ユニの世界1
ユニたちの新人類化プロジェクトが開始された。
これは地球人を新人類化させ、宇宙に住ませるプロジェクトだ。
ユニたちは、この実験を成功させ、地球人類を救うことを目的としている。
ユニのこのプロジェクトは、自ら開発した生命プログラムを使用する。
生命プログラムとは、小型の惑星をこの世界に生み出し、その惑星内で自然を育み、人間や動物、植物等を産み出すことができるシステムである。
生命体をプログラムし、この世界にその生命体を生成することができる。
室内に小規模の宇宙と惑星、生命を作り出し、神となることができるのだ。
生命プログラムを作るには、デザイアの許可が必要となる。
使用用途は、主に実験、観察などが多い。
どれも人類へ貢献することが期待されるものでなければ、許可は下りない。
デザイアから許可さえ取れれば、誰でも惑星を作って、惑星の生命体を実験や観察に使うことができる。
生命プログラムで生み出した生命体を廃棄、殺傷処分は禁止されている。
創造した宇宙内で生命が死に至るところは構わないが、故意に殺してはならない。
これは命を尊重した倫理に基づいている。
もし意図的に生命を殺した場合、重罪として罰せられる。
ユニは早速生命プログラムを起動させる。新人類化プロジェクトの開始だ。
マスズは両手を前に出す。すると、電子メニューがマスズの両手に表示される。
マスズ
「生命プログラムの起動」
マスズのその一言で周囲にある機械が作動する。
そしてその機械の排出口から宇宙が流れ出る。
瞬く間にユニたちがいる三畳の部屋に宇宙が生成された。
マスズ
「宇宙生成完了」
ユニ
「よし…惑星の創出を行う」
ユニは片手をかざし、電子メニューを呼び起こす。
そして惑星の生成コードを打ちこむ。
すると、宇宙に小さな石が多く生成される。
そしてそれらの石が集結し、徐々に大きくなっていく。やがてそれは惑星へと変化していく。
こうして宇宙空間に1つの惑星が出来上がった。
惑星の名前は瑠璃。地球を模倣して作られている。
ユニ
「さて……こっからだな」
ユニは両手で惑星瑠璃に触れる。
ユニが頭の中で想像したものを瑠璃に反映させる。
生命プログラムは自ら思考したものを具現化することができる。
ユニは生命プログラムを使用して、惑星瑠璃に海、大地を生成し、さらに草や木、動物を生み出した。
それからユニは惑星瑠璃に表と裏と2つの世界を設置した。
まず始めに、裏の世界に新人類の遺伝子でつくった人間を投与する。
新人類とは月人、火星人を指す。
続いて表の世界に旧人類の遺伝子でつくった人間を投与する。
旧人類とは地球人類のことを指す。
こうして二つの世界にニ種類の人類が住まうことになった。
現実世界と条件を同等にするため、この世界にも旧人類と新人類を用意したのだ。
ユニ
「こうやって惑星をつくって、その惑星に人間を繁殖させるなんてことをしていると」
「我々がいるこの世界も誰かが作ったのではないかと思うんだ」
マスズ
「誰かが月や地球をつくったってこと?」
ユニ
「ああそうだよ」
「長年、人類は神なんていないと考えていたけど、本当はいるんじゃないかな?」
「きっと僕らがいるこの世界も、誰かがプログラムして設置したんじゃないかと思うんだ」
「自然に産み出された世界ではなく、誰かが意図的に作り出した」
マスズ
「確かにこうやって星を創ってると、本当に誰かが私たちの世界を作ったんじゃないかって思えるわね」
「もう今じゃ神がいたって驚かないわ」
ユニたちはしばらく旧人類と新人類を観察する。
新人類たちは数が増えるものの、対立が増えていった。
人数が増えれば増えるほど、派閥が生まれ、争いが起きてお互い傷つけてしまう。
そしてお互い殺し合うことで、想像以上に数が減ってしまった。
時間をかければ人口は少しずつ増えてはいくが、あまり悠長に待っていられない。
プロジェクトの期間も約3ヶ月と定められており、時間が無い。
また、もし過激派に見つかった場合、プロジェクトを邪魔されるリスクがある。
そこでユニは新人類の減少を防ぐため、新人類を他殺で殺せないようにプログラムした。
さらにユニは、マザーコントロールという世界を管理する者を1名投与した。
マザーコントロールは裏世界を管理し、そして新人類たちを束ねることを使命として与えた。
マザーコントロールの名は「ユニオン」
絶対王政を担う存在として投与された。
絶対王政を採用した理由は、新人類を一つの集団として形成するためだ。
絶対的な支配下に置くことで、新人類全員を一時的に統一させることにした。
また、新人類の世界と同様の条件とするため、ミニマムソサエティーを形成することにした。
ミニマムソサエティーとは、集団行動が不必要になった新人類が他者との交流を絶やさないように強制的に集団に属するように定めたものである。
月人、火星人はSEを身に着けたことにより、他者を不要とした。他者がいなくても自ら何でも創造することができ、他者の助けが要らないため、孤立する者が増えていった。
やがて新人類は自殺者が増えていった。その原因の一つとして孤独死があげられる。人間は本来群れを成して生活する生き物。一人で生きていけるようにデザインはされていないのだ。
この背景から、生存率を上げるために、月、火星政府は民衆に小集団に属すことを義務付けている。
他にも政府は、”競争”の概念を取り入れ、小集団同士を競わせる。
そして優劣をつけるため、ゴールドクラス、シルバークラスと位を設けている。
この実験もできるだけ現実世界と似せるため、ユニは、ミニマムソサエティーの制度を新人類の世界に導入した。
ミニマムソサエティーの名を”魔女会”と名付け、新人類たちに魔女会へ属することを義務付けた。
また、ゴールドクラス、シルバークラスと類似したものを設定した。
魔女会に”上級”、”下級”の概念も取り入れたのだ。
このようにユニは、裏世界を、現実の月人、火星人の世界に近づけていった。




