ガゼルの罪
カリアの脳裏に次々とトランヴェルの記憶が映し出される。
ララの家族が目の前で殺され、彼女も腹部を刺されてしまう。
そして黄金のフクロウとの会話から魔女となり、魔物を焼き払う。
次の日には心身ともに疲れている中、多くの患者の看病をしていた。
カリア
(何故……ララが殺されなきゃいけないの?)
(ララは被害者……それに自分も辛いはずなのに誰よりも村の皆を助けようと必死にだった…!)
(なのに……どうして?どうして国の人はララを殺そうとするの!?)
(こんなの……間違ってる…)
カリアは決断した……。
大人たちがララを殺そうとするのは間違っている。彼女はそう判断し、そして決断した。
<魔女の力だろうが何だろうが…私はララを救う…!>
カリアは魔女の魔力を手に入れる!
そしてカリアが生み出す魔法は魔女狩隊やドラフの攻撃をものともしない…!
カリア
「ララ…ここから出よう…!」
「ララの魔法は…きっとみんなのためになる」
ドラフ
「逃がすな!」
ドラフは叫ぶ!魔女を逃すなと…!絶対にこの機会を逃してはならないと!!
しかし…魔女狩隊の攻撃はカリアの魔法障壁を崩すことができない!
ガゼル
「カリア!」
ガゼルは叫ぶ!娘の変貌に困惑し、心配でならない。何故いきなりカリアがこれほどの魔力を放つことができたのか。魔女マベルに何かされたのではないのか。多大な不安で切羽詰まった声をあげる…。
カリア
「お父さん…出よう!この村から!こんなの間違ってる!」
ガゼル
「……!」
ガゼルは焦る…。娘の言葉に…。
ガゼル
(ここから出る……そうか…これはチャンス…)
ドラフ
「逃がすかあああああああ!!!!」
ドラフはカリアとララに襲い掛かる!
魔女対抗具をカリアの魔法障壁にぶつける!
バチイイイイイイイイッッッ!!!
ドラフ
「お前たち魔女は必ず倒す…何としてでも!お前らを必ず倒す!!」
魔法障壁にヒビが入っていく……!
カリアはドラフの悍ましい顔に恐怖を感じる…。
その顔は憎悪と殺意そのものだ…。
ドラフ
「貴様ら魔女に我々は脅かされてきた…だが今それを覆す!」
「我々がお前たちの脅威になってやろう!!」
バキイイイン!!!!
カリアが張っていた魔法障壁が破られる!
ドラフ
「くたばれええええええええええええええええ!!!」
ドラフは剣を構えてカリアへ立ち向かう!
ドスッ・・・・・
カリア
「…あ」
ドラフ
「……なッ」
ガゼル
「逃げろ…カリア」
ドラフの剣先はガゼルの脇腹を刺していた…。
ドラフは即座にガゼルから剣を抜こうとするが、
ガゼルはドラフの手を掴み、ガゼルの身から抜刀を許さない!
ドラフ
「離せ!!」
ガゼル
「ドラフ!彼女たちに罪は無い…!」
「すべての原因は俺にある…俺が罰せられるべきなんだ!!」
ドラフ
「何だと…?」
ガゼル
「私がこの村の魔法障壁を解いた」
「すべては私の責任だ!!」
ドラフ
「!?」
カリア
「お父さん!」
ガゼル
「すまないカリア…ララ…すべては私が魔女に屈しなければこうはならなかった…」
「私が村を壊滅させたのだ…私が村の皆を皆殺しにしたのだ!」
ドラフ
「どけえ!ガゼル!!」
「貴様が罪を背負っているならばここをどけ!」
「あの魔女たちを粛清させろ!!」
ガゼル
「違う!ドラフ!!あの子たちは魔女ではない!」
「あの子たちに罪はない!!」
ドラフ
「ガゼル貴様ああああああ!!」
ガゼル
「行け…カリア…ララを連れてここから出ていくんだ!」
「お前たちはこっちに来ちゃダメなんだ!!」
カリア
「お父さん!!嫌だ!お父さんも一緒にここから出よう!」
ガゼル
「父さんはここに残る…俺はここで…罪をぬぐえないとわかっているんだ…だけどカリアお前たちは違う…お前たちに罪は無い…お前たちには未来があるんだ!」
カリア
「お父さん!」
ガゼル
「行け!お前たちはお前たちの未来を生きろ!!」
ドラフ
「ガゼル!!!死にさらせ!」
ドラフはガゼルから剣を無理やり抜き取る!
崩れ行くガゼル…。そしてドラフはカリアたちへ斬りかかる!
ズバアアア!!
ガゼルはカリアたちの盾となる…。
そしてドラフの剣を素手で抑え込む……。
カリア
「お父さああああああああッ」
トランヴェル
(カリア!逃げるんだ!)
カリア
「嫌だ!嫌だッ…嫌ああああ」
ララ
「カリア…!」
ララは立ち上がり…ガゼルへ向かおうとするカリアを引き止める…。
ララの体は修復されつつある…。
カリア
「離して!離してええええ」
ララ
「カリア…ごめん…」
ララはカリアを電撃で気絶させる…。
ガゼル
「ララ…すまない」
ララ
「おじさん…」
ガゼル
「君には本当にひどいことをした…謝っても許されることではない…」
「娘を…頼んだ…」
ドラフ
「離せ!!!ガゼル!!!」
ガゼル
「ドラフ…すまない…本当に彼女たちに罪は無い…」
「彼女たちは…魔女ではない」
「彼女たちは魔女の力を得た…新しい可能性…」
ドラフ
「ガゼル…!何故…お前は…いつも…」
「いつも…私の邪魔を…するんだ…」
ガゼル
「ドラフ…私はもう科学はとっくに死んでいたと思っていた…」
「だが…お前の見せたその技術は…あの頃の好奇心を思い出させてくれたよ…」
ドラフ
「……何を…言っている?」
ガゼル
「ドラフ…科学は驚きと発見の連続だろ?…可能性の塊なんだ…」
「誰もが見たことのない…誰もが思いもしない結果を見せてくれる…」
「それに娘たちは似ているんだ…彼女たちは魔女の力を得た人間…新たな可能性…」
ドラフ
「…ガゼル…あなたは…」
ガゼル
「ドラフ…頼む信じてくれ…彼女たちは…魔女ではない…新たな可能性なんだ…」
「頼む…俺を…信じてくれ…」
ララ
「おじさん…ごめんなさい…」
ララはカリアを連れてご神体から脱出する。
それを見送ったガゼルは安心したのか、笑った姿でその場で息が絶える…。




