トランヴェルを追う男3
ゴッティル
「……だめだ。見つからん」
ゴッティルは男の体を乗っ取った後、周囲にトランヴェルがいないか隈なく探していた。
しかし、どこを探しても、どこを尋ねても”トランヴェル”は見つからなかった。
ゴッティル
「くそー……疲れた」
「そもそも人であるかどうかもわからないのに見つかるわけがない」
ゴッティルはカグヤ国を抜けて、アポロ国を目指していた。
カグヤ国は田舎であり、トランヴェルがいそうにない。そこで、この大陸で最も栄えている国へ出向くことにしたのだ。
ゴッティル
「そろそろ金が尽きる」
「ここ数日飯を食べていないせいか、この体がやたら重く感じる」
「この体もそろそろ限界だな。他の体に変えるか」
ゴッティルは道中にすれ違う人間に精神を移しながら、アポロ国へ向かっていった。
それから1か月後。ゴッティルはアポロ国に到着し、さっそくトランヴェルがいるかどうか探し回った。
しかし、そうは簡単にトランヴェルは見つからない。
ゴッティル
(くそ……ダメだ全然だ)
(この体も言葉が発しにくくなってきた……人間の体じゃ数か月しか持たないな……)
(かといって動物では喋れないしな)
(というか寒いな……雪が結構振ってやがる)
(ああ……家が欲しい。あったかい暖炉の前で寝てえ……)
ゴッティルが物思いに更けている中、スーツを着た男性が大通りを歩いていた。
ゴッティル
(……スーツ?)
(この世界にスーツがあるのか……びっくりだ)
(ダメもとであいつに尋ねてみるか)
ゴッティルはそのスーツ姿の男の側による。
ゴッティル
「すいませーん」
ゴッティルはスーツ姿の男に話しかける。しかし、男は素通りしようとしていた。
ゴッティルは男の前に立ち、彼の進行を妨げる。
ゴッティル
(こいつシカトしようとしたな…怪しい)
「すいませんーあのお」
スーツ姿の男
「……なんでしょう」
ゴッティル
「トランヴェルという名前を聞いたことありますか?」
スーツ姿の男
「……無いですね」
ゴッティル
「そうですかあ……」
(本当に知らないのか?もう少し探ってみるか)
ゴッティル
「人じゃなくてもモノでも何でもいいんですトランヴェルという言葉を聞いたこと無いですか?」
スーツを着た男
「無いですね」
ゴッティル
「……そうですかあ」
(この顔は本当に知らないって顔してるな。やっぱりそうだよな……)
(こいつ自体もトランヴェルでは無さそうだ)
ゴッティル
「もしトランヴェルという言葉を聞いたらここに電話してもらえますか?」
ゴッティルはポケットからボロボロの紙を取りだし、男に手渡す。
男はその紙を受け取る。
ゴッティル
「それでは見つけたら連絡よろしく」
(ふううう寒い寒い……さっさと洞窟へ戻ろう)
ゴッティルはがに股で走り出し、吹雪きの中へと消えていった。
数日後、ゴッティルはアポロを出ることにした。
ここではトランヴェルの居場所を掴むことができなかったのだ。
ゴッティル
(次はどこ行くか……アサダに行くか)
ゴッティルはボロボロの体でアサダ国へ向かっていく。
ゴッティル
(どうやらこの世界には人間以外にも魔物というものが存在しているらしい)
(本当にファンタジーな世界だな……。実験の割にはよくカモフラージュできているわけだ)
それからゴッティルは暫くアサダでトランヴェルを探し続けた。
ある日、ゴッティルに一つの情報が入ってくる。
街に落ちていた新聞を拾い、記事を読む。
そこには魔女信仰協会という団体が魔物を保持していたことが書かれていた。
ゴッティル
(魔女信仰協会…。もしかしたらこの組織にトランヴェルがいないだろうか)
ゴッティルが新聞を読んでいると、遠方から悲鳴が聞こえてきた。
「魔物だ!!逃げろ!!」
大勢の人が魔物に襲われていた。
ゴッティル
(あれが魔物か……)
(もしかしてトランヴェルは魔物だったりしないか?)
魔物たちが人間を襲っていたところに、赤い軍勢がやって来た。彼らは圧倒的な力で魔物たちを退治し始めた。次々と魔物たちが狩られていたく。
ゴッティル
(すごいなあの赤い軍隊。なかなか強そうだ)
ゴッティルは赤い軍勢から1体の魔物が逃げていくのを見つけた。
ゴッティル
(魔物が一体逃げていく……)
(あいつに聞いてみるか)
ゴッティルは魔物を追いかけていく。
魔物
「何なんだ………あの赤い人間ども………」
「人間とは思えぬ………」
魔物は走りに走り、できるだけ遠くに逃げようと必死に走った。
魔物
「人間どもの結界が壊れたから人肉が喰えるかと期待していたが………冗談じゃない…あいつらは危険すぎる………」
ゴッティルは先回りして、魔物の前に立つ。
魔物
(なんだ………人間?)
ゴッティルは魔物に近づき、訪ねる。
ゴッティル
「あのお………すいませんー」
魔物
「なんだ……てめえは!?」
魔物は足を止めて男を警戒する………。
フードを被った男はがに股で歩いており、首や手が変にねじ曲がっていた。
ゴッティル
「トランヴェルって聞いたことあります?」
魔物
「はあ?」
ゴッティル
「何でもいいんです………人の名前でも動物の名前でも」
「生き物じゃなくても物とか地名とか何でもいいんです。トランヴェルという単語を聞いたことありますか?」
魔物
「………ねえよ」
ゴッティル
「そ………そうです………かあ」
魔物
「何なんだお前………人間か?」
ゴッティル
「あ………あー………あら………言葉がついに出しずらくなって………きたね」
「そろそろ………かえ………どきかな」
「足も………ガタガタで………歩き………にく……い……し」
魔物
(こいつ……様子がおかしい……)
ゴッティル
「君……骨太で………がっちり………してるね」
「ちょうど………いいや………その………からだ」
「頂戴」
魔物は嫌な予感がしたのか、瞬時にその場から離れ、逃げて行った。
しかし、後ろから黒い物体が魔物を追いかける!
魔物は、逃げ切ることができず、その物体に取り込まれてしまう!
魔物
「なんだこいつは!!やめろ!?離れろ!?」
魔物の抵抗もむなしく、黒い物体に取り込まれる………。
モゾモゾ………
魔物が黒い物体から姿を現す………。
魔物
「おお………やっぱ新しい体はいいね!」
「五体満足五体満足!便利だな」
「トランヴェル………どこにいるんだろう」
「早くお前を………見つけなきゃ」
魔物の体を手に入れたゴッティルはアサダを抜けて、他の国へ出向く。




