ユニオン
トランヴェルたちはユニオンの屋敷へ招かれる。
屋敷内はマベルたちのアジトとは比べ物にならないほど広い。
トランヴェルたちがいる部屋は30名ほど座れる長机が設けられていた。
ユニオンはトランヴェルたちに椅子に座るように伝える。
ユニオン
「さて……トランヴェル様」
「貴方は今現在、何名の人間を魔女にしてきましたか?」
トランヴェル
(魔女にした人数?……えっと……9人かな)
ユニオン
「もう9名揃えられていましたか。それではあと1人ですね」
「あと1人魔女化を行えば、我々の目的が達成となります」
トランヴェル
(我々の目的……それは何だ?)
ユニオン
「……やはり目的をご存じないですか。そうだと思いました」
トランヴェル
(私は気づけばこの世界にいたんだ)
(もともと別の世界にいた記憶は僅かに残っているが、ここに来るまでの記憶は全く無い)
(教えてくれユニオン。私は何のためにこの世界にいて、何の役割があるのか、それを知りたいんだ)
ユニオン
「そうですね……承知しました」
「今からトランヴェル様の役割、そして我々の目的について順に説明させていただきます」
ユニオンは目を閉じ、魔法を発動する。
トランヴェル
(……!)
トランヴェルとトランヴェルの魔女たちの脳内にユニオンの声が聞こえてくる。
ユニオン
(今からご説明する内容はトランヴェル様たち全員に共有させてもらいます)
ナナ
「何?なんか声が聞こえてくる!?」
エリカ
「これは……ユニオンの声?」
マベル
「どうやらユニオンが私たちの脳内に直接話しかけているみたいね」
ユニオンの声はトランヴェルだけでなく、ナナやエリカ、マベルにも聞こえていた。
ユニオン
(これからお話することは他言無用です。誰かに聞かれるわけにはいきません)
(トランヴェル様。今からお話しすることは貴方様の役目、そして我々の目的そのものです)
トランヴェル
(……ゴクッ)
トランヴェルは息をのむ。
ユニオン
「トランヴェル様の役割。それは言わずもがな10名の人間を魔女にすることです」
「そして魔女にした者たちを観察することが役目となります」
カリア
「私たちの観測がトランヴェルの目的?何故そんなことを?」
ユニオン
「それは人間が魔女に打ち勝てるかどうか観測するためです」
トランヴェル
(……)
ユニオン
「貴方たちはソフィアとアルヴェを撃退したそうですね」
イヴ
「ええ。そうです」
ユニオン
「本来、人間が魔女に打ち勝つことなんて不可能」
「それを可能にしたのはトランヴェル様が貴方たちを魔女にしたからです」
「貴方たちが率先して魔女と戦ったがゆえに、ソフィアたちに打ち勝つことができた」
「現に私の魔女会のファニージルたちを圧倒していたことが何よりの証拠」
「ファニージルたちは下級魔女ですら倒すことが困難です。それを人間である貴方たちは一度撃退しているのです」
イト
「ファニージルってさっき戦った奴らのことか」
ユニオン
「そうです。貴方たちは人間の限界を超えて、さらに上級魔女と戦えるレベルまで成長した」
「その結果は我々にとって大きな成果なのです」
イヴ
「ユニオン。あなたの言う我々とは管理者としてですか?魔女としてですか?」
ユニオン
「管理者としてです。人間世界のマザーコントロールである貴方なら理解できるでしょう」
「我々の目的はこの世界を管理し、そして観測者を迎え入れることです」
「トランヴェル様がこの世界に降り立ち、そして観測者としての役目を果たすことで、我々の目的が達成されるのです」
ミランダ
「イヴはその管理者の一人なの……?」
イヴ
「そう。私はトランヴェルに魔女化される前はマザーコントロールというこの世界を管理する生命体だった」
ルイ
「生命体って……お前元々は人間じゃなかったのか?」
イヴ
「私は人間ではない。私は世界の行く末を記録し、管理する役割を与えられたもの」
カリア
「なんか……すごいこと言ってない?」
ミランダ
「つまり……どういうこと?」
イヴ
「あまり深く考えなくていい。単純に私はこの世界を管理するために用意された道具のようなものだ」
ルイ
「道具ってお前……生き物でもないのかよ?」
ユニオン
「いいえ。彼女は生き物です。私も彼女もこの世界が生まれたと同時に設置された監視役なのです」
サラ
「この世界の監視ヤク?」
カリア
「待って…じゃあイヴもユニオンもこの世界をつくった神様とかそんなレベルの人たちなの!?」
ユニオン
「いいえ。我々も貴方たちと同様にこの世界の生き物です。この世界を作った神ではありません」
「ただ貴方たちと違うのは、この世界を監視しているかどうかなのです」
「貴方たちは生まれながらもこの世界のことを知りません。しかし、我々は生まれながらにしてこの世界のことを知っています。そしてこの世界を管理をするように命じられているのです」
イト
「命じられている…?誰にだ?」
ユニオン
「それこそこの世界の創生主」
「ユニによって命じられています」
トランヴェル
(ユニ……)
アイナ
「この世界に神様がいるんだ!!」
イヴ
「そうね。ユニは神と言っても過言では無いわ」
ルイ
「おいおい……なんだかすごい話になってないか?」
マベル
「あはははははは!!!」
突然、マベルが笑い声をあげる!
マベル
「何このワクワクする話!すごいじゃん!!おとぎ話のような夢のような話!」
アイナ
「神様って本当にいたんだ!!会ってみたい!!」
「神様ってどこにいるの?」
ユニオンはゆっくり腕をあげ、指を天井に指す。
ユニオン
「この空の向こう」




