謎の地下室
ミランダとトランヴェルは奥へ奥へと進んでいく。
進んでいく中、トランヴェルはミランダに先ほどの続きを話し出す。トランヴェルのこの状態は30分しかもたないということや、マベルという魔女がいるということ、さらに今までにミランダのように魔女にした人間が二人いることを説明した。
ミランダ
(……このトランヴェルというフクロウ…やっぱ信用しちゃダメだ…)
(魔女をたくさん生み出している親玉なのかな…マベルという魔女もこのフクロウが生み出したんじゃないのかな?)
トランヴェルは自分の説明を喋り終わり、続いてミランダのことについて問いかける。
トランヴェル
(そう言えば君はどうしてこの地下にいたの?)
ミランダ
(……)
「私は連れ去られてここに来たの……」
ミランダは語りだす…トランヴェルと出会う前の出来事を。
元々ミランダはルナ街で母と買い物をしていた。
ミランダの母が肉屋で買い物しているとき、
たまたま周りを見渡していた彼女は路地裏で泣いている女の子を見つけた。
彼女はその女の子に尋ねる…。
ミランダ
「どうしたの?」
女の子
「みーしゃ…」
ミランダ
「みーしゃ?」
女の子
「ぬいぐるみ……」
ミランダ
「ぬいぐるみ…?ぬいぐるみを無くしたの?」
女の子は泣きながら頷く…。
どうやらその子はミーシャというぬいぐるみを無くしたそうだ。
そこでミランダは女の子と一緒に路地裏の奥に行ってぬいぐるみを探しにいった。
始めは探しても探しても全く見つからなかった…。
探している中、ミランダが路地裏のゴミ箱付近を通った際、何か異様な雰囲気を感じた。
彼女はその雰囲気に飲み込まれるようにゴミ箱へと近づいた。
そしてそこには猫のぬいぐるみが落ちていたのだ…。
ミランダ
(これかな…)
ミランダがその猫をぬいぐるみを掴んだ瞬間、ぬいぐるみから黒い手が無数に現れた!
そしてその手はミランダの顔、体のあちらこちらに巻き付く!
それからぬいぐるみの口が大きく開いた…!
その口の中は真っ暗で、不気味さを感じる…!
ミランダは一瞬にしてその口の中へと運ばれてしまった!
その出来事はわずか数秒の出来事だった…。
それからミランダが気付けば、この地下に横たわっていたのだ。
誰もいない薄暗い通路…出口を探すものの全く見つからない。
ミランダは震えた…このまま死んでしまうのかと不安に押しつぶされそうになっていた。
ミランダが己の境遇に絶望し、座り込んでいると、どこからか人の声が聞こえてきた。
「おーい」
ミランダは声が聞こえる方を振り返った…そこには人が三人いたのだ。
話を聞けば、彼らもミランダと同じようにぬいぐるみの口に放り込まれ、この通路に閉じ込められたという。
彼らはここに来て三日ほど経ったそうだが、一向に出口が見当たらず、ずっと彷徨っていた。
ミランダはその時、自分以外にも同じ境遇の人がいて安心していた。
一人より複数人いることに安堵を感じていたのだ。
ミランダたちは力を合わせて出口を探すことにした。
それから何日経ったのか……やはりどこ歩いても出口は見つからなかった。
不気味なことにお腹は空かず、眠気もほとんどなかった。
自分は本当に生きているのか疑わしいぐらいに不気味な状況だった。
そしてある日、彼らはついに出会ってしまう…あの化け物に。
その化け物は彼らを見た瞬間、速攻牙を向けてきた!
彼らは恐ろしいあまり逃げ出した。しかし、その中の1人が躓いてこけてしまった。
その一人はあっという間に化け物に捕食されてしまったのだ。
その場面を見た残り三人は阿鼻叫喚になって、走り回った!
しかし、化け物のスピードは彼らを凌いでおり、すぐさま追いつかれてしまった。
一人、また一人捕食されていく…!
他の仲間が捕食されている隙に彼女は何とか化け物から逃げ出すことに成功した。
それから数日後、再び彼女は化け物に襲われてしまう…。
そして運がいいことにトランヴェルと出会うことができたのだ。
ミランダはトランヴェルにこれまでの経緯を全部説明した。
トランヴェル
(……なるほど)
(まんまと罠にかけられてここに来たってわけか)
ミランダ
「私…永遠にここから出れないんじゃないかって思ってた…」
「歩き回っても歩き回っても出口は見えないし…同じ境遇の人と出会っても、
皆食べられてしまった…もうダメかと思っていた」
トランヴェル
(それは怖かったね…でももう大丈夫だ!)
(君は魔女の力を手に入れた!化け物に襲われても大丈夫!)
ミランダ
「……そうね」
「もう逃げ回るのだけはごめんだ」
「次あいつにあったら粉々のバキバキにしてやるわ!」
「むしろ早く出てきやがれ!返り討ちにしてやる!」
ミランダはだんだん口調が荒くなっていった。
トランヴェル
(まあミランダ荒れるのも仕方ない…殺されるところだったんだからな…)
(さっきより元気になったようだし、よかったよかった)
(しかし、この教会の奴らは一体どんな集団なのだろう…魔女を神とあがめているし、
あんな化け物まで飼っている…奴らは何者なんだ?)
トランヴェルがあれこれ考えているうちに広い部屋にたどり着く。
この部屋の天井の高さは5mぐらい、見渡す限りなかなか広い部屋だった。
そして部屋の奥に目立つ物体が置かれていた。
ミランダ
「…なにこれ?」
トランヴェル
(……!?)
彼らが見た物体はだいたい幅が2m、高さが4mぐらいの物体だ。
そしてその物体は見た目金属でできているように見えた。
またその物体には蜘蛛のように足が何本かついていた。
ミランダ
「……変な物体…なんだろうこれ」
ミランダがその物体を触って確かめる。
そして片手をグーにしてドアをノックするように叩いた。
コツコツッ
ミランダ
「頑丈ね…でも中は空洞なのかしら?」
ミランダが物体に対してあれこれ考察している中、
トランヴェルはこの物体に対して違和感を感じていた。
トランヴェル
(なんだろうこれ……機械…?)
(何というかこの世界に似合わない……)
トランヴェルは今までこのような近代的な物体をこの世界で見たことがなかった。
この中世のような世界にこんな近代的な物体があることに違和感を感じるのだ。
トランヴェル
(……どうみても「機械」だ)
(こんな魔法だの魔女だの言っている世界観にこんなものがあるなんて……)
トランヴェルは改めて今自分がいる世界について考えを巡らせた。
元々トランヴェルは気がつけばこの世界に当たり前のように存在していた。
そして魔女のフクロウとしてこの世界に存在していたのだ。
この世界は魔法と剣が主流のファンタジーだ…剣士やら魔法使いやらありふれたファンタジーの世界なのだ。
単に自分はそんな異世界に転移したように思っていたが、どうやらこの世界にも科学技術的なものもあるようだ。
トランヴェル
(思い返せばこの物体以外にも科学的な近代的なモノは見ていたな…)
(ペルー村の魔法障壁装置やドラフという兵士が背負っていた変な機械…わりと機械がこの世界には見受けられる)
(この世界は魔法と機械が混在しているのか…)
ミランダ
「これ…家なのかな…でもどこにも入れないし、何か動かせるわけでもない」
ミランダが、あれこれ機械を触っても何も反応しない…。
トランヴェル
(……仕方ない…これはほっておいて先へ進もう)
彼らは機械の後ろにある扉を開き、さらに奥へと進むことにした。
広い部屋を出るとそこにはさらに目を疑うような景色を見ることになる。
ミランダ
「……また変な部屋に出た」
トランヴェル
(え……)
彼らが次見たものは、多くのカプセルが設置された部屋だった。
そのカプセルは人体が入るぐらいの大きさで、中には生物らしきグロテスクな物体が入っていた。
ミランダ
「う……気持ち悪い…何これ…」
トランヴェル
(おいおい…マジかよ…)
(こういうのSFやゾンビ映画で見たことのあるぞ…)
部屋の中は薄暗く、カプセルが緑色に光っていた…。
カプセルにはLEDらしきものが付いており、まるで中に入っているグロテスクな物体を展示しているようだった。
奥へと進むが、なかなかこの部屋から出られない。数え切れないほどのカプセルが陳列していた。
ミランダ
「なんなのここ…」
トランヴェル
(何かの実験室かなここ…このカプセルに入っている生物を使って何か実験しているのだろうか)
(入口にあったカプセルには何の生物なのかわからないぐらいグチャグチャのモノが入っていたけど…ここらへんのカプセルは人のような形をしたものが入っているな…)
ミランダはカプセルから目をそらしながら前へ前へと早歩きで進んでいく。
対してトランヴェルはカプセルの中に入っている生物が何なのか知るために、
じっとカプセルを凝視していた。
トランヴェル
(ここら辺のカプセルにはいろんな動物が入っている…猫とか犬とか馬とか…)
(…奥へ行けば行くほどカプセルの中身が原型をとどめている…)
さらに奥へ行くとさらに広い部屋にたどり着く。
そこには地面から天井まで8mぐらいあり、壁に沿って多くのカプセルが設置されていた。
ミランダ
「ひッ…」
ミランダはその部屋にあるカプセルの中身を見て固まってしまう。
トランヴェル
(これは……)
そこのカプセルの中には無数の人間が入っていた。
その人間たちは頭や手足が他の動物であったり、また人間同士が
くっついていたり、かなりグロテスクな状態でカプセルに閉じ込められていた。
トランヴェル
(何なんだ…この教会は…こんなもの保有して何しようとしているんだ…)
(まさかこれ…キメラってやつか?それを人工的に試そうとしているのか?)
あまりの衝撃にトランヴェルたちはその場で固まっていたが、後ろから聞き覚えのある唸り声が聞こえてくる…。
トランヴェル
(この声は…)
彼らが来た道へ振り返ると、そこには先程の魔物らしき化け物が目を光らせていた…!




