魔女狩隊再び
日が落ちるころ、ララとカリアはコーネリアスの家から出ようとしていた。
彼女たちはこの「ルナ街」を出て、山を越えてジョウガに向かうことにしたのだ。
コーネリアス
「気を付けていくんだよ…最近山には魔物がでるそうだからね」
ララ
「わかりました…本当にお世話になりました…いつかこの御恩は返します」
コーネリアス
「御恩だなんていいのよ…私も貴方たちに会えて楽しかったわ」
ララ
「それでは…」
ララとカリアは家の玄関に向かおうとしたその時、玄関ドアからノック音が聞こえた。
???
「ごめんください」
コーネリアス
「誰かしら…?」
「ちょっとここで待っててね」
コーネリアスはララとカリアを部屋に待たせて、玄関へと向かう。
そして玄関のドアを少し開けて、わずかな隙間から顔をのぞかせる。
コーネリアス
「どちら様でしょうか」
???
「私国営騎士団の者です」
「少しお伺いしたいのですがよろしいでしょうか」
ララ
(!?)
カリア
「国営騎士団……」
ララとカリアは部屋の窓から玄関の様子を窺う…。
そこには見たことのある兵士がコーネリアスと会話していた。
ララ
(……あの人は…!?)
ララは思い出す…先日のペルー村の出来事を…。
ララ
(魔女狩隊…!)
コーネリアスに訪ねてきたのは魔女狩隊の一人イトであった。
イトは剣士であり、ペルー村で一度ララと交戦していた。
イト
「この写真の二人を探しているのですが、ご存知ですか?」
イトがコーネリアスに見せた写真にはララとカリアの姿が映し出されていた。
コーネリアス
「……!」
コーネリアスは写真を見て一瞬凍ったが、すぐさまイトのお尋ねに対して返答する。
コーネリアス
「さあ……知りません」
イト
「そうですか…ここ数日この二人がこの村に来ていると目撃情報がありましてね」
「この二人は見た目若い娘ですが、極悪な窃盗団なんですよ」
コーネリアス
「…窃盗団…?」
ララ
(私たち…窃盗団として追われていることになっているのね)
カリア
(さすがに世間に対しては魔女がいるとは言えないのかな……)
イト
「そうです…もし見かけましたらすぐ国営騎士団までご連絡頂きたいのです」
カリア
「……わかりました」
イト
「急に押しかけてすいません…それでは」
???
「待って」
イトの後ろから声が聞こえる…。どうやらもう一人国営騎士団の者がいたようだ。
イト
「どうした……クエリ」
クエリと呼ばれる女性は手に測定器のような機械を持っていた。
クエリ
「反応している……」
イト
「!」
「失礼」
イトはいきなりコーネリアスの家へあがりこむ…!
コーネリアス
「ちょっと!何!?」
イトはコーネリアスを押しのけ、家の中へとズカズカと入っていく。
ララ
(こっちに来る!?)
ララとカリアは部屋の奥へと移動し、隠れる場所を探す…!
イトと共にクエリも家の中へ入っていく…。そして手に持っている機械を見て、イトに指示を出す。
クエリ
「イト!こっち!」
イト
「そっちか!」
イトとクエリは走り出す…!
カリア
(足音が徐々に近づいてくる…居場所はバレてる!?)
ララとカリアが戸惑っていた時、カリアは奥の部屋でコーネリアスが手招いているのが見えた。
カリア
「ララ…こっち!」
カリアとララはコーネリアスのもとへ駆け込む…!
コーネリアス
「この裏口から出なさい」
ララ
「コーネリアスさん…!」
コーネリアス
「元気でね…二人とも」
ララ
「本当に…本当にありがとうございました!」
ララが先に裏口から脱出し、カリアもそれに続く。
その際にカリアはコーネリアスにお辞儀する…。
ララとカリアは路地裏に出て、すぐ左へ曲がり街の出口へと向かう…。
しかし、路地裏から中央通りに出ようとした矢先、ララは立ち止まってしまう。
カリア
「どうしたの…?」
ララ
「国営騎士団が…いっぱいいる…」
路地裏の角から覗くとそこには大勢の騎士団員が中央通りに待機していた。
数は尋常なぐらい多い…60人ぐらいは間違いなくいる。
ララ
「このままじゃ…通れそうにない」
カリア
「ララ!後ろから来てる!」
ララが振り返れば、騎士団員が三人ほどこちらへ向かってきている。
ララ
(もはや一か八かバレないように中央通りを抜けるしかない)
ララとカリアは路地裏から中央通りに出る…。
兵士たちにばれないように恐る恐る歩く…。
しかし、騎士団の一人がララたちに気付く!
そして彼女たちへ向かって歩き出した。
ララ
(もし…やり過ごせなかったら、走ろう…)
カリア
(うん……わかった…)
二人は下を向きながら真直ぐ中央通りを横断していく。
兵士
「そこの二人!止まりなさい」
ララとカリアは兵士の言う通り足を止める…。
兵士
「お前たち……まさか…」
ララとカリアが兵士の反応からバレたことを察し、走り出そうとした…がその時、
「魔女は神を超越した存在、我々を導いてくれる存在」
「魔女こそ唯一の人類の救いであり光」
「魔女を信じ、魔女から教えを請いましょう」
兵士
「……なんだあの集団…」
そこに魔女信仰教会の集団が列をなして進行してきた。
ララ
(チャンス!)
兵士が集団に目をやっている隙をつき、そそくさと中央通りを歩き出す。
「おい!!」
遠方から声が聞こえる……。
イト
「そこに魔女がいるぞ!!戦闘準備!!!」
ララ
「!?」
カリア
「ララ!走ろう!」
ララとカリアは走り出す!
イト
「逃げ出したぞ!あの二人だ!追え!!」
イトの指示に兵士たちは一斉にララたちへ向かっていく!
通行人A
「……なんだ?」
通行人B
「今…魔女って聞こえたけど…」
周りで歩行していた一般人たちが騒ぎ出す…!
クエリ
「イト!魔女って言っちゃダメでしょ!!」
イト
「ぐ……」
国営騎士団たちはララたちを窃盗団の一員として見立て、
調査しに来たという「設定」で来ていたが…イトは思わず魔女と言ってしまった。
魔女がこの街にいると知れ渡ってしまったら大パニックになってしまうため、
あくまでも窃盗団が逃げ込んできたということにしていたのだ。
魔女信仰教会の一員A
「魔女…?」
魔女信仰教会の一員B
「まさか……先日聞いたペルー村の魔女!?」
一般人だけでなく、魔女信仰教会の者たちもざわめき始めた。
ララとカリアは必死に走り出すものの、四方八方から兵士が現れ、囲まれてしまう…!
ララとカリアはお互いに背中を合わせ、兵士たちと対峙する…。
カリア
「できれば戦闘は避けたかったけど…やるしかない」
ララ
「……カリア…私…」
カリア
「大丈夫…私一人で何とか逃げ道を作ってみる」
ララはここ数日魔法を使えない状態になっていた。
原因はわからない…魔法が使えないためコーネリアスの家にいた時もカリアを魔法で治療することができないでいた。
カリアは覚悟を決めて体中に魔力を貯め込む…。
イト
「どけ!」
魔女狩隊のイトが兵士たちの間を無理やりこじ開け、ララたちへ向かっていく!
イト
「覚悟!」
イトは剣を抜き、ララへ切りかかる!
そこにカリアがララをかばい、魔法障壁でイトの攻撃を防ぐ!
イトは魔法障壁によって剣と共にはじかれ、仰け反る…。
クエリ
「イト!どいて!!」
イトは瞬時にその場から抜け出し、クエリから電撃の魔法が放たれる!
バシュウウウウ!!!
電撃はカリアの魔法障壁に傷一つつけることなく消滅する。
クエリ
(私の最強魔法が…効かない!?)
兵士たちも一斉に魔法を唱え、カリアに炎を放つ!
ボボボボボボボボッ!!!
次々に魔法が魔法障壁にぶつかるが、それもむなしく魔法障壁はビクともしない。
兵士
「ば…化けもの…」
クエリ
(我が国のエリートたちの魔法が全く通じない…魔女はこれほどまでに強い魔力を持っているのか!?)
兵士たちは力の差を見せつけられ、立ち退く…。
イト
「うろたえるな!打ち続けろ!!魔女とはいえ力は無限大ではないはずだ!」
兵士たちは命令に従い、再び呪文を唱え始める…!
カリア
「お願い…!ここを通してください!!」
「私たちは貴方たちと戦いたくはありません!」
「貴方たちに危害を加えるつもりもないです!!お願い…通して!!」
イト
「騙されるなよ兵士たちよ…知っての通り奴らはペルー村の住民を皆殺しにしている」
「絶対に通すな!!」
ララ
「ふざけないで!!」
「私たちがペルー村の人たちを殺したなんてふざけたことを言うな!!!」
ララは涙目になり、大声で叫ぶ…!
カリアもララの言葉を聞き、何かが心の中から込みあがってきて嗚咽が漏れる…。
兵士たちはララたちの言動に困惑をし始める…。
イト
「魔女はそうやって演技をして嘘をついて何度も逃げていった!騙されるんじゃない!!」
カリア
「演技…?嘘…?そんなのあるわけ…ないだろう!!!」
カリアから莫大な魔力が放出され、魔法障壁が拡大していく!
そして周りにいた兵士たちは吹き飛ばされる!!
クエリ
「ぐ……す…凄まじい…」
イト
「怯むな!!!魔法を放て!!」
ドドドドドドドドドドッッッッ!!!
多くの炎が魔法障壁へ激突していく!
カリア
「ううう…」
カリアの魔法障壁が徐々に弱まっていく…。
カリアは普段であればこのくらいの魔法なら防ぐことができるが、
病み上がりのため十分に本来の力を発揮できない…。
イト
「もらった!!!」
イトは剣に魔力を込めて魔法障壁へ切りかかる!
パリイイイイイン…
カリアが張った魔法障壁が破られる…!
イトは続いてカリアに向かって猛スピードで飛び込む!
ララ
「カリア!!」
イト
「くらえ!」
カリア
「!」
イトの剣がカリアを襲う!
バキイイィィ!!!
イトの剣が折れた!
カリアの体にはわずかに魔法障壁が貼られていたのだ。
イト
「ぐ…!?」
イトは腰につけているもう一本の剣を抜こうとした…が、
火の魔法がイトにヒットする!
イト
「ぐあああ!?な…なんだ!?」
イトだけではなく兵士たちが次々と火の魔法に襲われる!
クエリ
「こいつら……魔女神聖信仰教会…!」
なんと魔女信仰教会の者たちが国営騎士団に攻撃を仕掛けたのだ。
魔女信仰教会C
「魔女たちを救え!我々のもとに導くのだ!」
魔女信仰教会D
「愚かな国営騎士団どもよ…魔女のお許しすら否定するとは愚かにもほどがあるぞ!!」
魔女信仰教会と国営騎士団が激突し始める!
ララ
「…何…何が起こっているの?」
魔女信仰教会E
「魔女よ…こちらへ避難してください!」
魔女信仰教会F
「我々が御供させていただきます!」
ララとカリアは魔女信仰教会の者たちに助けられ、教会の方へ導かれる…。




