大義と正義
フィイイイイイイイイン!!!
トランヴェル
「これが……この男の記憶……」
ゴッティル
「ぐうう……頭が痛い……これは…このフクロウの記憶か?」
ゴッティルもまた、トランヴェルの記憶を共有していた。
ゴッティル
「まさかお互いの記憶を見せ合うことができるなんて……とんでも無いものをつくりやがったなユニは。やはり奴は天才なのか……」
「しかし、なぜこれほどまでに天才的な頭脳を持ちながら、旧人類どもに手を貸す?」
「旧人類を生かすことに意味はない!」
「その力は我々新人類に使うべきであったはずだ!」
トランヴェル
「それは違う!」
ゴッティル
「何だと?」
トランヴェル
「ユニは天才だから、地球人を生かすんだ」
ゴッティル
「何をほざいていやがる!!奴らを生かすことで得られるメリットなど何一つ無いのだぞ!!」
トランヴェル
「違う!!その考え自体間違っている!!」
「得られるメリットだと?人を生かすことにそんなものは関係ない!!」
「ゴッティル!!お前の考え方は紛争で両親を亡くしたことから歪んでしまっている!!」
「もうこんなことを止めるんだ!!こんなことをしても誰も幸福にはならない!!」
ゴッティル
「ほざくなユニの亡霊が!!」
「貴様も俺の記憶を見たというならわかるだろう!?」
「奴ら地球人は月と火星に不利益な条件を出し、既得権益に溺れる劣等種だぞ!?」
「奴らを生かそうとすること自体間違っているのだ!!」
トランヴェル
「それは一部の人間だけだろう?地球人全員がそう考えているわけでは無い!!」
ゴッティル
「ならば問おう!」
「貴様はデザイアの算出した結果を見たか?」
「地球人類を生かすことで人類は進化が遅れ、旧人類の支配が続けば、我々新人類は豊かになれない!」
「そうデザイアは答えを出しているのだ!!それでも地球人類を生かそうとするのか!?」
トランヴェル
「あんなものは予測でしかない!あれが正しいとは言えない!!」
「例え、デザイアがそう予測したとしても、地球人類を滅ぼす結果にたどり着くのはおかしいぞ!!」
「それは罪の無い人たちを大量虐殺するのと同等だ!」
「そもそもデザイアは現状を分析して予測を算出しているだけに過ぎない!!」
「私たちが良くなるように行動すれば、デザイアの予測も変化するはずだ!」
「デザイアが現時点で算出している結果を鵜吞みにしてはならない!!あれは参考にするだけの予測に過ぎないんだ!!」
ゴッティル
「バカが!!現時点で地球人類を生かすことにメリットが無ければ、地球人類を生かそうと行動すること自体間違っているのだ!」
「何故不利益しか生み出せない旧人類を生かさなければならない!?」
「歴史を見てみろ!!奴らは権力に溺れ、争うことしか考えられない劣等人種だぞ!?」
「奴らより優れている我々が何故劣等種の旧人類に支配を受けなければならない!」
「奴らは地球と共に滅するべきなのだ!!」
トランヴェル
「その考え方が幼稚だと言っているんだ!!」
「なぜ何も考えず滅ぼそうとする?何故全て無差別に殺そうとする!?」
「貴様は何も考えず、地球政府を消したいからすべての地球人類を消そうとする短絡的な思考しかできていない!!」
「そんな人類がよく劣等人種、旧人類と言えたものだな!!貴様に人類を捌くほどの知能は無い!」
「貴様ができることは無差別殺人の大量虐殺だけだ!!」
ゴッティル
「大量虐殺を仕掛けてきたのは貴様らの方だ!」
「地球政府の豚どもは我々を恐れた……だから滅ぼそうとした!」
「貴様らが我々を滅ぼそうとするから、我々は戦っているのだ!!」
「無差別殺人を行っているのは貴様らの方だ!!貴様らは害虫だ!!我々人類を滅亡へ導く害虫そのものなのだ!!」
「この地球崩壊は貴様らへの天罰だ!神が貴様ら旧人類に罰を与えたのだ!!」
「貴様ら旧人類は滅べ!!神の意思と共にこの世界から消えるがいい!!」
トランヴェル
「滅べと言われて滅ぶやつがいるか!」
「確かにあんたたちは被害者だ。地球人類を恨む気持ちもわかる」
「しかしだ……だからといって地球人全員を滅ぼそうだなんて馬鹿げている!」
「お前たちがやろうとしていることは地球政府が月と火星に武力行使したことと同じだ!」
「貴様らもその汚れた人間と同じことをしているんだぞ!それに気づけ!!」
ゴッティル
「ふざけるなッ!!貴様と会話したところで何一つ理解できない!何を言っても無駄だ!!」
「貴様に何を言われようと、我々は旧人類を地球とともに滅ぼす!!必ずだ!!」
トランヴェル
「冗談じゃない!!ここで終わらせてたまるものか!!」
「地球人類を救うべく、ここまで死力を尽くしてやってきた!」
「ここまで来るのに大勢の人間が苦悩し、死んでいったんだ!!」
「ユニが命をかけて私を送り出したのも、魔女化した彼女たちがここまで戦ってきたのも!」
「すべてこの時のために……皆を救うためにやってきたんだ!!」
「それを貴様のエゴで潰させてたまるか!!」
「お前はこの世界で何を見てきた?私の記憶を見てきたのだろう!?」
「皆魔物や魔女の脅威にさらされても必死に生きてきた!」
「明日死ぬかもしれないこの世界で!」
「死ぬ間際まで必死に生きようとしてきたんだ!!」
フィイイイイイイイイン!!!
ゴッティル
「ぐううう!!?なんだまた頭が…!?」
ゴッティルの脳裏に再びトランヴェルの今までの記憶が流れ込む!!
ゴッティル
「何だこれは!?やめろ!!」
トランヴェルの魔女たちの奮闘が映し出される!!
そして彼女たちは死ぬ運命に抗い、戦い続け、勝利を収めてきた!!
トランヴェル
「彼女たちは力を得て立ち上がった。どんなに絶望的でも生きている限り戦うことを選択したんだ!」
「今の地球人類も彼女たちと同じ状況だ。彼らを救うには魔女化の力、新人類化の力が必要なんだ!!」
「この力で地球人類は自ら逆境を覆そうと立ち上がり、そして乗り越えるはずだ!」
ゴッティル
「滅びゆく運命の地球人たちを助けること自体意味が無いと言っている!!」
「自然の摂理に反して、滅びるものを無理矢理生かし、人類全てに悪影響をもたらす!!」
「貴様のやっていることは大罪だ!!」
トランヴェル
「それは違う!!彼女たちを見てみろ!!」
「彼女たちはお前の言うデメリットやらをもたらしたか?」
「彼女たちは魔物や魔女に滅ぼされる人類を助け、そして世界を救ってきたんだ!!」
トランヴェルの魔女たちが魔物や魔女との戦闘場面が映し出される。
アポロに現れた魔物から住民を守り、そして魔女たちと戦っている。
魔氷に侵された世界でも龍を倒し、人類と共に魔氷を解き、そして多くの命を救ってきた。
ゴッティル
「こんなものは結果論だ!!」
「新人類の力を授かった地球人共は間違った方向で力を行使していく!」
「何故歴史を振り返らない!奴らが有益に働いたことなど何一つないのだ!」
「だから奴らは俺の両親のように罪の無い人たちを殺す!!」
「そんな愚か者共に力など与えてみろ!!月も火星も崩壊するぞ!!」
「お前にはわかるまい……地球人類が月と火星に何をもたらしたのか」
「俺たちは地球のために働かされた!!そして武力行使で何人も殺されてきた!!俺の家族も奴らに殺されたんだ!!」
トランヴェル
「ゴッティル!それはララたちも同じだ!!」
「彼女たちも家族や仲間を魔物や魔女に奪われてきた!!」
「それでも立ち上がって戦い、人類を救おうとしてきた!!」
「そんな彼女たちの行いをお前は否定するのか?」
「この記憶を見て、お前はそれでも地球人を滅ぼすと言うのか!?」
ゴッティル
「黙れ!!!」
ゴッティルはトランヴェルを殴りに殴りる!!
トランヴェル
「ぐっ!?」
ゴッティル
「オラオラ立ち上がってみろ!!覆してみろ!!」
「貴様が何を言おうと貴様は何もできまい!!」
「貴様は無力だ!!このまま死に絶えてしまえ!!」
トランヴェル
「やはりお前はお前が言う地球人の卑劣な行為と同じことしかできない」
「こうやって私を殴ることしかできないのがその証拠だ!!」
ゴッティルがトランヴェルを殴る度に彼の脳裏にトランヴェルの記憶が埋め込まれる!!
ゴッティル
「貴様あああ!?いい加減に!?」
トランヴェル
「どんなに辛くてもどんなに悲惨でも最後まで立ち上がってそれを覆してきた!!」
「だから私も諦めない!必ずデザイアのもとへ行く!!」
フィイイイイイイイイン!!
トランヴェルの体が金色に輝いていく!!
そしてゴッティルの脳裏にトランヴェルの魔女たちの死闘が強く映し出される!!
ゴッティル
「ぐおおおおおッ!?」
あまりにも強烈に鮮明にゴッティルの脳裏にそれらの記憶が映し出され、ゴッティルは頭を抱えて苦しみだす!!
ゴッティル
「うおお……こんなもので…」
「くそおおおおおお!!!」
ドドドドドドッ!!!
トランヴェルとゴッティルの足元が崩壊していく!
ゴッティル
「くそがっ!!こんなもので終わると思うなよ!!」
ゴオオオオオ!!!
トランヴェル
「!!」
トランヴェルの前に津波が発生する!
トランヴェルは津波にのまれる!!
トランヴェル
「ぐううう!?」
ゴッティル
「貴様をここから追い出してやる!!」
トランヴェル
「な……流される…」
ドオオォォォ!!
突如、ゴッティルの精神世界が揺れだす!
ゴッティル
「!!」
ゴッティルとトランヴェルの精神世界の外でユニオンの体が攻撃を受けていた!




