地下通路の生物
マベルとトランヴェルは地下へと進む。
あたりは薄暗いが、足元が見えるように所々ランプが設けられている。マベルが言うにはこの場所はどこかで見たことがあるとのこと。何やら怪しげな雰囲気が漂う…。何かが出てきそうだ…。
進むこと5分くらい経つが特に変わりはない…ひたすら一本道が続いてる。
マベル
「こんなに道が長いんだから絶対何かあるよね…ワクワクする」
マベルは意気揚々と進んでいるが、トランヴェルは余りにも不穏な感じがするため、ビクビクしていた。
マベル
「あれ…行き止まりだ」
一本道をずーっと進んでいたが、行き着いた先は行き止まりだった。
マベル
「絶対何かあるよ…何か仕掛けとか無いかな」
マベルは行き止まりのスペースで何か仕掛けが無いかとあちこち壁を触る。特になにも反応も無く、行き詰まってしまった。
マベル
「うーん……もしかして今まで来た道の中で隠し扉とかあったのかな」
マベルは元来た道へ戻り、周りの壁や天井を気にしながら進む。
トランヴェルもあちこち視線をやって何かないか探していたが、特にそれらしきものは見あたらなかった。結局スタート地点へ戻ってしまい、何も見つけることができなかった。
マベル
「何も無いはずが無いんだけどな~」
マベルが諦めようとしていたその時、トランヴェルは壁に何かあることに気づく。
トランヴェル
(……このブロックだけ色が違う)
トランヴェルは色が違うブロックに飛び込み、足で押してみる。
すると、その壁がいきなり回転し出す!
壁と共にトランヴェルは回転し、裏へと回ってしまう。
ガゴン!
トランヴェル
(んん!?)
(壁が回転した……これ隠し扉だったのか)
トランヴェルはマベルがいるフロアへ戻ろうと、もう一度色違いのブロックを押したが……
トランヴェル
(あれ……回転しない)
何度もブロックを押したが壁は回転しない……。
トランヴェル
(……もしかして戻るためのブロックが他にあるのか?)
トランヴェルは必死に他にブロックが無いか探した。あちこち押してみたが一行に反応がない……。
トランヴェル
(まずい……マベルはきっと私が壁とともに回転したところを見ていない……)
(このままでは元いた場所に帰れない……)
トランヴェルがブロックを探している最中、後ろから何か音が聞こえてくる。
グゥゥ……
トランヴェル
(……なんだ!?)
トランヴェルが後ろに振り向くとそこには通路があり、その先は真っ暗だ。
そしてその暗闇の中から声が聞こえてくるのだ…。
グアアアア!!
突然暗闇の中から何かが襲いかかってくる!?
トランヴェル
(!?)
トランヴェルは謎の生物にぶつかる!
ガッ!
トランヴェルは謎の生物に捕まった…。
そして彼は見た…その生物の顔を…。
トランヴェル
(……なんだこいつは!?)
その生物の顔はパッと見た感じ少女だった…。
しかし、頭から獣の耳が付いており、口からやや長いキバが見える。そしてその生物の手は人間のそれに近いが、肉球が付いているのでどちらかと言えば猫のそれに近い。なんというか人間と猫を足して二で割ったような存在に見える。
謎の生物
「んー……食べモノ?」
トランヴェル
(喋った!?)
謎の生物
「エモノ……じゃない…ハト?」
トランヴェル
(どこがハトなんだ…フクロウだよ!?)
謎の生物
「でも顔が人間っぽい…あっ」
「もしかして仲間?」
トランヴェル
(もしかしてフクロウを知らないのか…)
(こいつみた感じ…魔物かな)
トランヴェルはペルー村の魔物たちを思い出した。
トランヴェル
(魔物と呼ばれるものたちは皆人間と動物が混ざったような存在だった……もしかしてこいつも魔物なのかもしれない)
(「顔が人間っぽいから仲間」っていう発言は私のことを魔物だと思ったから言ったんだろうな……)
謎の魔物らしき生物
「獲物じゃ無いのかーザンネン」
「オナカ…スイタ」
トランヴェル
(こいつ…たまにカタコトで言葉をしゃべるな……)
謎の魔物らしき生物
「ア……そうだ…こないだ取り逃がした獲物がイタな」
「ソイツを探しにイコウ!」
「オマエモついてこい」
謎の生物はトランヴェルを抱えたまま先の通路へ進む。
トランヴェル
(ダメだ……体が動かない…)
ガッチリと捕まれて身動きができないトランヴェル。
謎の生物は四つん這いになって通路を駆ける。
トランヴェル
(どうしたものか……)
トランヴェルがあれこれ考えている中、謎の生物はいきなり叫び出す!
謎の魔物らしき生物
「みつけたーエモノー!!」
謎の生物が向かう先には……一人の人間が歩いていた。
トランヴェル
「やはり……獲物って人間か!?」
少女
「……来た!?」
少女が謎の生物から逃げようと振り向いて走り出そうとした時、
すでにその人間の左腕は謎の生物に噛まれていた……!
少女
「ア……」
「嫌……嫌ああああああああ!!」
謎の生物はその人間をむさぼる……!
少女
「痛い!痛い!!があッ……いやだああああ」
「お父さん……お母さん……」
トランヴェル
(ぐ……こいつ!)
トランヴェルは謎の生物にくちばしで攻撃する!
謎の魔物らしき生物
「イタッ」
一瞬謎の生物の腕の引き締まりが緩くなる!
トランヴェルは瞬時に腕から抜けて、謎の生物の目に足の爪を差し込んだ!!
謎の魔物らしき生物
「ガアッ……!!」
謎の生物は目を突かれて怯む!
そこにトランヴェルはさらに足の爪で追撃する!!
謎の魔物らしき生物
「痛い……痛いヨ!!おトウさん!!」
謎の生物は逃げていく……。
トランヴェル
(なんだよ……私も戦おうと思えば戦えるじゃないか!)
トランヴェルは即座に襲われた少女のもとへ飛ぶ。
少女
「う……」
トランヴェル
(くそ……傷が深い……)
少女から大量に血が流れていく……。もはや虫の息だった。
トランヴェル
(この子を救うには……)
トランヴェルは自分の体から精神を解き放った。
そして瀕死の少女に話しかける。
トランヴェル
(君を救うには……君を魔女にするしかない…)
(まだ意識があるのなら答えてほしい)
少女
「…ぐ……」
トランヴェル
(死にたくないなら魔女になって生まれ変わらないか?)




