トランヴェルを追う男1
ここはとある男の記憶。彼が今いる場所は月。
そしてラクティスという組織の秘密基地で彼はコーヒーを飲んでいる。
男の名前はゴッティル。人間。34歳。彼はこのラクティスという組織で働いている。
一仕事を終えて、彼は休憩をしていた。
「ゴッティル」
ゴッティルの前に一人の男がやってくる。
彼の名前はサベージ。ゴッティルの同僚だ。
ゴッティル
「何だ?俺は今休憩中だ。後にしてくれ」
サベージ
「緊急事態だ」
男はそう言うと、ゴッティルに電子ペーパーを手渡す。
ゴッティル
「今度はなんだサベージ…勘弁してくれよ。少し休ませてくれ」
サベージ
「それどこではない」
ゴッティルはサベージの緊迫した表情を見て、仕方なく電子ペーパーに目を通す。
電子ペーパーには以下のことが書かれていた。
「生命プログラム瑠璃に侵入した生命体を破壊せよ」
この一言だけだ。
ゴッティル
「なんだこれは……?」
「以前抑えた生命プログラムのことを言っているのか?」
サベージ
「そうだ。緊急を要する。さっそく準備に取り掛かってほしい」
ゴッティル
「待て待て話が見えない。一体何を騒いでいるんだ?」
「生命プログラムは停止しているんじゃないのか?」
サベージ
「それが…生命プログラムが起動していることを確認した」
ゴッティル
「なんだと?そんなはずはないだろ!」
「生命プログラムを差し押さえたのだから、研究が再開されるはずが無い!」
サベージ
「しかし、生命プログラムが起動しているのだ」
ゴッティル
「嘘だろ…?一体誰が動かしているんだ!?」
サベージ
「観測生命体がまだ残っていたのだ」
ゴッティル
「はあ?そんなわけないだろうが!!」
「生命モデルもサンプルも全て破壊した!!残っているはずが無い!!」
サベージ
「残念ながら生命モデルが隠れていたのだ」
ゴッティル
「バカな……どこに隠れていたって言うんだ!?あの時、確実に全て処分したぞ!?」
サベージ
「現に実験は再開しているのだ」
「至急、その生命モデルを破壊しなければならない」
ゴッティル
「ふざけるな!何かの間違いだ!!あの時俺は間違いなく全て処分したんだ!!」
「どうやって生命体を隠したというんだ!?ユニが手品をやってのけたって言うのか!?」
サベージ
「落ち着いてくれゴッティル」
「原因はわからない。でも、現に実験は進んでいるのだ」
「万が一、そのモデルが"デザイア"に情報を提示したら、我々の作戦が失敗になる」
「先ほど、"THETA"が生命プログラムが動いていることを察知した。この研究によって旧人類が生き延びる可能性が4割あると算出したんだ」
ゴッティル
「4割だと…!?バカな……つい先週まではそんな結果は出ていなかったはず!?1割も満たなかったはずだぞ!?」
サベージ
「とりあえず、早急に瑠璃へダイブしてほしい!早く生命モデルを破壊しなければならない!!」
ゴッティル
「……悪夢だ。奴は一体何をしたっていうんだ……どうやって生命体を瑠璃へ転送した?」
サベージ
「原因追及は後回しだ!早くしないと手遅れになる!」
ゴッティル
「うるせえッ!!わかってるよそんなことはッ!!」
サベージ
「……」
ゴッティル
「畜生…ユニの野郎……一体どんなマジックを使いやがった……畜生…」
「おいサベージ!!その生命体の居場所は突き止めているんだろうな?」
サベージ
「いいや突き止めていない。今、生命プログラマーが80名で解析を行っているが、全く居場所がわからない」
ゴッティル
「おいおい嘘だろ!?」
「あの惑星は地球の規模と変わらないと聞いたぞ!!どうやってその生命モデル1体を探せと言うのだ!?」
サベージ
「しらみつぶしに探すしかない」
ゴッティル
「馬鹿が……無理に決まっているだろう!?」
サベージ
「だが、それしか方法が無い」
ゴッティル
「馬鹿野郎が……」
サベージ
「やはり彼は殺すべきでは無かった」
ゴッティル
「そんなもんは結果論だ。今更言っても何にもなんねーよ」
「問題はどうやってその生命モデルを見つけるか」
サベージ
「方法としては1つある」
「先ほどの出力履歴から、生命モデルの名称を確認することができた」
ゴッティル
「名前はなんだ?」
サベージ
「"トランヴェル"だ」
ゴッティル
「トランヴェル…?」
「変なネーミングをつけやがって…覚えにくい」
サベージ
「旧人類の列車の名称にちなんだらしい」
ゴッティル
「ふん。そうかい。詳しいな」
「仕方ねえ…その名前を頼りに探索を行う」
「今回参加するメンバーは他に誰がいる?」
サベージ
「……お前一人だ」
ゴッティル
「は?」
サベージ
「お前一人でこの世界へ侵入し、対象の生命モデルを破壊するんだ」
ゴッティル
「ふざけるなッ!!俺一人でできるわけないだろうがッ!!」
「他の奴らはどうした!?」
サベージ
「違うんだゴッティル。あの惑星には一人しか侵入できないんだ」
ゴッティル
「はあ?」
「それはどうしてだ?」
サベージ
「厳重なロックがかけられている」
「THETAもプログラマーもお手上げなんだ」
ゴッティル
「THETAが解析できないロックだと!?」
サベージ
「そうだ。どうやら我々はあいつらを見くびっていたらしい」
「新人類もどきとは言え、奴は生命プログラムの開発者の1人だ」
「我々でも解析不能なロックがかけられている」
「よって、あの惑星に侵入するためには強制的に入れるしかないんだ」
「我々の技量では1名が限界だ」
ゴッティル
「……」
サベージ
「ゴッティル。行こう。転送準備はもうすぐ整うはずだ」
ゴッティル
「無茶ばかり言うぜ……全く」




