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ソフィア6

ファニージル

「いいソフィア?あなたの言葉から、さぞ上級魔女たちは生まれつき魔力が高いように聞こえるけど、そんなことは無いわ」

「中には必死に努力して魔力を向上させたものもいる。あなたのやろうとしていることはドーピング。それでは本当の努力、成果が評価されなくなってしまうわ!」


ソフィア

「それは違いますファニージル」

「確かに努力して上級魔女に成りあがった下級魔女もいます。しかし、ほとんどの下級魔女は上級に上がれないことは事実なのです」

「中には魔力が低くても想像力が高いものや、身体能力が高いものもいます」

「しかし、彼女たちは魔力以外に良いところがあっても評価されない。それはあまりにも不平等。これは差別であると思っているのです」

「ですからファニージル。この魔法研究は下級魔女たちの救済をもたらすものとして大いに役立つはずです」


ファニージル

「いいえ。あなたおかしいわソフィア。私たちは魔女なの。魔力以外でどう評価するというの?」


ソフィア

「その思考だけでは、視野が狭いと言っているのですファニージル」

「もっと他にも評価する物差しがあってもよいと思いませんか?魔力だけでは魔女の良し悪しを計れない。そう思わないですか?」


ファニージル

「思わないわね。私たちは魔女よ?魔法無くして何をアイデンティティとしてこの世界に生まれたと思っているの?」


ソフィア

「確かに我々は魔法を使う生物です。ですが、魔法以外にも我々ができることがあります。想像力、身体能力、コミュニケーション能力…こういったものも我々のアイデンティティと言えるのではないでしょうか?」

「私はこの上級魔女に仕立て上げる魔法を開発して、魔力だけで魔女を評価する考え方を無くしたいと思っております」


ファニージル

「何だと…!?」


ソフィア

「この魔法は努力なしで魔力が得られます。高い魔力をあらかじめ持てれば、私たち魔女は更なる力を追い求めるでしょう。それは魔女の進化にも通ずるに違いない」


ファニージル

「あなた狂ってるわ!あなたは危険よ!!この魔女世界の秩序を乱そうとする狂った魔女よ!!」


ソフィア

「なんとでも申してください。私はこの研究をやめるつもりはありません」


ファニージル

「ユニオン!!こいつは犯罪者です!!こいつのやっていることは魔女世界そのものに悪影響を及ぼします!!」

「そしてあろうことか、下級魔女ではなく反抗者を使って実験を行うことにも問題があります!!」

「彼女たちは反抗者ですよ!?もし反抗者が上級魔女レベルの魔力を持てば、大きな障害になる!!」

「即刻ソフィアを反抗者と認定して捕まえるべきです!!」


ユニオン

「落ち着きなさいファニージル」

「ソフィア。貴方のやっていることはファニージルの言う通り、非常に危険なことだわ」


ソフィア

「……」


ユニオン

「別に私は下級魔女たちを上級魔女に仕立て上げることには何ら反対もしていない」


ファニージル

「!?」


ユニオン

「しかし、わざわざ反抗者を使って実験することが気にくわない。なぜそんなことをする?」


ソフィア

「それは……そもそもこの魔法をつくろうと考えたのは、反抗者たちを無くしたいと思ったことが発端だからです」

「反抗者たちは自分たちの立場が弱いがゆえに反乱を起こしている。それは反抗者から直接聞いてもその通りでした」

「反抗者たちは反抗したくて反抗しているのではありません。彼女たちは己の自由を守るために戦っているだけなのです」

「ただ魔力が無く、立場が弱い。それだけで下級というラベルを貼られ、四苦八苦しているにはあまりにも可哀想だと思っているのです」


ユニオン

「だからあの反抗者たちに同情し、魔法研究の材料にしたと…」


ソフィア

「……はい。そうです」


ユニオン

「あなたが言うように反抗者たちは、この世界に居場所が無くて生まれてくる。それはその通りだ」

「故に、下級魔女を無くして、反抗者を無くすという考えは確かに解決策として考えられる」

「しかし、例え下級魔女たちを上級に仕立て上げたところで、反抗者が無くなることは無いでしょう」

「あなたが言うように皆が同一の魔力を持てば、競争が激化、もしくは新たな思想をもとに評価が下され、またその評価で居場所を無くした魔女たちが反抗してくるでしょう」


ソフィア

「ユニオン。あなたの言っていることは私も理解できます。確かに詰まるところ、どう改革しようと新たな争い、差別というのは生まれます」

「しかし、このまま魔力のみで上級下級と魔女たちを区別することに意味はあるのでしょうか?」

「反抗者たちは年々増えています。このような体制を続けることにメリットは無いはずです」

「そろそろこの世界の常識を変化させてもいいのではないでしょうか?」


ファニージル

「なに管理者気取りをしている?世界の常識を変える?あなた如きがそのようなことをユニオンに提言するとは……立場をわきまえろ!!」


ユニオン

「まあよい。そんなに声を荒げるなファニージル」

「ソフィア。あなたの言うことは大方危険ではあるが、一理的を得ていることもある」

「上級魔女に仕立て上げる魔法というのは、案としては悪くは無い」

「しかしだ……無断で反抗者たちを実験で行うこと。それはまた別の話だ」

「いくら魔法実験とはいえ、無断でプリズンに侵入することは犯罪に該当する」

「そしていくら反抗者たちに同情しようと、反抗者たちの脱走に手を貸すような真似はもはや反抗者そのものだ」


ソフィア

「……」


ユニオン

「ソフィアに命ずる。二度とプリズンに近づくな」


ソフィア

「……ッ!?」


ユニオン

「もし一寸たりとも敷地内に入った場合は、反抗者として収容する」

「そして…あなたの魔法は反抗者ではない他の下級魔女と実験を行うといいわ」


ソフィア

「……!」


ファニージル

「なっ!?……ユニオン!!この魔法実験を続けさせるおつもりですか!?」


ユニオン

「先ほども言ったが、ソフィアのやっている魔法研究に問題は無いと判断している」

「彼女の魔法は、もしや魔女の可能性そのものを変えるかもしれない。私はこの研究に興味があるのです」


ファニージル

「ユニオン!!この研究は危険です!!私は反対です!!」


ユニオン

「ファニージル。今後反抗者と接することを禁じた以上、あなたが言っていた反抗者に手助けする問題は起きることは無いでしょう」


ファニージル

「しかし……」


ユニオン

「私の判断だファニージル。それ以上に何か言うことがあるのか?」


ファニージル

「……」

「……いいえ」


ユニオン

「それでは決まりね……。さあ、お開きにしましょう」

「この場から退出するといい」


ソフィア

「はい……」

「それでは…失礼します」


ソフィアは転送魔法を生成し、その場を去っていった。


ファニージル

(何故…何故ユニオンは理解してくれないのだ。彼女の研究は危険だ……)

(ソフィアのやっていることは、あなたの権力そのものを覆すかもしれないのですよ?)

(何故それに気づかない……)


ファニージルは歯を食いしばり、転送魔法を生成し、その場を去っていった。


ユニオン

「……」


ユニオンは立ち上がり、再び水晶に目をやる。


ユニオン

(……)

(ソフィアか……なかなか面白いサンプルだ)


ユニオンの水晶にはソフィアの姿が映っていた……。

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