歪んだ教会
「魔女よ……我々を導きたまえ」
「魔女よ……今こそ人間に制裁を与えたまえ」
「魔女よ……神を超越した存在よ…人間にご加護を」
今日も多くの信者たちが教会へ訪れる…。
魔女という存在は人類にとって脅威であるという世間の認識の中で、この教会ではむしろ魔女によって人類が導かれていると説いている。自分勝手に森林を荒らし、自然や環境を破壊する人類の抑止力になっていると言う。
魔女の容姿は人類に似ているが膨大な魔力を持っている点で人類を圧倒している。また不確かな存在の神に比べて魔女は実在し、神かがりな仕業をなすことができる。
最新の科学技術も魔女の魔法には勝てない。
そもそも魔法の出現によって科学は衰退しており、
まして魔女の魔法はあらゆる科学技術を凌駕する夢のようなものだ。
火も水も雷もおこせる上、治療にも創造にも特化している。
それも自分の意識で必要なときに出すことができる。
科学技術で編み出された物はもはや不要なのだ……。
強力な魔法を編み出せる魔女こそ神に等しき存在だ………。
と彼らは言う。
この教会の名前は「魔女神聖信仰教会」。
本拠地はジョウガ。そしてここルナが第2拠点となる。
キマリ
「ルイ」
ルイ
「何でしょうか教祖様」
キマリ
「明日の魔女信仰会で信者たちに魔女の代弁をしてほしい」
ルイ
「……代弁ですか……?」
キマリ
「そうだ」
15歳の少女は教祖と呼ばれる男キマリから一枚の紙を受けとる。
キマリ
「先週ペルー村で魔女が現れたそうだ……信者たちは騒いで仕方がないのだ」
「魔女に認められし人間として一言いってやってほしい」
ルイ
「……」
ルイは渡された紙に書かれた内容に目を通す。
ルイ
「こんな約束をして大丈夫なのでしょうか……」
「魔女が我々信仰者以外の人間に制裁を加える……本当にこれを口にして大丈夫なのでしょうか?」
キマリ
「大丈夫だ」
キマリは煙草を地面に落とし足で火を揉み消す…。
「いいかい……ルイ…どんなに嘘のような内容でも奴等は信じるのだ」
「信者とは自分が信仰するものに全てを捧げるものだ…」
「ゆえに信仰の象徴であるお前の言葉がどんなに嘘偽りでも、奴等は信じるのだよ」
「不信を抱けば自ら信仰している神に背くことになる…つまりそれは信仰していた今までの自分を否定することになるのだ」
ルイ
「…」
キマリ
「人間って奴は今まで自分がしてきたことを否定したくないのだ…奴等は絶対に君の言葉を疑うことはしない」
「むしろ魔女が再び我々人類の前に姿を現した以上…君の言葉が必要なのだ」
「大丈夫だ…思いっきり述べなさい」
ルイ
「……はい教祖様」
キマリ
「いい子だ……」
キマリはルイの頭を撫で、その場を立ち去る…。
ルイは一枚のペラ用紙をじっと見つめ、内容を暗記しようとボソボソいい始めた。
彼女はこの教会の神の代理人。神のお告げがあれば彼女が代弁することになっている。
彼女は必要に覚える…ペラの内容を。
一字一句間違えないように…何度も何度も繰り返し読み上げる。
彼女は頑張る…神のお告げを代弁するために…。




