真の魔女のありか
ノーズ
「申し訳ございませんダマ様…フクロウを取り逃しました」
ダマ
「……あのフクロウ…探索機を動かすとはただのフクロウではないな…」
「きっとその女を取り戻しにもう一度我々の前に現れるに違いない…一度教会の方へ戻るぞ」
ノーズ
「御意」
ノーズは天井に転送魔法陣を呼び出す…そして意識を失ったミランダをその魔法陣へ放り込む。
ミランダはどこかに転送されてしまった…。
キマリはミランダにやられた化け物のもとへ駆け寄り、声をかける。
キマリ
「サラ!大丈夫か!?」
サラと呼ばれる化け物
「…オト…サン」
キマリ
「今助けてやるからな!」
キマリは懐から小さいカバンを取り出し、中から注射器を出す。
彼はその注射器をサラに打ち込む…。
キマリ
「…様態はどうだ…?」
サラ
「ウン……ヨクナッテきた…アリガトウ…おとうサン」
キマリはサラを担ぎ出し、ダマのもとへ駆け寄る。
ダマ
「娘は無事だったか?」
キマリ
「はい…!何とか…」
ダマたちが地上へと向かっている間、
ララたち一向はトランヴェルに地下へと誘われる。
カリア
(この道……どこへつながっているんだろう)
進めば進むほど辺りが暗くなり、そして地下通路へとたどり着く。
トランヴェルはそのまま通路を直進してララたちを誘導する。
トランヴェル
(勢いでララたちを連れてきてしまったが……あの化け物にララとカリアが太刀打ちできるかどうか…)
(ミランダは全く歯が立たなかった…でも彼女はまだ完全に魔法を使え慣れていなかったし、戦闘の経験も浅いから仕方ない…)
(まだララたちなら勝機があるはず…)
(……)
トランヴェルはララたちに期待しつつもやはり勝てないのではないかと不安になる。その心配から彼はララたちを誘導しつつも、まだマベルを探していた。
マベルならきっと勝てるに違いない…根拠は無いが…やはり勝てるとしたら彼女ぐらいしかいないだろう…。
キマリ
「あ…いた……フクロウだ!」
正面から叫び声が聞こえる…!
トランヴェル
(きたか…化け物……!)
(最後までマベルは見つからなかった…もうララとカリアに託すしかない……!)
そこには化け物のノーズと教祖のダマ、そして神父のキマリがいた。
キマリはフクロウの後ろに信者たちがいることに気づく…。
キマリ
「……なんだお前たち…どうした?」
信者
「教祖様!!魔女をお連れいたしました!!」
ダマ
「魔女…?」
信者
「はい…!こちらがペルー村におられました魔女ララ様とカリア様です!」
キマリ
「魔女……だと?」
カリア
「そうよ!私たちは魔女!厚くもてなしなさい!!」
カリアはエッヘンと言わんばかり両手を腰に添えて、胸をはる。
信者
「愚かなことに国営騎士団の者どもがお二方に襲い掛かっていたのです…
そこで我々が介入し、お二方をここまでお供させて頂いたのです」
キマリ
「はあ!?どういうことだ!?」
「つまりお前たちは国営騎士団に歯向かったというのか!?」
信者
「国営騎士団は悪です…崇高な魔女を討伐するなんて愚かさの極まり…我々人間が奴らを罰せねばなりません」
キマリ
(こいつら…面倒なことをしてくれたな……これでは国営騎士団が黙ってはいないはず…)
ダマ
「……本当にこいつらは魔女なのか?」
信者
「ええ…教祖様…先程カリア様の圧倒的な魔法で騎士団の奴らがひれ伏しておりました…あのような魔法を出せるのは間違いなく魔女でございます!」
ダマ
「ほう…どれどれ…」
ダマは右目を黄色く光らせる…!
トランヴェル
(またあいつの目が黄色く光った…なんだあの目は…)
ダマ
「お前たち…そいつらは魔女ではないぞ」
信者
「え……?」
カリア
「ん?」
信者たちはキョトンとする…。
ダマ
「ただ魔力が高い人間に他ならない…確かに人間にしては規格外だが…魔女ほどの魔力は無い」
信者
「そ…そうなんですか…?…しかし…」
ダマ
「この程度の魔法粒子では魔女とは言えん…恐らくそいつらは魔女と偽って国営騎士団から逃れようとしたに違いない」
トランヴェル
(魔法粒子…?もしかして奴の右目で魔法の強さを計ることができるというのか?)
カリア
(あれ……なんかやばい雰囲気…)
信者
「なんていうことだ…我々は魔女ではない下種な人間を守っていたというのか!?」
キマリ
「そいつらは魔女と騙りのうのうと生きてきた下種にすぎん!奴らを捉えろ!!」
キマリは彼女たちが本物の魔女ではなかったことに安堵した…もし本当の魔女が訪れたとすれば、
この教会の存在は危うくなるからだ。この教会は魔女と交信を行い、魔女から導きを受けることができるという名目で信仰を集めていたが、実際は魔女との交信などしていない。
この魔女神聖信仰協会は架空の魔女を創り上げ、信者たちを集わせた宗教団体に過ぎないのだ。
本物の魔女が現れたとしたら、この協会の魔女が嘘であることがばれてしまう。
キマリ
「ダマ様が魔女でないとおっしゃるなら間違いない!奴らを逃がすな!!」
信者たちは両手を広げ、呪文を唱え始めた!
信者
「おのれ!我々をだましたな!!」
カリア
「やばッ…」
カリアはすぐさま魔法障壁を展開し、信者たちから放たれた魔法を防ぐ!
そして次々とノーズの腕がカリアの魔法障壁にぶつかってくる!
カリア
「ぐう…」
ノーズ
「ほう……先程の魔法使いより強力な魔法障壁だな…ならばこれでどうだ!」
ノーズの無数の腕が鋭利な刃物へと姿を変える!
そして再びカリアの魔法障壁に放たれた!
ガガガガッ!
カリアの魔法障壁にわずかにヒビが入ってしまう…。
カリア
「ダメ……もたない…」
ノーズの攻撃を受け続け、どんどん魔法障壁にヒビが入っていく!
そして魔法障壁が破られてしまった!
カリア
「そんな……!?」
ノーズ
「ここまでだな」
ドオオオォォォ-ッ!!!!
キマリ
「なんだ!?どうした!?」
ノーズがとどめを刺そうと鋭利な腕をカリアに放とうとしたとき、
いきなり地上の方から大きな爆発音が聞こえてきた!
信者
「まさか…国営騎士団…ここまでこぎ着けてきたのか!?」
キマリ
「国営騎士団!?まさかつけられてきたのか貴様ら!?」
信者
「申し訳ございません…」
キマリ
「バカ者どもが……!どうするつもりだ!!」
キマリが激怒している隣でダマがキマリに話しかける。
ダマ
「キマリ」
キマリ
「はい!」
ダマ
「もう起こってしまったことは仕方ない…騎士団は私が何とかしよう」
「ノーズ!この者たちを私が戻るまで片づけておけ」
「キマリ…貴様はここでノーズと共に残れ!」
ノーズ
「御意」
キマリ
「承知しました…しかし…ダマ様一人で大丈夫でしょうか」
ダマ
「案ずるなキマリ…国営騎士団ごときどうということはない…」
「貴様はここで娘の面倒でもしているがいい」
キマリ
「はッ…承知しました…」
キマリは地上へと続く階段を昇っていく。
そしてノーズは多くの鋭利な腕を生やし、カリアたちと対峙する。
カリア
「やっぱり上手くはいかないよね…世の中」
カリアは再び魔法障壁を展開する。
ララ
「カリア…!」
カリア
「ララ…下がってて」
「私が逃げ道を切り開くから…タイミングを見逃さないでね」
トランヴェル
(もしかして…ララは戦えないのか…!?)
(そうだとするとまずい…カリア一人でこの化け物をどうにかできる可能性は低い…)
ノーズは腕をカリアへ飛ばす!
ドドドドドドッ!!
一方地上では国営騎士団が魔女神聖信仰協会を襲撃していた。
教会を爆撃し、信者たちを薙ぎ払う!
イト
「全軍教会内へ突入!魔女を引き出せ!何としてでもだ!!」
イトと兵士たちは教会内へ突入する!




