埋葬する今と掘り返す過去
森の中で一人の男が地面を掘り、遺体を埋める。
その遺体はかつての上司であり、同胞であった。
(……)
魔女を殺す…。
滅ぼす必ず……。
男は魔女に対して怨念を抱いていた。
彼は過去に魔女と遭遇し絶望を見せられた。
今でも忘れられない……あの魔女の青い瞳を。
そして男は思い出す。今埋めている男との出会いを。
彼は共に働いていた同胞を埋めながら、あの時のことを掘り返していた。
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それはまだ魔法より科学が先行していた時代……。
一人の青年は田舎町から国営の研究所に移ることになった……。
「ここが星営都市……」
彼が訪れた国は広く……周りには大きな城が連なり、街並みはキレイで、気候も良い。
この世界の中心都市の一つであり、土地開発もかなり進んでいた……。
(自分の出身地とは大違いだ……)
青年は街を見渡しながら王宮へ向かう……。
王宮へ進めば進むほど緑が多く、緑地は綺麗に区画されていた。
ただ一つ残念なのは……王宮そのものは機械的な雰囲気が残ってしまっていたことだ……。
青年は王宮の中へ入っていく……。
門までの道のりでは数多くのセンサーがついており、歩く度に身体の隅々まで自動的に検査及び認証確認が取られる。
彼は門の前までたどり着く……
そして通路のランプが緑色に光る。
ピーッ
王宮の門が開かれる……。
目の前には大きい通路が3方向に別れている……。
<ようこそアポロへ……左手の通路をお進みください>
彼の耳に音声案内が響く。
「こっちか」
青年の目には案内方向が示されている。
彼はただその案内に従って進むだけだ。
そして向かう先には大きな塔がそびえ立っている……。
今日からここが彼の職場となる。
彼の目の前パネルが表示され、行き先を選択する。
転送装置が作動し、彼は研究所へ向かう。
ゴオオオ……
ポポポ……。
転送先にはだだっ広い部屋であり、そこには数人の研究者が机に座って仕事に取り組んでいた。
「おお……来たか」
一人の研究員が青年に気づく。
「君がドラフ君だね?」
「はい……カグヤから来ましたドラフ・ウィーンと申します」
「ようこそ!アポロ国営研究所へ……私がここの研究長のガゼルだ」
これがドラフとガゼルの出会いであった…。
ここの研究所は魔法について科学的手法で研究を行っていた。
当時のガゼルは元々衛星バリアの開発に特化していたため、防御に纏わる魔法の研究をしていた。
そしてドラフもガゼルの下で研究の補佐をしていた。
残念なことにガゼルもドラフも魔法を使えないため、彼らは自らの力で検証することができなかった。今のご時世ほとんどの若者は当たり前のように魔法を使っていた。ガゼルもドラフも試みてはいたが上手く魔法を発動することができないでいた。
ある日ドラフは騎士団とともに他研究所へ向かうことになった。
いまだにインフラがまだ行き届いていないため、移動手段は馬であった。等分の間アポロ以外の国では移動機器が使えない。緑地は増えてきたもののまだまだ人が住める環境ではなかったのだ。そしてこの日はあいにく雪だった…。
(午前中は晴れていたのに……)
ドラフたちが進めば進むほど吹雪は強くなり、今日中にたどり着けるか怪しくなってきた。
「騎士団長!今日は先ほどの町へ引き返した方がいい」
一人の騎士団員が騎士団長に尋ねる。
「そうだな……こんなに吹雪かれては前へ進めまい……一旦戻ろう」
引き返そうとした矢先、事件が起こる……。
後方にいた部隊が全員氷付けにされていたのだ……。
「!?」
そして次々と騎士団員が凍っていく!
ゴオオオ……
ドラフ
(なんだ……あれは……)
吹雪の中に一点青い光が見える……。
騎士団長
「魔物か!?戦闘準備!」
騎士団長の雄叫びと共に兵士たちは剣を抜く!
ゴオオオ!!
吹雪が強まる……!
ドラフ
(なんだ……この感じは……魔物なのか?)
騎士団長
「魔法隊!炎を放て!」
騎士団長の合図と共に炎が放たれる……。
しかし一瞬にして炎は消えてしまった……!
騎士団長
「なんだと……!?」
魔法隊員
「!うわあああ!?」
そして後方の魔法部隊が皆一瞬で氷付けにされた!
ドラフ
(まずい……これは……まずい!)
ドラフは命の危険を感じ、恐怖に陥る…。
団員はほぼ全滅…。かつ吹雪がさらに強くなり、敵の姿も捉えられない…!絶対絶命の危機に陥った…。
ますます吹雪が強くなる…!
そして吹雪の中から何かが迫ってくる…!
騎士団長
「全員全力で退避!!」
騎士団員は魔法障壁を張りながら後方へ下がる…。
しかし次の瞬間氷の塊が団員を襲う!
その氷の塊は一瞬にして団員たちを氷付けにした!
ドラフはわずかに避けたものの、触れずとも身体中が凍っていった…。
ドラフ
(ここまでなのか……)
彼が死を覚悟した時、微かにみえる……青光が…。
そしてそこには唯一騎士団長だけがたち伏せていた!
???
「ほう……まだ一匹生き残っていたか」
青光から声が聞こえる…。
騎士団長
「ハァ……ハァ……貴様……何者だ……」
???
「魔女」
吹雪の中から現れる……青く光る目をした魔女が……。
魔女は騎士団員たちを見下ろしている…。
ドラフ
(魔……女…!?)
青光の魔女
「人間って思った以上に脆いんだね」
騎士団長
「魔女だと……おのれ……!?」
騎士団長は剣を構え、魔女に斬りかかる…!
ガキィッ!
魔女を斬りつけた剣は一瞬にして凍った。
そして騎士団長の両手足も徐々に凍り、それが全身まで及んだ。
青光の魔女
「脆い」
ドラフ
(………恐ろしい)
(怖い……私は死ぬのか?)
ザア!
吹雪が更に強くなる……。
気づけば魔女はいつの間にか居なくなっていた……。
ドラフ
(……死ねるか……こんなところで)
ドラフは立ち上がる……。
そして歩く……少しずつ……。
前へ……前へと……。




