決戦4
夕暮れ時…。
イトは同期のサカとクエリと共に歩道を歩いていた。
サカ
「あと少しでお前に勝てたのにな……」
イト
「あと少し?お前が俺にかなうわけないだろ!!」
サカ
「いいや、あと少しで勝てた。あそこで俺が倒れなければ………」
イト
「はあ!?ふざけんな」
クエリ
「また喧嘩してる。やめなよ」
……この記憶は?
イトの脳内には騎士団の頃の記憶が呼び起されていた。
まだ入団してから間もない頃の記憶だった。
同期のクエリとサカと共に騎士団の試験を受けた時の記憶だった…。
懐かしいな…この頃はよくサカとは言い争いしたもんだ。
映像が切り替わる。今度はクエリとサカと共に国営騎士団の訓練校の記憶が映し出される。
クエリ
「ねえねえ聞いて聞いて!私こないだの魔法試験で2位とれたんだよ!」
サカ
「2位は凄いな!」
イト
「魔法なんてそこそこできればいいんだ。重要なのは剣術だ!」
「敵との戦いに必要な知識は剣術、魔法はそれを補助するだけの道具に過ぎない!」
クエリ
「あーあ。これだからイトは剣以外の成績が悪いのよ。これからは魔法の時代だというのに…」
イト
「うるさいな~人間は何か1つ取り柄があればいいんだよ!」
「何もかも中途半端じゃ、それこそ意味がない!」
サカ
「はいはい。お前は剣だけが取り柄だもんな」
イト
「そういうお前はどうなんだサカ?お前の取り柄はなんだ?ん?剣か?俺に負けたくせに」
サカ
「俺は総合で3位だ。全部得意だ」
イト
「こいつ!!」
イトとサカがいがみ合う。
クエリ
「二人ともやめなよ」
クエリはイトとサカに浮遊魔法をかける!
イト
「おわあああ!?」
サカ
「クエリ!!よせ!!降ろせ!!」
クエリ
「あははは!二人が喧嘩しないって誓ってくれるなら降ろしてあげる」
懐かしいな……しかし何故このころの記憶が……?
場面は切り替わり、イトが魔物と対峙しているシーンが映された。
イト
「これは俺が初めて騎士団として働いていた時の記憶だ……」
イトは様々な魔物を駆逐しては、成果を上げていった。
イトとクエリとサカは一度異なる部隊へ配属することになったが、
それぞれ成果を上げて、国営騎士団の最上部である”魔女狩隊”に配属することになった。
この時、世間では魔女の脅威にさらされていた
国営騎士団は魔女討伐を行うことを目標とし、魔女狩隊を新設したのだ。
隊長はナハンジ。凄腕のハンマーの使い手だ。
そして弓の名手であるミハエル。他にも様々なメンバーがいた。
魔女狩隊は過去に何度か魔女と戦うこともあった。
しかし、魔女には一向に敵わず、成果を上げることができなかった。
フィイイイイイン
場面は切り替わる。
イト
「これは……ペルー村の時の……」
イトの脳内には、ペルー村でのララとの戦闘が映し出されていた。
イト
「…そういえば、こんなこともあったな……」
「この時はまさか、魔女を討伐するはずの俺が魔女になるとは思ってもいなかった」
「ミイラ取りがミイラになるって奴か………」
「この時はララとカリアを逃したんだったな………。そして彼女たちの追跡に入ることになった」
「それからすぐに、ララとカリアを追っかけて、ルナ街に行ったんだ」
場面は切り替わり、魔女信仰協会での魔物との戦闘が映し出された。
イト
「そうだ…ここで俺はトランヴェルと出会ったんだ」
「魔物との死闘から、謎の声が聞こえてきて、それから俺は一瞬で魔女に早変わりしたんだった」
「思い出したぞ……俺は魔女ソフィアから魔女の力をもらったんじゃない……俺はトランヴェルから魔女の力を授かったんだ」
「俺は魔女に記憶を改ざんされていた……。俺としたことが……まさか洗脳されるとはな」
フィイイイイイン!!!
イトの体に熱が帯びていく!!
イトの体内に入っていたソフィアの洗脳魔法が徐々にとかされていく!!
一方ノーズもアイナの魔法を浴びて、過去の記憶を呼び起こしていた…。
ガタンゴトン…ガタンゴトン……
ノーズが今思い起こしている記憶は、電車に乗ってフンボルト国へ向かっている時のものだ。
そして自分の席の前にはアイナが座っていた。
アイナはノーズの銃に手を伸ばし、それを掴もうとする。
ノーズはそれを拒んだ。
「これはお前が持つべきものでは無い…これは俺だけのものだ」
ノーズはアイナに銃を握らせたくなかった。
人を殺す道具である銃をアイナのような幼い子供に触らせたくなかったのだ。
ノーズの人生は戦いの連続だった。
子供のころから銃を握り、人を撃ち殺してきた。
彼は心の底から戦争を反対していた。
ダマは言った。戦争はもう流行らないと。時代遅れの産物だと。
だからノーズはダマへついて行くことにした。戦争の無い世界を求めるために。
そしてこの世から戦争なんてくだらないものを無くそうと本気で考えていた。
それからノーズはダマと共に魔物をつくった。
魔物が研究施設から逃亡し、人類に新たな人災をもたらしてしまった。
しかし、ノーズは人間の天敵を作ってしまったことに罪悪感は無かった。
何故なら彼は、魔物が人類の天敵になることで人類同士の争いがなくなると思っていたからだ。
ノーズは人類同士が争う愚かしさの根本的な原因として、人類に天敵がいないことを挙げていた。
人類に第3の敵が現れれば、戦争なんてものは一瞬でなくなる。彼は本気でそう思っていたのだ。
しかし、ノーズの思惑とは裏腹に、魔物たちは第3の敵になりえず、むしろもっと最悪な"敵"に力を貸すことになってしまった。
その敵とは……魔女のことだ。
ノーズたちの魔物は魔女のために使われてしまった。
魔女たちは祖国であるフンボルト国の兵士と魔物を結合し、人類を欺くための兵団を作り上げた。
魔女たちの人類征服のために使用されてしまったのだ。
ノーズ
「そうだ………思い出した」
「俺は魔女の手下などではない」
「魔女は戦争以上に最悪な存在……我々人類の敵」
「人類から戦争の概念を無くそうとしたところに、こいつらはさらに戦争を仕向けようと人間を騙す」
「何が人類と魔女との戦争だ。くだらん」
「所詮貴様らが利益を得たいがために人間を利用するのだろう?」
「俺は認めないぞ……お前らの存在を」
「俺はお前らを殺す。絶対にだ。そして俺はダマ様の意思を次いで戦争の無い新しい戦いのステージを世に広めていく」
「そのためには貴様らは邪魔だ。ここで何としてでも排除する!!」
ノーズの脳裏にダマの声がこだまする……。
「ノーズよ……。己の信じた道を行け!」
フィイイイイイン!!!
ノーズは洗脳魔法アルファから抜け出し、己の意思を取り戻す!!




