ソフィア5
マインドと契約を結んでから、毎日私はプリズンに侵入し、マインドの魔力を使って魔法研究を行っていた。
プリズンの侵入がバレないようにプリズン全域を凍らせ、強制的にプリズンにいた者たちをコールドスリープさせていた。
そして後で解凍することにより、何事も無かったように元通りにしていた。
しかし、解凍には時間がかかるため、研究時間は2時から4時までしか行うことができない。
4時以降に遅れて解凍すると、プリズンの稼働時間に間に合わず、プリズンが凍らされていることがバレてしまう可能性があった。
限られた時間の中で、私はマインドの魔法を分析し、上級魔女になれる薬の開発に着手した。
そして実験行いながら、毎晩マインドに何故反抗者になったのか事情を聴いた。
ファニージルの言う通り、下級というレッテルが反抗者を生み出しているのか。それを検証するために根掘り葉掘り聞いたのだ。
結果は、ファニージルが言った通りだった。下級魔女という不自由さからマインドたちが反抗していることがわかった。
そしてマインドが強く主張していたのは、何故皆ユニオンの言うことに従っているのか不思議であるということだった。
確かに言われてみれば、この魔女世界のルールは全てユニオンが作ったものだ。
皆ユニオンの決めたルールに従い、そして何も疑問を抱くことなく日々を過ごしているのだ。
何故ユニオンが自分たちのルールを決める権限があるのか。そんなこと誰が決めたのか。最古の魔女だから決めていいのか。
そこに疑問点があるとマインドは主張していた。
私はマインドから自分には無い考え方を教わった。
反抗することが正しいかどうかはわからないが、確かにユニオンがこの世界すべてを仕切っていることに疑問を抱くことは共感することができた。
ある日、ファニージルはユニオンのもとへ訪れた。
ユニオンはお茶をすすりながら、水晶で上級魔女の魔法成果を見ていた。
ファニージル
「ユニオン。今、少しお話してもよろしいですか?」
ユニオン
「どうしましたファニージル?あなたから私の元に来るとは珍しい」
ファニージル
「どうしてもユニオンにお話ししたいことがあるのです」
ユニオン
「なにかしら?」
ファニージル
「最近入会しましたソフィアですが……彼女、毎晩プリズンに無断で侵入しているのです」
ユニオン
「ソフィア……?」
「ああ……つい先日入った新しい子ね。プリズンに侵入?どういうことですか?」
ファニージル
「どうやら先日捕まえた反抗者と密会しているそうなのです」
「何か力を合わせて実験を行っているようです」
ユニオン
「実験……一体何の実験なのかしら?」
ファニージル
「それはわかりません。きっと無断でコソコソやっていることから、
あまりよろしくないことをしようとしているのではないでしょうか」
ユニオン
「……」
「直接本人に聞いてみましょう」
「ソフィアをここに呼びなさい。彼女が何を企んでるのか、ここで白状させましょう」
ファニージル
「承知しました」
ファニージルは転送魔法を発動させる。
魔法実験を行っていたソフィアの元にファニージルの魔法陣が出現する。
そしてソフィアの耳元にファニージルの声が聞こえてくる。
ファニージル
「ソフィア。至急、ユニオンのところまで来なさい」
ソフィア
「!?」
「ユニオン?一体何事ですか?」
ファニージル
「いいから来なさい」
ソフィア
「……はい。わかりました」
「……」
(もしかして…バレた?)
ソフィアは転送魔法でユニオンのもとへと移動する。
ソフィアはユニオンの前に立つ。
ユニオンの隣にはファニージルが立っている。
ファニージル
「ここに呼ばれた理由はわかるかソフィア?」
ソフィア
「……なんでしょう?心当たりがありません」
ファニージル
「プリズンを凍らせば、バレないとでも思ったのか?」
ソフィア
「……」
(やはりバレていた……。ここで白を切るのは時間の問題ね)
「……そうですよね。あんな方法じゃあ、いずれバレるとは思っていました」
ユニオン
「あなたは何をしていたのです?」
ソフィア
「……私は」
「プリズンに収容されている魔女を使って、新たな魔法を創造しようとしていたのです」
ユニオン
「新たな魔法……?反抗者なんぞ使って、何の魔法をつくろうとしていたのかしら?」
ソフィア
「はい。下級魔女たちを上級魔女に仕立て上げる魔法です」
ファニージル
「何……?」
ユニオン
「……!」
ファニージル
「何をバカなことを言っている?どういうつもりだソフィア!?」
ソフィア
「反抗者の多くは下級魔女とお聞きします。彼女たちは生まれながらにして魔法を得意としておりません」
「しかし、世間は魔法で魔女を評価します。それでは魔法を得意としない彼女たちがあまりにも可哀想です。私はそう感じてしまったのです」
「ですから、私は下級魔女たちの魔力を上級魔女たちのレベルまで底上げすることを考えたのです」
ファニージル
「そんなバカなことをどうして……。あなたは自分で何を言っているのかわかっているの!?」




