイたちは混乱する…!
そして信者たちは焦りに焦ってルイのもとへ駆け寄ってくる…。
信者
「ルイ様!!国営騎士団が…我が教会に攻撃を仕掛けてきました!?」
信者
「ルイ様!どういたしましょう!?」
ルイ
「落ち着きなさい……まずは緊急でみんなを講堂に集めなさい!それからキマリ神父を呼びなさい!」
信者
「は……はい!」
騎士団
「うおおおおおおおお!!!」
ルイ
「何……?」
外で騎士団たちは雄叫びをあげて、こちらの教会に攻め込んでくる…!
ルイ
(一体…何が…)
ルイも混乱を隠せない……。
ルイ
「門を早く!門を閉じなさい!!」
信者
「門を閉めろ!早く!!」
大勢の信者たちが教会の門を閉じようとするが、それもむなしく多くの爆撃が教会の門を吹き飛ばした…!
そして国営騎士団が教会内に入り込んでくる……。
ルイ
(……なんて野蛮な……)
騎士団はおよそ20名ぐらい…その中から魔女狩隊のイトが集団の中から出てきた…。
イト
「我々は国営直下の騎士団である!!魔女神聖信仰教会に告ぐ…降伏して魔女を出せ!!」
ルイ
(何を言っているのこいつら……魔女を差し出せ?ここに本当にいると思ってるのか?)
信者
「ルイ様……」
信者たちはルイに目線を向ける……ルイは緊迫した様子で立ち止まっていた。
ルイ
(キマリ……キマリはどこ……!?)
ルイの額には多くの汗が吹き出る……。
騎士団たちは本気だ……何故奴らはいきなり押し寄せてきたのか……。
イト
「ここの代表のものはいないのか…?」
信者
「……」
ルイ
(信者たちがこちらを見つめてくる……)
(ふざけるな…私のような小娘が出たところでどうにかなるのとでも?)
(さっきの信者は何をしている…早くキマリを連れてこい…)
イト
「魔女を出さないのならここを占拠させてもらおう…」
イトは剣を抜き、兵士たちに抜刀の合図を送る。
ルイ
「待って!!」
今の殺伐とした状況に耐えきれずルイは騎士団の前に立つ。
ルイ
「国のものが何のようだ!このようなことをして何を望む!?」
イト
「魔女を匿ったのはお前たちだろう…知らないとは言わせない」
ルイ
「匿った?魔女を?」
イト
「惚けるな……これ以上は無駄だ…イエスかノーか早く答えろ」
イトは剣先をルイへ向ける……!
ルイ
(う……)
(本当に魔女なんているわけないじゃない……)
(匿うってなんのことよ……)
緊張が走る……。ルイが返答を先伸ばししていたことに耐えきれずイトは剣を振りかざす!
ルイ
(あ…)
ルイは死の覚悟をした……。
「魔女を差し出そう」
イトはピタッと止まる……。
ルイとイトは声のほうへ視線をやると、そこにはダマの姿があった……。
信者
「教祖様……!今……なんと?」
信者たちがざわめく……。
ダマ
「魔女を引き渡そう」
信者たち
「!?」
ルイ
(ダマ……今日こっちに来ていたのか)
ダマは普段第一拠点のジョウガの方にいる……。
しかし今日はたまたま第ニ拠点へ来ていたのだ。
信者
「ダマ様!?これはどういうことですか!?我々の魔女を国の犬どもに引き渡すと言うのですか!?」
ダマ
「引き渡す?何を言っている……魔女は我々の集会にしか現れない……それに魔女は我々の所有物ではない」
信者
「……」
イト
「先ほどの言葉……意味を理解して言っているのか?」
ダマ
「もちろん…」
「あなた方国営騎士団がお探しの魔女とはこ奴らのことですよね?
ダマは魔方陣を出現させ、そして何かがその魔方陣から出てくる…。
ドサッ……
イト
「!?」
イトは魔方陣から出てきた物体に目を疑った……!
ダマ
「この小娘たちのことですよね?あなた方が探している魔女は?」
そこには、血まみれのララとカリアの姿があった。
イト
「バカな……お前たちは魔女を匿ったのではないのか!?」
ダマ
「大変お恥ずかしいのですが……魔女信仰のものが彼女たちを魔女であると勘違いしましてね…それでここまで連れてきたんですよ」
「彼女たちは魔女でも何でもない…聞けば単なる盗人だったんですよ」
「自分たちを魔女だと言って、我々信仰教会の者を騙し、あなた方騎士団から逃げつつ、我々の魔女教会に匿って貰おうとしていたのですなぁ…」
「いやはや気づいたときはもう遅かった……もっと早く彼女たちが偽物だと気づいていれば、あなた方とこの様な形で争うことはなかったのに……」
イト
「……」
(奴が言っていることは嘘に違いない…第一人間が魔女二人に勝てるわけないのだ…我々魔女狩部隊ですら歯が立たないのに……)
ダマ
「我が教会のものが無礼をいたしました……すでに彼女たちには天罰を与え、神の元へ送らせました」
「この死体……どうします?」
ダンッ!
イトは強く一歩足踏みをする…!
イト
「そんな小芝居で騙されると思うなよ……?」
ダマ
「小芝居だなんてそんな……私は本当のことをお話しております」
イト
「嘘だな……貴様らが魔女を殺せるはずがない…この死体もどうせ偽物だろう」
ダマ
「本物ですよ?なら調べてみてはいかがですか?」
イト
「この死体を研究所へ送れ…今すぐにだ…リリィ所長に鑑定をお願いしろ」
兵士
「はっ!」
兵士は転送魔法を唱え、ララとカリアらしき死体を国営研究所へ送る。
イト
「鑑定まで時間が数分かかる…それまでこの教会を調査させてもらう」
ダマ
「いいですよ…その代わり武装を解いていただきたい」
イト
「……いいだろう」
(……なんだこいつの落ち着きようは……何か罠がありそうだ……それとも本当に魔女を殺したのか……?だとしたらこいつらのほうがよっぽど危険だ……)
イトは兵士たちに武装を解除させ、一部教会の外へ残し、残りの部隊で教会内へ入ることにした。
そしてイトはナハンジに兵士を通じて伝令を飛ばす……
魔女神聖信仰教会の討伐の許可を願う……と。
本来魔女に協力するものはいかなるものでも弾圧対象となる…。
しかし、ダマの言うように本当に魔女を匿っていない場合は弾圧することができない。
弾圧すべき明瞭な理由がなければ武力介入の許可を得ることができないのだ。
当たり前の話だが、もし無実の人間を殺めてしまえば、国家の規定を破ることになる。魔女神聖信仰教会と言えど、明確な討伐理由がなければ騎士団も手を出すことができないのだ。
イト
(もともと魔女神聖信仰教会は反国家組織の疑いがあった……しかし特に反逆の意図もなく、直接国家に対して災いをもたらすこともなかった……)
(しかし今回は魔女を匿った疑いが大いにある……単なる宗教団体かと思っていたが…何かあるようだ)
イトはダマの言葉を全く信じていなかった。本当に魔女二人を倒したというなれば、むしろこの組織のほうが危険であると考えている。どちらにしろイトはこの組織を弾圧する気だ。
イトは研究所の結果とナハンジの許可を待ちながら、魔女教会の奥へと調査という名目で介入する…。




