袖を濡らした夜
コーネリアス
「ただいまー」
ララ
「お帰りなさい」
コーネリアス
「今すっごい雨が降ってきた…よかった早めに家に帰ってこれて」
コーネリアスは買い物袋を机の上に置く…。
そしてそこにはカリアの姿があった。
コーネリアス
「あ……目が覚めたんだ…どう体調は?」
カリア
「助けてくれてありがとう…お陰さまで大分良くなりました」
コーネリアス
「良かった良かった!よし晩御飯の準備するからちょっと待ってて」
カリア
「そんな…大丈夫です…」
コーネリアス
「いいのいいの…座って待ってて」
ララ
「せめてお手伝いだけでも…」
コーネリアス
「いいからいいから!」
コーネリアスはララたちを椅子に座らせ、そして台所に立ち、料理を始める。
ララはコーネリアスの後ろ姿を見て母親を思い出す……。
ララが幼い頃、毎日母親がご飯を作ってくれていた。
あの頃のペルー村での日々を懐かしく思う…そして思い出す度に切ない気持ちでいっぱいだった。
グツグツと鍋から煮える音が聞こえてくる。
ほんわかと美味しそうな匂いが部屋中に広がる。
カリア
(シチューかな……)
ララとカリアはホッとした気分でコーネリアスの作るご飯を待つ……。
待つこと約40分、晩御飯が出来上がった。
コーネリアス
「はい……どうぞ」
ララ
「いただきます」
カリア
「美味しい…」
コーネリアス
「それはよかった」
3人は食事を終えて、食器を片付け再び椅子に腰をおろす。
コーネリアスは淹れたてのコーヒーをララとカリアに注ぐ。
ララ
「寝泊まりだけじゃなく……美味しい料理まで本当に感謝してます」
コーネリアス
「いいの…そんなに気を使わなくても」
「ところであなたたちはどこから来たの?」
カリア
「……えっと」
カリアはペルー村から来たことを言うか言わないか迷っていた。
自分たちは今王国から追われている身なのだ。
下手に言うと逃亡の足かせになる可能性がある。
瞬時に迷ったあげく、彼女は嘘をつくことにした。
カリア
「私たちはカグヤから来ました」
コーネリアス
「カグヤから?また遠くから来たのね」
ララ
「……」
カリア
「明日にはここから出たいと思います……本当にお世話になりました」
コーネリアス
「そう……」
「少しの間だったけど…よかったわ」
コーネリアスはコーヒーを飲み干し、会話を続ける。
コーネリアス
「貴女たちを見ていると自分の娘を思い出すの」
「ちょうど貴女たちくらいの年齢だし…」
ララ
「娘さんがいらっしゃるのですね…」
コーネリアス
「ええ…」
「ただね……」
コーネリアスはポットからもう一杯コーヒーをカップに注ぐ。
「…私の娘は今行方不明なの」
「もう半年も帰ってきていない」
「ずっと探しては見つからず…気がつけば今日でちょうど3ヶ月経つわ…」
ララ
「そうなんですか…」
コーネリアス
「でもね…昨日貴女たちに会えて本当によかったわ」
「娘が帰ってこない日々に耐えられそうに無かったけど…貴女たちが家に来てくれたお陰で昨日今日は歳悩まされることは無かった…」
「こちらこそありがとうね…」
その後、ララとカリアは寝室に向かい、複雑な気持ちでベッドに横たわる…。
自分たちの境遇もそうだが、コーネリアスの言葉にもどこか胸にささる…。
ララもカリアにも家族がいないのだ…。
カリア
(お父さん……)
(私……これから生きていけるのかな……)
カリアが今後の不安に押し潰されそうな最中、
隣の部屋から微かに泣き声が聞こえてきた。
「う……うぅ……」
今日は外も内も大雨だった…。




