緊急会議2
月、火星への移住計画について、ネクという女性から発表が始まった。
ネク
「現在ほとんどの地球人が月や火星の環境に馴染めず、半数が地球へ帰還しております」
「月、火星に地球人が移住してから約2年が経ちますが、すでに1000人中400人が地球へ帰還しております」
「月と火星に移住してから数ヶ月後、体調に変化があり、起き上がることができなくなります」
ギルバート
「噂によれば死者も出ていると聞くが本当か?」
ネク
「ええ。40人ほどの死者が出ております」
「もちろんニュースには出しておりません」
ユニ
「なんてことだ……」
マスズ
「やはり地球人が月と火星に住むには無理があるのね……」
ギルバート
「地球人用に環境を整備しているとは言え、やはり不十分であったのか……」
「実験段階では問題無かったのに何故……」
トップたちは再びざわつき出す…。
「問題はまだ掴めていないのか?」
「立証するには時間が短過ぎたのではないか?」
また様々な質問と意見が飛び交う。
ギルバート
「……しかし一体何が原因でそうなってるのだ」
「人工惑星と同様に地球の環境に合わせているのに何故……」
ネク
「やはり地球の環境に似せているとはいえ、地球の環境とは大分異なるようです」
「そもそも地球内でも地域によって環境が異なります」
「移住することで体調不良になる人もたくさんいるわけです。なおさら人工環境では馴染めない人が多いのです」
ギルバート
「しかし、半数ほどの人が帰還するというのは異常だ」
「設定した環境に不備があるに違いない」
ネク
「そうですね……原因はまだ特定できておりません。現在早急に調査を進めているところです」
「応急処置としては、ユニ研究所が開発したプロテクトスーツを導入し、現在生活に支障が無いか確認しているところです」
ギルバート
「ユニ研究所……生命プログラムを作った研究所か」
「ユニ研究所のユニ教授!プロテクトスーツについて述べたまえ!」
トップたちの視線がユニへと集まる。
ユニ
「やれやれ……」
ユニは音声をオンにし、プロテクトスーツについて説明を始める。
ユニ
「プロテクトスーツは宇宙環境に対応できるように開発した物です」
「火星、月人のように宇宙で生きれるように適応した高性能なスーツです」
「こちらも実験は仮に立証済みですが、本当に効果があるかどうかは蓋を開けてみなければわかりません」
ギルバート
「つまり、そのスーツで生活すれば問題が無いということか?」
ユニ
「ずっとスーツを着ているわけにもいきません」
「体も洗えないので、何度か脱ぐことになります。それにやはり体に負担をかけます」
ギルバート
「現在はどうなのだ?」
ネク
「プロテクトスーツを導入してから約2日経過しましたが、今のところ問題は無いようです」
ギルバート
「引き続き観測して随時報告したまえ」
ネク
「承知しました……」
月、火星移住計画については議論が終わり、最後に地球緑地化計画について報告があった。
緑地化計画は最初は計画通りに進んでいたが、度重なる隕石の衝突により、地球が緑地化するどころか、崩壊寸前までになってしまった。
そのため、緑地化計画は頓挫し、計画達成の実現は困難であった。
以上、各プロジェクトの進捗状況の報告が終了した。
事態は想像以上に深刻であり、緑地化計画は破綻したもの当然。
そして地球外移住計画も人工惑星の建設遅延、そして過激派による被害、さらに月、火星移住計画にも支障が出ている。
どの計画も破綻寸前であり、早急にリカバリープランを立てる必要があった。
しかし、地球政府は具体的な打開策を練ることができないでいた。
彼らのうち何人かは既に地球人類を全員救うことは不可能だと諦めかけていた。
極力大勢の地球人を何とか月、火星、人工惑星に移住させる他、案が無かったのだ。
この日の会議は終了した。また明日はデザイアに各プロジェクトの継続了承と他のリカバリープランを提出し、実行の許可をもらうことになっていた。
デザイアからの返答を持って、再び議論を行う予定だ。
地球人類はいつ地球が崩壊してもおかしくない恐怖の中、ただただ怯えて明日生き残れることを祈る他無かった。
この世界には神はいないと信じるものが大半の中、ほとんどの地球人が神に頼る他無いのだ。
そして、翌日。さらに事態は深刻な状況に陥ることになる。
デザイアに各プロジェクトの進捗状況を報告したところ、
想定外の回答が帰ってきたのだ。
デザイアは、これ以上火星、月に人工施設を作ることが困難であると判断。
火星、月への移住計画を中断するよう指示が帰ってきたのだ。
ギルバート
「馬鹿な……なんだこの回答文章は!?」
「我々地球人類はこのまま滅べと言うのか!?」
デザイアの回答後、すぐに地球政府の会議が開かれた。
出席者は先日と同様。ユニも再びこの会議に出席していた。




