地下実験
化け物が目をギラギラさせ、こちらに襲いかかろうとしている。
化け物
「ごハン…やっとミツケタ」
ミランダ
「出たな…化け物……!」
ミランダはトランヴェルの脱け殻の体を投げ捨て、
右手をかまえて化け物と対峙する。
トランヴェル
(俺の体投げ捨てるな!?)
ミランダ
「かかってくるならかかってこい…!」
化け物
「ガア!!」
化け物はミランダに襲いかかる!
ミランダは右手を化け物に向けて魔法を当てようとするが、化け物のスピードが速すぎて捉えることができなかった。
即座に左腹を噛みきられてしまう!
トランヴェル
(ミランダ!?)
ミランダ
「そんな…!」
化け物はミランダから噛みきった肉を頬張りながら、ニタリと笑みを浮かべる……。
ミランダはあまりの痛みに左手でお腹を押さえる……。
バチバチッ!
トランヴェル
(!?)
ミランダが左手でお腹を触った瞬間、噛みきられたお腹の傷が一瞬でもとの状態に戻った…!
ミランダ
「ん……治った!」
トランヴェル
(一瞬にして傷がふさがった……いやふさがったというより噛みきられた肉すら再生している……すげえ!?)
化け物
「ヴぅ!?ナンデ!?」
化け物はミランダの回復に驚いていた……と思いきや、
化け物
「ニクがさいセイするならタベホウダイだ!!」
化け物は再び四足歩行でミランダに立ち向かっていく!
ミランダ
「何度何度もやられて……」
「たまるか!!」
バチッ!!
ミランダの右手から見えない魔法が放たれた!
化け物は吹っ飛ばされ、壁に激突する…!
化け物
「イタイ……イタ」
バチバチッ!!
さらにミランダは右手から魔法を放ち、追い討ちをかける!
化け物
「!!!?」
化け物はその場で倒れ、ピクピクと痙攣していた。
トランヴェル
(ミランダの魔法は目で全く見えない……一体どんな魔法なんだろうか……?)
化け物
(タス……ケテ…オト……サン)
ミランダ
「これで……止め!」
化け物
「オトうサン!!」
ダダダダダ!!
いきなり上方から銃弾が飛んできた!
ミランダ
「あ……ぐ…」
ミランダは右手を上方に向けて魔法障壁を張り、
何とか銃弾を防いだ!
上方を見上げれば、ガトリングガンを持った神父キマリがそこに立っていた。
トランヴェル
(ガトリングガンかよ……おいおい…とうとうファンタジーっぽく無くなってきたぞ)
キマリ
「大丈夫か!?サヤ!!」
化け物
「オト……サ……オトウサん…」
キマリ
「おのれ……まさか餌のなかにとんだ病原体が混ざっていたようだな…」
「最近の若いガキは魔法が普通に使えるから油断ならねぇな…!」
キマリはガトリングガンをミランダに放つ!!
そしてミランダももう一度右手で銃弾を防ぐ…!
ミランダ
「なんなのあの銃……あんなに連発で打ってくるなんて!?」
トランヴェル
(ミランダ!耐えろ!!いずれ弾は切れるはずだ…!)
キマリ
「くそ……銃弾ではダメか……ならば仕方ない」
キマリは胸ポケットからスイッチの付いたリモコンを取り出す。
トランヴェル
(なんだ……あのスイッチは…?)
キマリ
「我が娘をいたぶった罪……罰せられるがいい!」
キマリはそういい放ち、スイッチを押す……!
ガゴン……
周りのカプセルから何か音が聞こえる……。
トランヴェル
(まさか……!?)
ウィーン……
カプセルの扉が一斉に開かれる!
カプセルに入っていた液体があちこちから排出される!
そしてカプセルの扉から化け物が次々と出てきた……。
ミランダ
「ば……化け物が…いっぱい!?」
この部屋にあるほとんどのカプセルから化け物が現れる。
最低でも50体ぐらいはいる…。
ミランダとトランヴェルは化け物たちに囲まれてしまう…。
トランヴェル
(万事休すか……)
ミランダ
「流石にこんなに相手はできないょ……」
ミランダはいきなり弱気になり、先程までの威勢が無くなっていた。
キマリ
「さあ魔物たちよ!お前らの極上のエサが目の前にあるぞ!
早い者勝ちだ!!」
トランヴェル
(こいつ今……魔物って言ったな……もしかして魔物って……)
魔物
「人間……肉…!」
魔物
「体が崩れる……肉を摂取しないと…」
魔物
「オレガ……もらう!!」
一斉に魔物たちが襲ってきた!!
ミランダ
「わわわッ!!どうしたらいいのよ!?トランヴェル!!」
トランヴェル
(取り敢えず魔法障壁を……あ)
トランヴェルの黄金の体が先ほどミランダに投げ捨てられた体へ戻っていく……!
トランヴェル
(ヤバイ…時間切れだ!?)
トランヴェルは体のもとへ還り、ミランダと話すことができなくなってしまった…。
魔物
「肉ううううううううう!!」
ミランダ
「うわああああああああ!!」
ミランダは右手から魔法障壁を張る!
バチバチッ!!
魔物
「ぐう…くそ……通れない……!?」
ミランダは半径1メートルの円型の魔法障壁を張り、魔物の進行を防いだ…!
ミランダ
「ふ……ふふ…」
ミランダはいきなり笑みをこぼし始めた……。
トランヴェル
(どうしたんだ……気でも触れたのか!?)
ミランダ
「わかった…わかったよ!」
「取り敢えず右手をかざしとけば何とかなる!」
あはははとミランダは笑いあげる…。
トランヴェル
(しかし…このままではまずい…ミランダの魔力が切れたらおしまいだ!?)
ミランダ
「もうお前らのような化け物たちにいいようにされてたまるか……」
ミランダの張る魔法障壁が徐々に広くなっていく……!
ミランダ
「お前らは絶対に許さない!あはははッ!」
トランヴェル
(さっきからミランダの様子がおかしい……今までの言動から少々好戦的で粗っぽい性格だったけど……はっ)
トランヴェルはミランダの口調からペルー村のララを思い出す……。
トランヴェル
(あの時ララもそうだった……魔女は何故か戦っていくうちに冷酷な性格へとかわっていくんだ…)
(ミランダにもその兆候が芽生え始めているのか!?)
ミランダ
「この……ゲログズ野郎!!」
ミランダの魔法障壁が一気に広がっていく!その障壁に触れた魔物は跡形もなく消え去っていった!
キマリ
「ば……バカな……魔物たちが…」
魔物たちのほとんどが消滅し、残った魔物は後退りをしてミランダを恐れていた……。
ミランダ
「これでわかったか!!化け物ども!!」
「私は最強の魔女!ミランダよ!!」
ミランダはまた威勢を取り戻し、痛々しいほど高らかに名を告げた!
キマリ
「ま……魔女……だと…!?」
トランヴェル
(そうだ…お前らが今相手にしているのはお前らが神として崇めている魔女なんだぞ!)
(ただ…マベルいわく私が生み出した魔女は実在の魔女には及ばないらしいが……しかし、お前らより強力で凶悪な存在であることには間違いない!)
キマリ
「まさか……本当に……魔女…」
???
「何をしている!!」
キマリがうろたえている最中、突如後ろから大声が聞こえてきた。
キマリ
「あ……ダマ様!」
後ろからダマと呼ばれるスーツを着た男が歩いてきた……。
ダマ
「何をしている!!こんなにサンプルを損失させおって!!」
キマリ
「も……申し訳ございません!」
「我が娘の食料の中に……魔女が…魔女がいたんです」
ダマ
「魔女?……あの娘が?」
ダマの右目がいきなり黄色に光だす……!
トランヴェル
(なんだ!?あの親父……何をした!?)
ダマ
「うろたえるなキマリ……あれは魔女ではない」
キマリ
「え……いやしかし、魔物たちを一瞬で……」
ダマ
「あれは魔力が強い人間に他ならない……魔女ほどの魔力は保持していないぞ」
トランヴェル
(なんだこの親父……マベルみたいなことを言いやがる…)
ダマ
「サンプルでは太刀打ちできないのはわかる」
「……少々粋のいい材料が手に入りそうだな…なら我が傑作のキメラを使うとするか」
トランヴェル
(傑作の…キメラ?)
ダマ
「おいノーズ!出番だ!」
ダマの大声と共にダマの横から黒い転送魔法陣が出現した。
そこから図体のでかい化け物が現れる!
その化け物はパッと見ワニのような顔をしていた。
そして体中に人間の顔らしきものがたくさんついており、
腕も数本はえていた。
ノーズ
「お呼びでしょうかダマ様」
ダマ
「あの女を捉えろ…できれば無傷でな」
ノーズ
「承知」
ノーズと呼ばれる化け物の体から無数の腕が伸びていく!!
そして、ミランダの両手両足を掴み、体を拘束する…!
ミランダ
「嫌ッ!!」
ミランダは右手から見えない魔法を繰り出す!
しかしミランダを掴んでいる腕にダメージが通らない!
ノーズ
「無駄だ…大人しくしていろ肉」
ミランダは抵抗するものの、うまく身動きすることができず、
さらに魔法障壁を張ってもノーズの腕から逃れることができない…!
トランヴェル
(ミランダ!?)
ミランダ
「やだ…離せ!この変態!!」
ミランダの首にもう数本の腕が巻き付く!
ミランダ
「う…」
ギチギチ…
ミランダの首が徐々に絞められていき、彼女は意識を失ってしまう…。
トランヴェル
(ミランダ!!)
ダマ
「よくやったノーズ」
ノーズ
「あのフクロウはどうします?」
ダマ
「殺せ」
トランヴェル
(まずい!?)
無数の腕がトランヴェルに襲いかかる!




